EITOエンジェル総子の憂鬱(仮)16
クライングフリーマン
自殺未遂
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
南部(江角)総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。
大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。総子からは『兄ちゃん』と呼ばれている。
足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。元レディース・ホワイトのメンバー。
河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトの総長。EITOエンジェルス班長。
小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。
和光あゆみ・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。
中込みゆき・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。
海老名真子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。
来栖ジュン・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7の総長。EITOエンジェルス班長
芦屋一美警部・・・大阪府警テロ対策室勤務の警部。総子からは『ひとみネエ』と呼ばれている。
芦屋二美(ふたみ)二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。総子からは『ふたみネエ』と呼ばれている。
芦屋三美(みつみ)・・・芦屋財閥総帥。総合商社芦屋会長。EITO大阪支部のスポンサー。総子からは『みつみネエ』と呼ばれている。
南部寅次郎・・・南部興信所所長。総子の夫。
幸田仙太郎所員・・・南部興信所所員。総子のことを「お嬢」と呼ぶ。藤島病院の 看護師ワコには、「セン兄ちゃん」と呼ばれている。
花菱綾人所員・・・南部興信所所員。元大阪阿倍野署の刑事。
倉持悦司所員・・・南部興信所所員。
小柳警視正・・・警視庁から転勤。大阪府警テロ対策室室長。
横山鞭撻刑事(警部補)・・・大阪府警の刑事。大阪府警テロ対策室に移動。
真壁睦月・・・大阪府警テロ対策室勤務の巡査。
藤島院長・・・藤島病院院長。
藤島ワコ・・・藤島院長の娘。看護師。
江角真紀子・・・総子の母。
江角徹・・・総子の父。
= EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す =
==EITOエンジェルズとは、女性だけのEITO大阪支部精鋭部隊である。==
午前10時。あるアパート。
南部興信所の幸田と倉持の前には、自殺未遂をした、男が震えていた。
「倉持。花ヤンと所長に連絡してくれ。俺は横ヤンに連絡する。」
幸田は、倉持に指示し、自分は大阪府警の小柳警視正に電話した。
説明を聞いた小柳は、「分かった。真壁と横ヤンを行かせる。薬は、致死量飲んだ訳じゃないんだな。」「ええ。我々は、丁度飲む瞬間にやって来たんです。何を飲もうとしたのか分からないけど、殆ど吐かせました。救急車を呼ぶか病院に連れ行くかと我々が言っていると、『俺は殺される運命なんだ』って言い出したんです。」
30分後。横ヤンこと横山刑事と真壁巡査がやって来た。
「EITOにも連絡しておきました。」と、真壁は言った。
クルマに全員乗れないので、幸田は、倉持を興信所に返した。
午前11時。藤島病院。
「胃洗浄した。検査終ったら、警察に連れてっていいぞ。自殺ってか。」
「走り書きがありました。」「あの薬な。普通の病院では処方せんぞ。確かに通常の飲み方したら、徐々に毒にはなるかも知れんが、1瓶一気に飲んだら、天国の階段上れるわ。」
「先生、変な言い方せんといて下さいよ。」「まあ、お手柄やな。後で表彰状貰いや。」
「お父さん、事務用品の領収書貰うみたいに。ごめんなさい、セン兄ちゃん。」
「ええよ、ワコちゃん。慣れてるさかいに。」と、幸田は看護師のワコに言った。
幸田とワコは幼なじみである。
幸田が廊下に出ると、真壁巡査が、小柳警視正にスマホで報告していた。
横山警部補が、缶コーヒーを持ってやって来た。
「幸田さん。今、ガサ入れしてるとこや。奴の資料は?」
「既に事務所から府警に電子メールで送ってるけど、所長と花ヤンが府警に今向かってますわ。女房もとんだ見当違いしてたということですな。浮気現場踏み込んだ積もりが、えらいこっちゃや。」
