帰るべき場所

猫のこたつ

第1話

…苦しい。





家に帰りたい。

けど、その帰る家なんてない。

追い出されたのだから。

では、僕はどこへ帰ればいいのだろう?




「はぁ。」

そう、自分は溜め息を付く。

「どこで生活したりすりゃいいんだろうなぁ…家には帰れないし。」

学校へ一応行ってはいるものの、これから学校にどう行けばいいのだろう。

僕の名前は土田。

名前…は…なんだったっけ。

ま、どうでもいいや。

「よぉ、どうしたんだぁ、てめぇ。」

「いや、なんでも…ない。」

「あっそ。変に強がりやがってよぉ、んなことしても何にもなんねぇのに。」

「…そう。」

はぁ、もう、なんなんだよ。

家もない、同級生には強がってもないのに強がってるとか言われる、どうすればいいんだ。

…帰る場所。

還る…場所?

たった今、還る場所が分かった。

人間達は、死んだら土に還る。

土、それこそが僕の還る場所なんだ。

でも、どうやって死のう?

今日は雨が降ってる。

雨………

水?

溺死はしやすいかな?

そんなことを考えていると…

後ろから、足音が聞こえてきた。

ここの路地裏、普通はあまり人なんて来ないんだけど。

「やあ。どうしたのかな、土田くん。こんな所に来て…」

と、後ろから声を掛けられた。

「せ…先生?」

「土田くん、何か悩んでそうだったから、少し付いてきてしまったんだけど…帰る家でもないのかい?」

「…まあ、そんな感じですね。」

…この人、心でも読めるのか?

だが、そんなことを考えている暇は一瞬で無くなった。

「じゃあ、邪魔だから死んでほしいね。」

そういい、先生は手袋をした手でナイフを突き刺してきた。

「え………?」

「自分の評価が落ちるかもしれないし、仕方ないよ、土田くん。」

「うっ……」

もう、何も喋れない。




…苦しい。




最後に、自分の家に帰れたらな…




そう思いながら、自分の意識と命は、プツリと切れた。

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帰るべき場所 猫のこたつ @2023603

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