第147話 大帝国アリバン

 大帝国アリバン、ムアール連邦に属さない国の一つである、大帝国と名前はついているが、人口11万、ムアール連邦のどの都市よりも人口も土地も小さい、弱小国家である。

 大帝国アリバンの国王アリバタン・ババトル・アリバン はムアール連邦に属したら、国の名前が消えてしまうかもと恐れたのだ。


 近年人口流出が激しい、豊かで安全な生活を求め、民が連邦に属している都市に移住しているからだ。

 民の安全を確保するために軍備増強、城壁の保全、道路や下水などのインフラ改善、それを実行するには金が必要、税金を上げれば、民はさらに流出してしまう。


「 アリバタン国王陛下、今年の人口調査の結果です 」

「 なぁーーーっ! 9万、9万、、、昨年より 2万もへっているではないかぁ 」


「 それから、これも。。。 都市スメデロボの領主 」

「 都市スメデロボの領主 ブラディン・ラピセビック 伯爵様からです 」

「 なんだとぉーーーっ! 借金を返せ! もう金は貸せない! 」


「 都市スメデロボは、Bobbit worm の襲撃に合い、漆黒の魔女様を崇拝しているムアール連邦の都市や連邦に属さない国々から多大な支援を受け、持ちこたえたる事ができたそうです 」

「 復興と都市の守りを固めるために、お金を使いたいとのこと、理解を求めております 」

「 それに、盟友の誓いをしている我が国は、最も近いのにも関わらず応援どころか駆け付ける事もできておりません 」


「 そ、それは、そんなお金が何処にあるっう、駆け付けるだけの軍が何処にあるのだぁ 」


「 ムアール連邦に所属し、庇護を求められては 」

「 それだけは、できぬ 」

「 我が国は、戦神キリエ様より、聖剣を賜った由緒ある国、他の国とは格が違うのだぁ! 」

「 僭越ながら、初代国王が国に箔をつけるために、でっち上げた話ではなかったのですか 」

「 ち、違う! 」

「 お前らがそこまでいうならば、戦神キリエ様よりさずかりし聖剣を見せてやろう! 」


「 アリバタンなりません、戦神キリエ様の聖剣は、我が国の秘宝、一目に晒すなど持っての他です 」

「 母上ご理解下さい、今こそ聖剣を手にし、我が国の民への結束と、いかに由緒ある国なのかを証明せねばなりません 」


「 お前たちついてこい、我が国が出来たあかしを見せてやろう 」


 王城の地下墓地に、王城と言ってもその辺の貴族の屋敷よりも貧相であった。

「 母上ここの奥ですね 」

「 確かこの奥だと、わたくしの母が言っていました 」


「 んっ、開きそうにないぞ 」

「 封印されているようです 」

「 そ、そうだわ、アリバン家の歴史書、第1巻を持ってきなさい 」


「 この本の表紙の裏側に、封印を解くカギがあるのよ 」

 表紙の裏をナイフではがすと、羊皮紙が出て来た。

「 1334年の封印をアリバタン貴男が解くのです、次の王が解くまで誰もわからないように、聖剣を封印しなおす覚悟はありますか 」

「 はい、現国王である、アリバタン・ババトル・アリバンが責任を持ってやります 」

「 よろしい 」


「 お前たち、これを参考に扉の封印を解くのです 」

 1時間経過 「 まだかぁ 」

 2時間経過 「 まだかぁ 」

 3時間経過 「 解けたら呼んでくれ 」

 3日後、封印の謎がわかった。

「 よし、中に入るぞ 」


 次の部屋にも扉があり、封印されていた。

「 なんなんだぁーーーっ! 」

「 そうかぁ、こっちに書いてあるのがこの扉の封印解除方法だったのかぁ 」


 3分で解除。

「 おまえらわーーっ、扉を間違えて3日もかかったのかぁ 」


 扉を解除

「 うわぁーーっ すごい湿気だぁ 」

「 空気を入れ替えないと、中に入れぬ 」


「 こ、これだぁ、 心して開けろ 」

「 んっ 」

 眼が点。

 長細い錆びの跡が、ついているだけ。


「 我が初代はアホだったのかぁーーーっ! こんな湿気の多いところに、1334年も手入れもせずに、置きっぱなしにしたら、錆びて朽ちてしまうわぁーーーっ! 」


 聖剣であったはずの物は、錆びの粉が残るのみ。

「 お、おしまいだぁーーーーっ 」

 王も家臣も崩れ落ちた。


 一週間後、アリバタン国王の元に、借金を返せと督促状、いつも相談に乗ってくれていた母上は、すっかり元気をなくし、伏せってしまわれている。

 心のよりどころであった、戦神キリエ様の聖剣は錆びの粉。


「 誰でもいい、金を貸してもらえなければ、軍の維持、城壁の維持、部下の給料も払えない 」

「 民の流出が止められない 」


「 うわぁぁぁぁぁぁぁ! 」

「 国王様、お気を確かに 」


 アリバタン国王の隣国(都市)は都市スメデロボであり最も交流があった、都市スメデロボは湾岸沿いの都市、アリバタン国王も同様である。


 主な産業は漁業である、魚の長期保存方法が確立されているわけでもない、周辺の国や都市も同じように漁業、遠方の国に輸出できるわけでもなく、消費は国内のみ、外貨がほとんど入手できない状況であった。


 聖剣が錆びだけとなった原因は塩分を多く含んだ湿気の影響もあったのだろう。

 聖剣を借金の担保にする計画が成り立たなくなった。


 アリバタン国王の不幸はさらに続く。

 湾外沿いの王国である、領地の海岸線にBobbit worm が出現、港は壊滅。

 100人も満たない軍では、追い返す事すら不可能。

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