第2話
「ゲームの中の世界みたい……」
空に浮かぶ二つの太陽に照らされながら、私は昔のことを思い出していた。
確か現代からファンタジー世界にワープしちゃうって話のゲームを、良太と病室で一緒にやった気がする。
「確かゲームだと、ステータスっていうのを……。わ!」
出てきた。
目の前に青白く輝くタブレットの画面のようなものが……。
ステータス【 Lv.1 】
・HP2000/MP1000
・攻撃力:500
・防御力:500
・素早さ:500
・器用さ:500
・魔法力:500
・精神力:500
・スキル(0/5):超聴覚、腕力強化、無限肺活量
・魔法:マジックシールド(Lv.1)《残りポイント:30》
「ダメだ。私が見ても弱いのか強いのかわかんない……」
ゲームに詳しい良太がいれば、この状況を説明してくれるかもしれないのに……。
「あれ? この超聴覚ってなんだろう」
浮き上がる青白い画面の超聴覚の文字に振れると文字が現れた。
《 スキル:超聴覚を装備しました 》
「装備? 装備ってなん……あわわわ?!」
〈ザザザザー〉
〈ガサゴソガサゴソ〉
〈さわさわ~〉
突然私の耳に、ものすごい量の音が流れ込んできてびっくりした。あまりのうるささに耳に手を当てると、耳がない。
「え?! 耳どこ?!」
ポンポンと頭に手を当てると、何やら頭の上にある突起物に手が触れた。
「なにこれ?!」
恐る恐る触ってみると、何やら長い耳のような物が頭から生えている。
そう生えていたのだ。ひっぱると痛い。
「長い……? うさぎの耳みたい……。ひいっ!」
頭から生えた耳を触った後、手に違和感を感じて手を下ろすと、私の手は真っ白な毛むくじゃらだった。
「ええぇえ! なにこれ、着ぐるみ?!」
白いもふもふとした毛が生えた手。スカートから伸びるのは同じく毛むくじゃらの足。ご丁寧に丸い尻尾のような物まで生えている。
「長い耳! もふもふの手足に、丸い尻尾! これ完全に兎じゃない?!」
自分の体を改めてみて見ると、さっきまでと同じ服装だが、手足は毛むくじゃらで長い耳のついた兎人間になっていた。
「ど、どうしよう……」
吹奏楽で習った曲を口ずさんでパニックになった頭を落ち着かせていると、葉の擦れる音や川の音、草木が揺れる音に混じって誰かの叫び声が聞こえた。
〈ザザザザー〉
〈ガサゴソガサゴソ〉
〈たすけてー〉
〈さわさわ~〉
「誰かが助けを求めてる?!」
超聴覚のスキルを装備してからだ。
意識を耳に集中させると、方向が明確になる。
「こっちかな」
音のした方へ走ると、普段では信じられないくらいの速度が出た。この速さならオリンピックにも出れるんじゃないかってくらいの速度だ。
〈もうダメだーー〉
近い。木々をかき分けて進むと、倒れた木々の側に巨大なイノシシいて、顔が豚の子供が襲われているのを見つけた。
「くっそー! こっち来るなよー!」
なにあれ豚人間? 獣人って奴かな? ってそれどころじょない。
どうしようどうしよう。武器になるような物は持ってないし、さっき見たスキル?だと攻撃スキルっぽいものは何も……。そうだ!
「ステータス」
巨大イノシシに気づかれないように小声でステータス画面を呼び出して、魔法の項目に触れると魔法ツリーが表示された。
よし、狙い通り。後はマジックシールドのレベルを最大に上げて……。
《ファイヤーボルトが解放されました》
《アクアボルトが解放されました》
《サンダーボルトが解放されました》
《ウィンドウボルトが解放されました》
《アースボルトが解放されました》
「やった、でた!」
昔、良太が魔法はレベルを上げて条件を満たすと、他の魔法が現れるって説明してくれた事を思い出した。って感動してる場合じゃない。私は急いでファイヤーボルトのLvを最大まで上げた。
《ファイヤーボルトがLv10になりました》
《フレアブレードが解放されました》
「ブォオォオオオ!!」
顔を上げると、巨大なイノシシはその鋭い牙で豚獣人の子供へ突進をするところだった。
「く、くらえ! ファイヤーボルト!!」
ちょっと大袈裟にポーズをつけて叫んだ瞬間、私の右手が熱くなり巨大な火の玉が飛び出してイノシシに命中した。
着弾すると、爆弾でも爆発したのかと思うほどの爆音と共にイノシシは燃え、叫びながら森の奥へと逃げて行った。
「あぁ、びっくりしたー」
逃げて行ったイノシシを見送ると、爆発に巻き込まれて吹っ飛ばされた豚獣人の子供へ駆け寄った。
「ご、ごめん。大丈夫だった?」
頭を抱えてガタガタと震え何かに怯えてるようだ。
「うう、どうしてこんなところに人間が……あっちいけー!」
「え、どうしたの? もう大丈夫だよー?」
子供は爆発の影響でところどころ焦げてるけど、命に別状はなさそうだ。
「俺をどうする気だ! 人間!」
「え? 人間?」
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