第106話 悪夢の残存物は、ビールで撤去しよう。
マジで先ほど、変な夢を見ていた。
真相は、こうだ。
どうやら、何人かと泊込みで出かけていた模様。
どんな集まりなのかもわからない。
とりあえず、朝が来た。
そういえば、キャンディーズのLPだと思うが、
レコードを裸にして寝床近くに置いていた。
朝が来た模様。
起きろ! と、あの養護施設の児童指導員がやって来た。
自分の寝床を通るとき、レコードを割っていた模様。
起き上がって間もなく気づいた私は、彼を呼んだ。
さっき、この通り寝床においてあったレコードが割れていた。
あなたが通った後だ。何か覚えはないか?
確かに、パリッという音がした。
彼は、答えた。
その場で、弁償するとか何とかいう話にはならなかった。
しかし、彼はへらへらしながら逃げおおせようとしている。
私は、そこを見逃さなかった。
それまでの彼の行状を追求し始めた。
彼は、黙って私の弁を聞いている。
あんた、私に五日、社会に出て通用しないとか何とかいったな?
ああ・・・
よくそんなことがホザけたな!
今の私のどこが社会で通用していないのか、答えてみろ!
・・・・・・
もう一度、ここで言ってみろ!
・・・・・・
彼は、梅干しのような口になって、黙り込んでしまっていた。
園長の**は見逃してくれるか知らんが、わしは認めんぞ!
彼は、それ以上、私に何も言わなかった。
どうやら、外で、雨が降っている模様。
あれれ?
さっきいた場所が消えて、完全に建物が消滅している。
自分の鞄が濡れている。
それと、2つにわかれるほど使い込んだ時刻表が雨と泥に濡れている。
これはもう使い物にならんわ・・・。
そう言って私は、古紙回収に出すための雑誌などの場所に置いた。
あれは確か、東海道本線と山陽本線のあたりまでで割れていたっけ。
なんか、旅のために使い込んだ感じの時刻表だった。
私のことだから、交通公社・JTBの時刻表のはずだぜ。
ま、それはいいけど。
なんか、戦友を見捨てるような気持に襲われた。
まだ、雨はぽつぽつと降っている模様。
私より若い少年もまた、その児童指導員に不満を持っている模様。
このあと、おれもあいつを追及してやる!
などと、息巻いているではないか。おいおい。
私は、何とかして彼をたしなめた。
やめろとは言わんが、無茶しすぎない程度にしておけって。
私の意をくんだ少年は、少し落ち着いた模様。
それも、そうじゃな。
そんなこんなで、彼は表情を和らげた。
そうこうしているうちに、目が覚めた。
こんな夢は、初めてだ。
よく思い出してみれば、かの児童指導員は明らかに実在の人物。
今は、その養護施設をとっくに退職している。
現在何をされているか存じているが、ここではあえて述べない。
私にしても、それは同じである。
今はとっくにそこの入所児童でも、職員でも、取引先でもない。
仮に私が高齢者対象施設に入所していても、
あるいは生活保護を受給していたとしても、
あるいは妻を亡くして父子家庭だとしても、
息子らが児童福祉の対象者であるとしても。
それらの事例は確かに福祉の利用者ではあるけど、
児童福祉の児童としての利用者では、もはやない。
そもそも、50歳を過ぎているからね。
養護施設にいたのは、もう、30年以上前。
大学を出てから、もう、30年以上になる。
あの夢の正体は、いったい、何だったのだろうか?
このあと少し、考えてみたい。
まだ、午前2時。
もう一度、缶ビールを1本だけ飲んで、しばらく休む。
悪夢の残存物は、ビールという重機で解体撤去せねば。
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