どうぶつえんくえすと!

干月

ノブレスの英雄たち

 むさくるしい蚊の飛び交う情緒もへったくれもありやしない夏がそろそろやって参りますが皆様元気にしておられますでしょうか。私は無事死んでいます。

 本日は過去私が出会った英雄四人について語りたいと思います。ええ、ええ。ネタ切れです。だって平和なんですもの。人を無条件に襲う魔物もいない。世界征服を目論む魔王もいない。貴族社会を牛耳る悪の宰相もいない!

 全くもってゴミみたいな社会ですね。記者泣かせにも程があるというも


 失礼、一枚目が途切れていると思いますが、それはうちの従属のライオン、ノイルが食べてしまったからでして。ヤギでは無いです。ライオン。これでも私、獣使いなんですよ。まあ半日に一回は腕を食われるんですけれども。


 四人に出会ったのはそうですね、ある夏の日のことでした。私は旅人でもありますので、世界中を旅して回ってはこのように素晴らしく面白い記事を書いて出版社に持って行ってはシュレッダーなるものにかけられるんですけれども。世の中とは世知辛いですね。


 私がその日向かいましたのは、北の方にあるノブレスという国でございます。本当に、本当に凍えるほどに寒かったことをよく覚えております。ここまで書いておいてなんですが、もしかしたら行ったのは夏ではなく冬だったかもしれません。失礼、もう半年も前のことですから、記憶が曖昧で。


 私は気まぐれなもので、襲い来る魔物とひたすら仲良くなっては、はないちもんめをして、ノブレスに向かったわけです。着いた時には夜。やってられないですね、本当に。


 赤くなった手を擦り合わせながら入ったのは、道具屋でありました。宿屋に入ろうと思ったのですが、なんせその時は金がなく。仕方ないのでライオンで脅して泊めてもらおうと思いまして、近くにあった道具屋に入りました。

 ところがこの道具屋の娘、なんとも腹立たしいことに回復魔法使いでしてね。しかも結構な高等魔法を使いやがるんです。ライオンに襲わせたらあっという間に回復されてしまって。ついでに私の腕も元に戻してもらいました。いやあ、いい家を見つけました。その時の私を褒めてあげたい。そのうえ庭に泊めてくださったんですよ。旅をしていればいい出会いもありますね。寒かった。


 その道具屋の娘、名をエリカと言うんですがね、なんと騎士団長の娘さんに求婚してると言うじゃないですか。こりゃあいいネタだと思いましてね、紹介してもらおうと思ったんですよ。騎士団長の名前はご自分で調べてくださいね、聞いたんですけど忘れたんですよ。仕方ないですね。だって聞いてからもう半年経ってるんですから。


 でですね、無事紹介を頂きまして、まあぎょっとはされたんですけれども、そんなにライオンの匂いって嫌なものですかね?一応街の中ではちゃんと放し飼いにならないようにしているんですけれども。


 その騎士団長の娘さんがまあべっぴんさんでしてね。名前を聞けばマオエルと言うんだそうで。いいですよね、女神様みたいで。実際聖騎士らしいんですよ。納得ですね。ところで聖騎士いるなら道具屋の嬢ちゃんいらなくないですか?聖騎士様か道具屋の嬢ちゃん、私についてきてくれませんかね。ノイルに腕を齧られて痛いんですよ。まあ断られたんですけどもね。やれやれ、私が何をしたと言うんだか。


 ちなみに道具屋の嬢ちゃんもまあまあチートなんですけど、この聖騎士様も結構なチートでですね。魔物に剣が触れただけで魔物死んじゃうんですよ。可哀想に。可哀想すぎて私の血を上げてしまいましたよ。ノイルが。主の許可もなく。

 ところで道具屋の嬢ちゃん、何回も何回も聖騎士様に切られてましたけど、相当仲良いんですね。


 そしてなんとですね、私、聖騎士様の紹介で王女様のレティシア殿下と天下の魔術師様、ブリジットにも会ってきたんですよ。いやー、あれは詐欺ですね。

 王女様って言うからめちゃくちゃ可愛いお淑やかな少女をイメージしてたのに、いざ会ってみたら血塗れのバール肩に担いでるんですもん。口調だけはお嬢様なのが面白いですよね。

「わたくしになにかようですの?」

 ってメンチ切られて、ノイルとはまた別の仲良くなったライオン押し付けて帰ろうかと思いましたよ。いやあ怖かった怖かった。


 ブリジット様はですね、城の中で迷っているところをノイルが拾いました。血まみれのブリジット様が咥えられて来たのを見て叫ぶかと思いましたね。姫さんが一番テンション上がってました。ドン引き〜。

 道具屋の嬢ちゃんが回復魔法かけてやってましたね。回復魔法だけ欲しいですね。人体の方はいらないんですけど。


 とまあ、出会いだけならこんな感じです。この後私はリスを従属にしたり、五人で組んだパーティで冒険に行ってリスと遊んだり、姫さんの権力の力でものを言わせた宿屋でリスと眠ったりするわけですが、まあその話はまた今度ということで。


 アデュー、顔も知らない親友たち。また記事で会いましょう。

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