木のみのまほう

蔵樹紗和

第1話 前編

 広い広い森のおくに、リスの女の子がすむ、小さな小さなおうちがありました。そのおうちにくらす、小さなリスの女の子。名まえを、ティナといいました。


 ティナは、とてもやさしい心を持った、かわいらしい女の子でした。しかし、ティナにはお友だちがいません。はずかしがりやさんで、なかなか人と話すことが出来ないのです。


 ですが、このこうだいな森の中で1人で生きていくのは、とてもさびしいことです。そのため、ティナは毎日お友だちがほしいとねがいつづけていました。



***



 ある日のこと。いえの中で朝食を食べていると、外からおしゃべり好きな小鳥さんたちの会話が聞こえてきます。


「ねぇ、聞いた? ねがいをかなえてくれるって言う、まほうのすいしょうだまの話」

「えぇ、聞いたわ。どうやら、森のおくふかくにあるって話よね」

「そう。本当にあるのなら、この目でいちど見てみたいよね!」

「そうね〜」


 そのとたん、ティナに一つの考えがうかんできます。


(そのすいしょうだまを見つければ……お友だちを作れるかもしれない)


 森のおくふかくにあるらしい。小鳥さんたちはそんなことを言っていました。ティナは、それを手がかりにすいしょうだまさがしのたびに出ることにしました。


 そうと決まれば、じゅんびをしなければなりません。ティナは、カバンに自分の服やくしにかがみやハブラシ、そして、三日分の食べ物をもって、おうちをいきおいよくとび出しました。もちろん、おうちのかぎはしっかりしめて。


 はじめにティナが向かう先は、森のおくの1番大きな木。なぜ木をめざすのか? それは、その木を目じるしにして歩いていけば、まいごにならないで森のおくに行けると考えたからです。


 ティナは、ずんずんとおくにむかって歩いて行きました。すると、やがてひらけた場所に出てきます。


 この開けた場所には、しんぴてきな空気かんがただよっていました。


  ふと顔を上へ上げてみたティナは、目をかがやかせながら立ちどまります。木のあいだからキラキラとこぼれおちる、たいようのひかり。——こもれびです。


「わぁ……! ほうせきみたい!」


 キラキラしたほうせきのような空に見とれていると、ティナのわきを、白いウサギさんがとおりすぎました。


「かわいい……」


 ウサギさんが通りすぎていったほうこうを、ティナはじーっと見つめると、えがおになります。


「よし、がんばってすすもう!!」


 ティナは、ふたたびあるきだしました。



                            後編につづく

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