二首【濁り湯に 揺蕩う娘の 黒い髪 はたと外から 娘の呼び声】

「温泉の素入れてもいい!?」


「いいよー」


「やったー!! ヒナ先に入ってるー!!」



 すぐ後から浴室に向かうと白く濁った湯の中に、娘の黒髪が漂うのが見えた。


「ヒナー! 潜るのはちゃんと頭洗ってから!」


 すると背後の扉の向こうで声がする。


「ママー!! アヒル取ってきたー!!」


 ヒナの声だ…


 じゃあこの髪は…だ、れの?


 チラと浴槽に目をやると白濁した湯の中に細く鋭い眼差しがあった。


 その視線は私を捕らえて弧を描いた。



 濁り湯に 揺蕩う娘の 黒い髪


 はたと外から 娘の呼び声

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