第10話 お別れ
はっと気がつくと、ジョンソンが居なかった。
え? え? どこに行ったの?
月が雲間に隠れていた。
屋上はしんと静まりかえっていた。どこを見ても誰もいなかった。
おそるおそる屋上の縁から下を覗くと、地面に人が張り付いていた。
お、落っこちて死んだの? ジョンソン。
私は、ほっとしてへたり込んだ。
青い光が沢山、私の回りにふわふわただよっていた。
月に魅入られると、時々この青い光が居る時がある。今回は凄く多い。
綺麗、ホタルみたい。一つだけ白い光が居てふわふわと飛んでいた。
なんなんだろう。これ。
手近な光をつっついてみた。
なんだか凄く親しい感じがするのは何故だろう。
じっと見ていると、青い光はいつものように空に向かってゆっくりと昇っていった。
二個の青い光が、まるで名残を惜しむように私の体をつんつんとつつき、そして、のぼり始めた。
その二個の青い光が、なるみちゃんと洋平君のような気がした。
「行かないで! なるみちゃん、洋平君っ! 置いていかないでえ」
仲良しのようにくるくると舞ながら昇っていく二つの青い光を見てたら涙が止まらなくなった。
みんなに置いてきぼりにされた気がした。
「一人にしないでぇぇ」
屋上で丸くなって、私は泣いた。
隠れた月が、流れていく雲の縁をキラキラと白く光らせていた。
終
血だるま教室 川獺右端 @kawauso
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます