第47話 昔の彼の、そして、今の私の、「仕事」
幼少期、養護施設で立ちはだかった、あの男性。
あの人物のことを書くのは、気が引けてかなわない。
なぜなら、個人としては善良で、いい人だから。
だが、彼がかつて権力の末端のような立ち位置で、
私に立ちはだかってあまりにお粗末な対応をされたことは、
私個人としては、決して許してはいない。
いつか彼本人は、私に謝ってきた。不意打ち的に、非公式の場で。
ジャリタレでもできる程度の口パクで、本心から許すほど私は甘くない。
彼を「お世話になった人」などと述べる気もない。
くだらん社交辞令の出来損じを述べても、無駄である。
悪いが、小説でも、彼をモデルの人はそんなに登場させていない。
彼の上司や同僚だった他の職員よりも接点は多かったはずなのに。
詩作を始めて2カ月もすると、彼への罵倒がどんどん出始めた。
酒も飲まずに理想に酔った児童指導員
これだけでも十二分に、彼への罵倒ではないか。
だが、その手を緩めることはない。
さらに厳しく、当時の彼を「さばいて」いかねばならぬ。
かつて彼は、児童指導員として入所児童の私に立ちはだかった。
今さらな郷愁的な理想論を並べてくれた。高圧的に怒鳴ってくれた。
大した能力もなく、対案の一つも出せないのに、な。
だが、それが、彼のその時のその場所での「仕事」だった。
1986年4月から1988年3月までの2年間と、
1981年5月から1982年3月までの10か月。
その間の彼の「仕事」を、私は評価していない。強いて言うなら、この一言。
評定不能
今の私は、かつての入所児童ではない。
小説家でもあり詩人でもある。
つまり、ペンの力を得ている。
そして、彼をことあるごとに叩きのめすような言葉を並べる。
心苦しい。彼の良心を叩きのめすようで。
だが、それでも私は、書き続けなければならない。
当時の彼をペンで叩きのめす。それが、今の私の「仕事」である。
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