ピアノは弦楽器
平野真咲
特別な2人組
特別な2人組 1
1年F組に割り振られた私は、入学当初、教室でたまたま席が近かった
新しい環境になったのだから、いろんな人と友達になりたい。クラスメイトたちの間を渡り歩いてみたけれど、一番肌が合うのが瀬那と美羽音だった。私が話を振って、瀬那がオーバーリアクションして、美羽音がツッコんだり毒舌になったりして、3人でケラケラ笑う。それが楽しかった。
部活が本格的に始まる頃になればまた違ったのかもしれない。だんだんと友達ができて、クラスの中での人間関係が決まりつつある、4月の終わりのことだった。
その日は冷たい雨が降っていた。陸上を行う予定だった1年F組とC組の女子はグラウンドが使えなくなったので、体育館に集められた。出席をとったあと、体育館の中を5周させられる。早く終わった生徒が扉を開けて涼んでいると、体育の
当然、私と瀬那と美羽音の3人は自然と集まった。けれど、2人組をつくるとなれば、誰かが離れなければならない。集まる前からあぶれるのは私だと感づいていた。顔を見合わせた時には確信に変わった。平均身長くらいの瀬那と美羽音に対して、私は背が高い。それに、小中学校で運動をやっている私に対して、瀬那も美羽音も運動音痴だと自ら話していた。この前行ったスポーツテストでも、2人との運動能力の差はハッキリと得点として示されていた。英語のスピーキングや理科の実験なら簡単にジャンケンで決めよう、と言ってしまえる。けれど、体格差のある私が2人のどちらかと組んだところでしんどい時間になるのは目に見えていた。
言い出そうとして、でも自分からは言いづらくて、2人が「どうする?」とささやき合うのに合わせて困り顔なんかしてしまう。
気まずさに耐えかねて不意に輪の外に目をやると、1人の女子と目が合った。黒髪の生徒たち中で、体育館の天井から降り注ぐライトを受けて1人茶色い髪が光る。小さな顔に合わない大きな丸眼鏡をかけていて、物静かで、こういう時でも1人でいる子。その眼鏡の奥の瞳は、明らかに私たちを見つめていた。
どんどん2人組ができて腰を下ろしていく中、立ったままの生徒の方が目立ってきた。早くペアにならないと、余り者、にされてしまう。
瀬那と美羽音に「2人で組んで」と言い放って、私はその子の元へと駆け寄った。
「星野さん、私と組まない?」
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