愛を知るまでは

愛を知るまでは 1

 私は、星野ほしの千弦ちづると共に時間を過ごすようになった。

 朝の始業前に自分の席に座っている千弦に話しかけたり、体育や美術でもペアワークをしてみたり、時にはお昼を一緒に食べたり。掃除の時間に他愛もない話をすることもあれば、テスト前に図書室に行って静かに隣で勉強するだけの時もあった。放課後も時間が合えば一緒に帰ることもあった。リモンに写真を送ることもあった。彼女が読んでいる本について聞いてみたりもした。

 でも、私は、自分のことすら何も知らなかったのかもしれない。


 文化祭の時に、千弦の名前の由来について話した時に、ふと自分の名前はどういう意味なのだろう、と調べてみた。

 愛とは、価値あるものを大切にしたいとか、親子・兄弟が慈しむとか、人を慕う心とか、好むとかめでるとか人への思いやりとか。宗教的な意味もあったけれど、うちの親はおそらく気にしないだろう。佳は、佳いという言葉が美しいとか、優れているという意味らしい。

 となると、愛佳アイカという名前は、人を好きになったり大切にしたいと思う美しい想い、というところだろうか。両親はそこまで考えていなかっただろう。小学校の頃くらいかに両親に自分の名前の由来を聞いてくる宿題が出されて、かわいいと思ったから、という答えで困ったのだから。

 愛が佳い、もしくは佳い愛とは、どういうものなのだろう。

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