02.音のならない受話器

風鈴の音で思い出す。


分厚い雲で覆われたあの日。

僕は君を裏切った。


真実を隠す僕と、

目を逸らす君。


僕はいつも言わないだけで、

嘘をついてはいなかった。


ハリボテの幸せと、

限界を迎えた体。


最初からだめだったんだ。

使い物にならないこの体を

人のために使うなんて。

全部初めから間違っていた。


だから君を裏切った。


僕の幸せを守るために。


どんな時でも自分を優先する僕なのに、

君はいつも優しかった。


いつもごめんね。


今までありがとう。


そう言って僕は君に別れを告げた。


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祈り、焦がれ、思う。 Spicuron @Spicuron

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