もう一度、好きになってもいいですか?

櫻葉ゆう

第1話

 ―――ガラガラっ

「雫、おかえり!」

「お母さん、ただいま!」


 八月の暑いお盆、実家に帰省してきた。鎌倉は、いつ帰ってきてもすごく落ち着く。今日は、お盆入って二日目。

 お母さんに荷物を持ってもらって、家に入る。

「おー、美波久しぶり!」

「ちょっとお邪魔してます!」

「どうぞ!」

 家に入ったら、高校時代の同級生・金藤美波が家にいた。


「雫、最近仕事はどう?」

「もう忙しいよ。先週、営業で行ってきた会社がまあ大変でさ。前に、こんなイメージでって言ってたのに、その時と内容が変わってさ。また再度作り直しだよ……」

「あら……」

 大学卒業後、広告代理店に就職して今年二年目。

 私は毎日、今入ってるチームでせっせと頑張っていて相変わらず恋愛はお休みしている。


「雫、ちょっといい?」

 美波に呼び出された。

「久しぶりに会えたから、雫の恋バナ聞きたいんだけど部屋に案内してくれる?」

「なによ、いきなり」

 変な子だなと思いつつ、私は美波を連れて自分の部屋に行った。


 部屋に入ったら、さっそく恋バナを始めてきた。

「雫は、好きな人いないの?」

「うーん、いないかな」

 恋愛なんて、大学二年の頃が最後。今の職場にも、特にこの人がいいなって思うような人いないし。みんな恋愛対象じゃないし。

「前に、LINEで話してた、かっこいいっていう人は?」

「誰?」

「ほら、新入社員で入ってきた22歳の人」

「あー、あの人ね」

 今年新入社員で入ってきた、瀬戸隆くん。しっかり者で仕事ができるとてもいい後輩。

「瀬戸くんは後輩っていうだけで恋愛対象じゃない」

「そっか。じゃあ、あの人は?」

「もう何よ。あの人って?」

「高校時代に好きだった先生」

「あっ」

 高校時代、好きだった藤堂亮太先生。

 高2の頃、異動で北先生でみんなからの人気者だった。担当強化は化学、顧問は野球部。授業中、わからないところを放課後聞きに行ったとき、とても優しく教えてくれて、いい先生だなって思っていた。

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