特別な2人組 14
「昨日の体育で行った柔道の後、6人の生徒が呼び出されました。C組からは宍戸さんと的場さん、F組からは鈴鹿さんと菊池さん、武藤さん、そして戸部さん。
このうち、鈴鹿さんと菊池さんは、違う組同士でペアを組むよう指示をしたにも関わらず、F組2人に宍戸さんを加えた3人で組みました。
宍戸さんと的場さんもともに呼び出されていることから、おそらく呼び出しの理由はこのことでしょうね。
具体的にお2人から聞いていたりしますか」
星野さんに聞かれると、呼び出しの理由はC組に1人休みがいて、全部で44人になることがわかっているにも関わらずわざわざ3人組を作ったこと、話が終わると武藤さんと戸部さんを残してすぐに教室に戻るように言われたということ、最後に、鈴鹿瀬那も菊池美羽音も、決してわざと誰かをのけ者にするような人ではないことを伝えた。
「お2人は1人になってしまった人がいないことを確認していたのですよね」
「でも、的場さんがいた。見落としたってことで怒られたのかもしれないけれど」
「的場さんもまた、誰かと3人組を作っていたとしたら?」
星野さんが突拍子もないことを言い出したので、聞き返してしまった。
「的場さんも3人組を作っていた? 誰と?」
「おそらくその相手が武藤さんと戸部さんだったのではないかと」
今更ながら、とりあえず3人組を作るグループが他にもいる可能性を見落としていた。
頭の中で計算してみる。44人いるということは、本来は2人組だけを作るので、22組できるはず。もしこの中に3人組を2組作ると、2人組が19組できて、併せて21組できる。少しの間なら先生の目をごまかすこともできそうだ。
「2組ともお互い大丈夫だと思って、3人組が2つもできちゃったんだね」
「というよりも、昨日の体育の場合、板垣先生の指示自体破綻しているんです。
F組には女子が23人いて、欠席も見学もいません。となると、C組の昨日の体育の参加者は、21人ということになります。F組の方が2人余ってしまうのです」
星野さんの指摘に、あっと息を飲んだ。
「板垣先生は、違うクラス同士と2人組、どちらを優先させるか指示しなかった。柔道の授業なので2人組という条件を優先するのが当たり前だとは思いますし、実際、板垣先生もそう考えたのでしょう。
だから違うクラス同士という条件を優先した6人を呼び出した」
直央ちゃんも同じことを言っていたのだから、そこは早く気づけばよかったものを、と悔やむ。でも、今落ち込んでいても仕方ない。
「板垣先生は3人組を作った6人を呼び出して、体育に何人参加しているのか覚えること、不用意に3人組を作らないことを指導した。
私と直央ちゃんに安全についての話を先にしたかったから、6人は後で呼び出して話をすることにしたわけね」
「いえ、そうとも限りません」
星野さんは、神妙な面持ちでじっと見た。
「どういうこと?」
「安全指導はともかく、勝手に3人組を組むな、というだけの話なら、その場で注意すればよかっただけだと思います。
それに、私は、鈴鹿さん、菊池さん、宍戸さんの3人組を発見した時の彼女たちへの指示が気になります」
「瀬那と美羽音のどっちかが的場さんと組んで、って言ったこと?」
星野さんはうなずいた。
「私の仮定では、的場さんは武藤さんと戸部さんの2人と組んでいます。
なぜその3人の中で的場さんを引き離したのでしょうか。先生の当初の思惑通り、違う組同士のコンビを作るなら、F組を1人ずつ選出させる方が筋が通っているのでは」
頭が混乱してきたので整理してみる。最初は、瀬那・美羽音・宍戸トリオと、武藤・戸部・的場トリオがあった。トリオをペアにするために、瀬那と的場さんが組んだ。
となると、瀬那・的場ペアが新たにできて、それぞれ美羽音・宍戸ペア、武藤・戸部ペアになったことになる。
もし、美羽音が代わりに的場さんと組んだとすると、美羽音・的場ペアが新たにできて、それぞれ瀬那・宍戸ペア、武藤・戸部ペアが残る。
「確かに。
っていうか、どちらにしても同じF組の武藤さんと戸部さんが組むことになるじゃん。瀬那と美羽音が組むのはダメで、武藤さんと戸部さんはいいってこと? ひいきじゃない?」
「普通に考えればそうです。
ですが、板垣先生は認めた。改めましょう、配慮していた、のだと思います」
認める、と、配慮する。違いを聞く前に、星野さんは答えた。
「あなたが見込んだ私の推理力で答えるならこうです。
戸部さんと武藤さんが組むように配慮をする必要があった。配慮しなかった場合、何が起こるか。
今起こっている状況から推察するに、戸部さんが姿を消した理由に関わってくるのではないでしょうか。では、体育とLHRだけ姿を消す理由は何か。
戸部さんは渡會さんと武藤さんから、いえ、1年F組のクラスメイトたちから仲間外れにされていた。と板垣先生は考えていたのではないでしょうか」
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