「ホンマやで。」と言いながら、幸田と横山の話をしているところに登場したのは、大前だった。
「あのヤサに、これと同じモンがあった。しかし、リストの丸印付いてる人物も他の人物もこいつでは無さそうや。」と、大前は殺人予告リストを出した。
廊下に出てきた、藤島院長が、その殺人予告リストを見た。
「確かにな。骨格が同じ該当者はないな。」と、一瞥した院長は去って行った。
「考えられるのは、この丸印の人物と多幸巳之吉が知り合いというセンやな。」と、横山警部補が言った。
「タコ?タコ言うんですか、横ヤン。あ、幸田さんのターゲットでしたな。」と、大前は言った。「多幸巳之吉。多いサチ。名前負けやな。」と、幸田は笑った。
南部興信所の依頼は、ほぼ9割が浮気調査である。依頼人は、これまた殆どが女性で、依頼人の『浮気亭主』をターゲットと呼んでいる。
藤島ワコが、他の看護師や職員と共に、多幸を連れに来た。ストレッチャーに乗った多幸は検査室に向かった。
午後1時。EITO大阪支部。会議室。
「多幸巳之吉。58歳。多幸畳店店主。従業員は2人いる。一昨日、南部興信所に、多幸の妻さつきが『夫の浮気を暴いて欲しい』と駆け込んだ。ここ数ヶ月仕事に身が入らない様子だった、と言う。さつきは、巳之吉の長年のおんな友達の畑中多津子が怪しい、と睨んだ。それで、今朝、南部興信所の調査員の幸田さんと倉持君が、畑中のアパートに向かった。大きな口を開け薬瓶の中身を飲もうとしていたので、2人は瓶を取り上げ、台所に連れて行き、指に手を突っ込ませ、背中を叩くなどして、吐かした。藤島先生によると、強い抗うつ剤で、大量に飲んだら死に至るらしい。通常の病院やクリニックの医師は処方しない筈だ、と証言されたので、府警の2課や暴力団対策課にも連絡済みや。」
「コマンダー。あの、東京で追いかけている『殺人予告リスト』が部屋から出てきたということは、多幸はあの人物と知り合いということですか?」普段、大人しい美智子が言った。
「ウチは、その多津子いう女が気になるわ、どこ行ってるんですか?」と真美が言った。
「重要参考人として手配された。リストの持ち主が多津子か巳之吉かで状況は変わっているが、巳之吉は今、正常な状態やないからな。ただ、巳之吉が『自殺』じゃなくて『自殺幇助』の場合は、もう1度狙う可能性はゼロやない。」
大前の言葉に、「兄ちゃん、罠仕掛けるの?」と、総子が言った。
「嬉しそうな声出すな、総子。まだ小柳さんと検討中や。」
総子は、リストの人物に目を移した。『多和田益男』と誰かが書き入れてある。
午後4時。
夕方のニュースがテレビ1大阪で流れた。テレビ1大阪とは、電波オークションで改めて開局したテレビ局で、東京のテレビ1にネットで繋がっているので、準拠させた名前である。
「知人によって発見された、自殺未遂の男性は命に別状は無く、明日にも退院の予定です。」
午後9時。藤島病院。多幸の病室。
消灯時間なので、院内はひっそりとしている。
賊は2人、忍び込んだ。ドアから入った途端に、賊は身動き出来なくなった。
祐子とあゆみが『刺股』で押さえ込んだからである。
刺股とは、相手の動きを封じ込める武具及び捕具である。U字形の金具に2-3メートルの柄がついており、金具の部分で相手の首や腕などを壁や地面に押しつけて捕らえる。
EITOの武器として採用された、刺股は、樫の木製ではなく、チタン製である。
ベッドのシーツを押しのけた本郷弥生は、DDバッジを押した。
DDバッジとは、EITOの緊急信号発信用のバッジである。
すぐに、警官隊がやって来て、逮捕連行した。
午後9時20分。多幸の『本当の』病室。
「今、捕まえたって、連絡が来たわ。ゆっくり話、聞かせて貰おうか。もう狙われることはないで。」
サイドテーブルに、南部はICレコーダーを置いて、スイッチを入れた。
翌日。午前10時。通称、島之内地区。大楠商会ビル。
突然、各階に『こしょう弾』が投げ込まれた。慌てて、大楠商会社員が、表に飛び出して来た。
社員達の前に、EITOエンジェルスが立ちはだかった。
「参上、EITOエンジェルス!満を持して。」総子が高らかに叫んだ。
社長の大楠が、前に出た。「EITO?EITO言うたら、テロリストが相手ですわな。わしらは、『半グレ』て呼ばれることはあっても、テロはしまへんで。・・・あ、そや。一本先の道の、太陽進化組と間違えてんのと違いまっか?」
「いや、基本は半グレでも、テロリスト、パウダースノウの身内がいてるっちゅうタレコミがあったんや。ひとまとめに警察行って貰って、『混じりモン』を選別して貰おうと思うてな。ヒヨコの選別より簡単らしいで。」
ホバーバイクに、EITOエンジェルスの姿の本郷の後ろに乗った、エレガントボーイ姿の大前が見栄を切った。ホバーバイクとは、民間開発の発明品をEITOが採用して、戦闘や運搬に活用している「宙に浮くバイク」である。エレガントボーイとは、高遠が命名した、EITO男性隊員達の戦闘ユニフォームの名だが、名前はあまり評判が良くない。
