カレンデュラの憂鬱

巨豆腐心

第1話

   朝陽の告白1



「お父さん、お母さん、行ってらっしゃい」


 両親は旅行にでかけようとしていた。


「ごめんね、朝陽ちゃん。夕君のお世話を任せちゃって……」


 母親は申し訳なさを顔を示しつつ、何度も、何度もそうくり返す。


「大丈夫よ、お母さん。私なら大丈夫だから……」


 弟の夕陽は今年、高校受験をひかえて旅行どころではない。そこで一泊二日の間、姉である私が家にのこって、家事をこなすことになっていた。


「じゃあ、お姉ちゃん。行ってくるね!」


 次女の祐奈は明るく手をふって、両親とともに出ていった。


 玄関のカギを締め、ドアにそっと耳を当てる。父親が運転する車のエンジンがゆっくりと遠ざかっていく……。


 私はため息をつくのと同時に、身震いする。


 気配が私の背中、真後ろでする。私がふり返るのももどかしく、手をつかまれ、強引に体を反転させられる。


 そこにいるのは、弟の夕陽。ちょっと怒った顔で私をにらむと、すぐに強引に唇を重ねてきた。


 あぁ……、実の弟とこんなことをするなんて……。


 そんな道徳心は、強くこすりつけられ、吸われ、求められる唇……その衝撃でいとも脆く、突き崩される。


「ダメ……」


 少し離れた唇から、そう声が漏れたのは、姉としての矜持だったのか? 自分でもよく分からない。


 でも、いつまでも姉弟でこんなことをしていては……。


 夕陽はそんな反論に、怒りを覚えたのか、スウェットの上から荒々しく胸を鷲掴みにしてきた。


 下着はつけていない。だって、どうせ型崩れするだけだから……。


 両親がいるときは、バレないよう胸の前に手をおいていた。だって、もう興奮した私の乳首が、その存在を主張しそうになっていたから……。


 夕陽も、私の興奮を感じとったのだろう。私の手をつかんで、二階の私の部屋へと引っ張っていく。


 何で私の部屋?


 それは彼が、自分の部屋ですることをあまり好んでいないから。


 私も終わった後、匂いが気になって勉強できなかったら、困るから……。


 そのとき、車のエンジン音が家の前で止まった。玄関を開ける音――。


 私は弟を突き飛ばして、慌てて玄関へと向かった。


「もう~、私ってドジね。準備しておいて、傘を忘れたわ」


 母親が折り畳み傘を手にしている。「どうしたの?」


 私も顔が赤いことに気づく。「え? あぁ、お風呂に入ろうと思って、準備していたところだったの」


 拙いイイワケだったけれど、母親は「戸締りには気をつけてね」と言い残して、出ていった。


 もう一度カギをかける。今度こそ……。その音が遠ざかるのを確認する。


 この関係、知られるわけにはいかない。私が部屋にもどると、そこにはまだ夕陽がいた。私の手をつかみ、ベッドに引き倒す。


 スウェットなんてすぐに剥ぎとられ、露わとなった私の乳房に、むしゃぶりついてくる。それはまるで、乳呑み児がそうするように……。


 私はもう抵抗もせず、その頭を優しく撫でながら受け入れる。でも、喜んじゃダメだ……。


 そう強く念じても、身体は心と裏腹に反応してしまう。


 今晩はどこまで……否、何回するのかしら? すでに姉ではなく、一人の女として弟のことを受け入れつつ、そんなことを私は考えていた。


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