暦日

字坊人造

第1話

暗色の制服の中春となる

冴返る逸らされた目の向かう先

初めての長い会話に風光る

若草を踏んで走って追う背中

困惑の頬の紅潮花吹雪


雨上がりふたり同時に虹と言う

麻の服夜の手前で立ちすくむ

受け入れて唇ひらく草いきれ

薄い胸あらわ西日の部屋の奥

前髪の汗に貼りつく照れ臭さ


馴れ合いのすきまに猫のように秋

それぞれにぽかん無月の空仰ぐ

芒野の中で指輪の抜け落ちる

とりあえず会ってみようか後の月

向かい合い黙りこむ間に銀杏散る


決めるにはふさわしくない冬麗

言い合って言うだけ言って寝る炬燵

鉛から銀色になるクリスマス

初買はふたりコーヒーLサイズ

初氷無言で並びつつく朝

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暦日 字坊人造 @sakuku

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