大楠商会の前は、小さな公園だ。大前は、付近住民やビジネスビルの会社に予め避難して貰い、ここを『戦場』に選んだ。
「いてまえ!」大楠の声に、社員達は、拳銃やナイフ、竹刀を構えた。
機関銃が無いことを確認した大前は、「Aパターン迎撃開始!」と叫んで、本郷はホバーバイクをL字型に走行させ、大前は、あまり活躍の日の目を見ていない、『メダルガトリング砲』で敵にメダルを連射し、混乱させた。
ぎんは、あゆみ、みゆき、真子と共に水流ガンで敵の銃を持つ者を攻撃した。水流ガンとは、圧縮した水をグミ状にして放出し、主に銃などの使用を麻痺させる為に使う。
ジュンは、真知子、稽古、今日子と共に、胡椒ガンで、こしょう弾を銃を持つ者に撃った。こしょう弾は、胡椒等の調味料で作った丸薬である。
総子は悦子、祐子、美智子と共に、ブーメランやシューターを投げた。シューターとは、うろこ形の手裏剣である。手裏剣の先には、痺れ薬が塗ってある。
敵の戦力が弱ったところで、総子達はバトルスティックで応戦した。敵のナイフや竹刀は、3段階に伸縮するバトルスティックに苦戦した。
突然、大きな破壊音が響いた。二美が、大楠商会の自社ビルの一角から、ショベルカーで破壊し始めたのだった。
ホバーバイクが、もう一台到着した。今度は一美が、ビルの窓ガラスをエアガン、いや、銀玉鉄砲で打ち始めた。銀玉鉄砲とは、スプリングガンやストライカーガンとも呼ばれるオモチャである。窓ガラスは割れないが、傷を付けることは出来る。突っ張り棒同様、総子が100鈞で見付けたものの実戦への応用である。
大楠が、白いハンカチを振り回した。「勘弁してくれー。言うこと聞くから、ビル壊すのだけは止めてくれー!!」最後は泣いていた。
大前がインカムで「迎撃止めー!」と怒鳴った。
午前11時半。EITO大阪支部。会議室。
マルチディスプレイに小柳警視正が映っている。
「原因は多津子だった。多津子は、『えだは会』のメンバーの『枝』で、多幸をたぶらかし、大楠に言われた『抗うつ剤殺人の実験台』にしようとしていた。殺人予告リストの人物、多和田は学生時代の友人だが、多幸と些細なことで揉めていた。多幸は、いたずら心で闇サイトに『殺して欲しい人』として情報を入力した。そして、50人のリストを見て驚いた。本人には疎遠になってから連絡が取れない状態だが、そのリストを見た多和田が、自分を殺しに来るかも知れない、と多津子に話した。多津子はこれ幸いと抗うつ剤を与え始めた。そして、訪問するという偽手紙を多幸宛に出し、不安を極限にまで押し上げた。そこに幸田君達が登場、という訳だ。大楠商会の件は、ガサ入れした時に、瓶の領収書があったから、半グレが絡んでいると分かった。藤島先生が言ったように、『用法容量』を守れば、普通に入眠剤として使える。まあ、輸入薬品の販売は薬事法違反だがな。万一裁判沙汰になれば、普通に飲まないからだ、と開き直れる。まさか、『用法容量を守らない殺人』なんて方法を使うなんてな。大楠商会と、えだは会との関係は、まだこれからの取り調べだ。」
「警視正。それじゃ、パウダースノウは?直接関わっていないんですね。」
大前の問いに、「そういうことになる。しかし、ネットを介してのリストだから、リストの人物は、東京出身とは限らないということが証明された。久保田管理官を通して、副総監から『東京限定』で考えないでくれ、と記者会見して貰うようにする。」と、小柳警視正は応えた。
正午。EITO大阪支部食堂。
「今日は、赤飯よ。みんな頑張ってくれたから、私からのプレゼントよ。」と、三美は言った。
午後3時。江角家。
予め、電話を入れていたので、総子の両親である真紀子と徹は、ランボルギーニで現れた、芦屋三姉妹と総子を迎え入れた。
真紀子は、4人の為に、「関東煮(かんとうだき)」を作って待っていた。
真紀子や徹、そして、芦屋三姉妹は実は関東出身だから、『おでん』の方に馴染みがある筈だが、関西風のおでん、かんとうだきが大好きだった。言葉から関西人になった総子も勿論、『かんとうだき派』だった。芦屋三姉妹が一時期近所に住んでいた頃、よく真紀子は、かんとうだきを作ってご馳走していた。
午後5時。
芦屋三姉妹が辞去しようとした時、テレビのニュースが事故を放送した。
道頓堀川に浮かんでいるのを発見された男は、『多和田益男』という名だった。
総子と芦屋三姉妹は顔を見合わせた。
―完―
EITOエンジェル総子の憂鬱(仮)16 クライングフリーマン @dansan01
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
43年ぶりの電話/クライングフリーマン
★15 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます