封印勇者 〜 何千年も封印されてたせいで現代の事がサッパリなので、学校に通って色々学びたいと思います! 〜
鬼来 菊
プロローグ
「っはぁ、っはぁ、っはぁ」
目の前には魔王の亡骸がある。
俺は……俺は倒したのか?
ゆっくり近づいて確認する。
うん、死んでるな。
つまりガッツポーズしても良いよな?
「よっ、よっしゃあ!」
魔王を倒したぞ! この俺が!
早速戻ろう!
「ワープ!」
城下町に戻って来た。
最初の町……変わってないなぁー。
「勇者様だ! 勇者様が帰って来たぞ!」
「「「ワーワーざわざわ!!」」」
凄いな、帰って来ただけでこの盛り上がり様か。
取り敢えずレーガ国王様の所へ行こう。
宮殿の玉座の間の扉を開ける。
「おお! 勇者殿ではないか! ということは!」
「ええ、魔王を討伐して参りました」
「「「おおおおおおお!!!」」」
うおっ、周りの兵士さん急に叫ばんといてください。
「皆の者!
「「「おおおおおおお!!!」」」
……今回はビビらなかったぞ!
そしてその日の夜
周りからは音楽が流れ、大広間の中央では色んな人が踊っている。
俺は今回の宴の主役なので色んな人からサインやら質問やらをされた。
「はぁ〜」
宴抜け出しちゃおう。
流石に質問攻めはキツい。
扉をコッソリ開けて外に出る。
あぁー開放感最高ぉー!
「でさでさー」
「へー」
まずい、人が来る。
すぐさま近くの草木に隠れる。
「勇者が魔王を倒すなんてなぁー」
「俺はすぐ死んじまうと思ってた」
「それなんだけどさ」
「ん?」
「あの勇者って奴死んでも生き返る魔法を持ってるらしいぜ」
「マジで? なら魔王討伐なんて簡単じゃん」
「そうだよなぁー、そんな魔法あったら誰でも勝てるよな」
「勇者って言っても大した事ないじゃねぇか」
「「ははは!」」
……嫌なものを見てしまったな……。
確かに俺には死んでも即生き返る魔法があるにはあるが……それだけじゃ魔王を倒すのは不可能だ。
魔王はそれほどまでに強かった。
それをあんな風に言われちゃあなぁ……。
近くにあったベンチで休む。
あいつらだけじゃなくてこの町にいる奴全員「あの魔法があればあいつなんかじゃなくても魔王は倒せた」なんて思ってるのかなぁ。
……いやいや、ネガティブな事考えてちゃダメだな。
よし、一度戻るか。
酒でも飲んだら落ち着くだろう。
宮殿の扉をそーっと開ける。
「捕えろ!」
「!?」
突然押し倒されて手に拘束具を付けられる。
くそ、こんなの……
「無駄だ、その拘束具は魔法を無効化するしオリハルコンでできているから破壊する事も不可能だ」
「ッ! 何の真似だレーガ国王!」
「分からぬか? 今のお前に対する国民の思いが」
こ、国民の思い?
感謝とかじゃないのか?
「あの魔王を倒した力は凄まじいものだ。だが、倒した後その力はどう振るわれると思う? もしかしたら新たな魔王となるやもしれん」
「んなこと」
「だがありえる話じゃろ?」
「……」
確かにレーガ国王の言いたい事は分かる。
俺は常人よりは数十……いや数百倍は強い。
そんな奴がいると思うだけで怖いと思うのは当然だ。
「俺をどうするつもりだ?」
「封印する」
「はぁ!?」
封印っておま、え!?
「危険すぎるからのぉう……じゃが慈悲として封印が解けた時、自由に動けるように拘束具は後で外してやろう」
「や、やめろ!」
「魔術師達よ、詠唱を始めよ」
「「「はい」」」
な、何で俺がこんな目に!
ただ魔王を討伐して帰って来ただけなのに!
本来だったら敬わられる人な筈なのに!
足はもう動かなくなった。
見てみると徐々に変なマークが描かれた包帯が巻かれている。
「やめろぉ! やめろぉぉ!!」
必死に叫ぶが、誰もが俺の事を……
――――化け物を見る目で見ていた。
俺が守ったのは……こんなクズな奴らだったのかよ……。
拘束具が外されたのが分かったが、動く事は不可能だった。
もう肩まで包帯が巻かれていたからだ。
「さらばだ勇者。いや、『アレイン・レーヴェント』よ」
視界が真っ暗になる。
包帯で巻かれたのだろう。
そして意識が薄くなっていく。
あぁ……封印されるってこんな感じなんだ……。
そして包帯が頭のてっぺんまで巻かれた瞬間、俺は意識を手放した。
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