私、守ってみせます!〜火の国の姫と水の国の王子〜
澤崎海花(さわざきうみか)
第一話
チョコレート、シュガー、キャンディ、たくさんの甘いものに包まれて、とかされてしまうような好きが私のことをいつも満たしてくれている。
裾が赤いドレスを身にまとった少女は窓の外へと手を振って愛しいあの人の名前を叫ぶ。
「レオルーー!! 今日も大好きだよ!」
困ったように手を振るレオルは、太陽に照らされて輝いて見えた。
頬を赤く染めながらその姿を見ていると、後ろからメイド長に頭を叩かれる。
「ソフィア様、今日のお勉強は終わったんですか?」
「あ、ごめんなさい……」
今にも爆発しそうなほどの怒りを溜め込んでいる様子のメイド長を避けて、部屋を走り出す。
それをメイド長も負けじと追いかけてきた。
♢
ハロー皆さん。
私の名前はソフィア、太陽の加護を受けて光り輝く火の国の一人娘です!
一応は火の国の後継として育てられている私ですが、なんと十二歳にして婚約者がいるのです。
それもそれも、とっても美しい水の国の王子様。
名前をレオルと言って、金糸の髪を持ち、顔も整っていて皆から愛されている少年。
そんなレオルとは六歳のバースデーパーティで出会って、それからもう一目惚れ!
いつ何回レオルのことを見ても飽きないぐらいに大大だーいすき!
そんな私は今日もやりたくない勉強から逃げていたけれど、すぐにメイド長に掴まって椅子に座らされてしまった。
「で、聞いてます?」
「はーい! きいてますー」
頬杖をつきながらムスッとした表情でいたけれど、すぐに怒られてしまい姿勢を正した。
早くこんな授業など終わらせて、レオルと話したい。
「ソフィア様! あなたわかってらっしゃいますか!?」
「はいはーい、わかってます」
「全くこんなんでも、火の国を守る姫なのですからね! ちゃんとしてもらわないと困ります!」
そうだ、私は火の国を守る姫ではあるけれどまだ子どもで何も分からない。
お母様が言うように、ソフィアには火の国を守る伝説の力があるようには到底思えなかった。
だって私は、ただレオルが好きなだけの普通の女の子なんだもん。
「魔法のステッキはどうしてソフィア様をお選びになったのでしょうね」
「それは私も分かりませーん」
魔法のステッキ、正式名称をフレアロッドは、火の国を守る資格のあるものの前に現れて、ピンチになった時に力を貸してくれる不思議な存在だ。
私はそのロッドに選ばれてしまったので、仕方なく、ほんとーに仕方なく火の国を守る役目を持っている。
だけど、火の国がそこまでの危機に陥ることなんてそうそうないし、そんなことを言われても私はどうしたらいいのかなんて分からない。
「そんなんでレオル様に本当に好かれていると思っているのですか?」
「……むっ、それは」
「あーでも、ちゃんと学んでいる姿を見せたら、レオル様もソフィア様みたいに溺愛してくれるかもしれませんね」
メイド長の言葉に、すぐさま姿勢を正すとペンを持った。
「さあ、どんどん来てください。私はどんどん学びますから」
キリッと効果音がつきそうなぐらいの態度で、メイド長にそう言うと、呆れたようなため息をつかれた。
何? 私変なこと言った?
「全く……ソフィア様はほんとにどうしようもないんですから」
そう言って優しく笑ったメイド長に疑問を浮かべながら、授業を大人しく受けることにした。
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