12.失敗、そして武器
大きな爆発音と僅かな振動の後、俺達が住居としている巣穴はもうもうと砂埃を吐き出している。言わずもがな、元凶は我らがマッドアルケミストのリオである。
「おいコラ!リオ!何したんだ!爆発物なんて作ってるんじゃねえよ!」
「巣穴は《土魔法》と《錬金魔法》で補強してあるとは言え、あの音はヤバくないですか?リオ死んでないですよね?」
巣穴の中に呼びかけるが、返事は返ってこない。
砂埃が収まるのを待った後、トーリをその場に残し巣穴の中に歩を進める。
崩落はしていないようだが、壁面を見るとチラホラとヒビが入り、天井からはパラパラと土が舞い落ちてくる。これは後で再度補強を頼まなければ。
「おーいリオ!何作ったらこんな事になるんだよ!巣穴ボロボロなんですけど!?」
「やっちゃった……あ、すいませーん。クロウさんこっちですこっちー。」
巣穴の奥。リオのゴミ置き……もとい工房は、先程持って行った俺の羽や、キャタピラーが吐いた糸、トーリの蔦等様々な物が散らばり、その中にリオはいた。何故かまたしても頭蓋骨のみで。
「ようおつかれ。何してんの?君。体は?あと危険物を出せ。全部だ。」
「へへ、すいません。体はさっきのでバラバラに吹き飛びました。壁とかは後でちゃんと直すので怒らないで下さい!私だってびっくりしたんですから!」
「びっくりどころじゃねえよ?頭蓋骨にヒビ入ってるぞ。」
「そりゃ普通に死にかけてますからね!いや何、別に爆発とかするような危ない物を作ってた訳じゃないんですよ。」
「じゃあ何したらこうなるんだよ……。あんなでかい爆発なんて起こしたらイトナに見つかるぞ?」
「それは困りますね……今私達Lv1だから手も足も出ないじゃないですか!」
「だから騒がしく出来ねえの!言ってる事分かる!?俺はともかく、リオとトーリは命狙われてんだからな!ほら、説明だ。なんであんな爆発したんだ?」
「……《創造の手》です。あれって、いい物ができやすくなる代わりに、《
「《
「やだやだやだやだー!それだと私、骨の棍棒持って魔眼撃つしか役割ないですよ!お願いします!それだけは!私が悪かったです!明らかに無理な組み合わせで試しただけなんですー!」
「ならせめてリオ用の穴を作れ!ミスるたびに爆発されちゃ堪らんぞ。おちおちリオに武器の作成も頼めない。」
「私用の穴ですね、トーリちゃんと一緒に作っときますので錬金禁止しないでください!あ、あと武器!武器ならその辺に幾つかありますよ。私が物を作ると《呪法》で強制的に何かしらのメリットデメリットが付いちゃうので、呪いの種類の確認の為に作っときました!」
そう言ってリオが転がって行った先には棍や槍、斧が数本ずつ転がっており、半ばから折れた物もあった。
「とりあえず全部貰ってくな。トーリが使えるだろ。あとは俺武器持てねえから足に付けられる鉤爪とかが欲しいんだが。」
そう言って一番近くに転がってた俺の羽が飾りに使われている槍に近づくと
「お!お目が高いですねぇ!その槍は持ち主の防御力が下がる呪いが付いちゃってるんですけど、その代わりに何かに刺さったら穂先が爆発します!内側からボン!って感じですね!一発限りの使い捨てです!」
「爆発物作ってんじゃねえか!んな危ないもの転がしておくなよ!没収だ没収!ここら辺の全部持ってくからな!」
「《呪法》で付く効果は今の所どうにも出来ないので無罪です!閉廷!」
「有罪だバカ。いいから外行ってトーリと穴掘ってろ。」
「はーい。ポーションとかもあるので気を付けてくださいね。」
俺の《影魔法》だが、アイテムボックスのような使い方ができた。入れる時も出す時もMPを消費する上に俺の影からしか取り出せないがこれが有るのと無いのとじゃ雲泥の差だろう。ついでだから全部持って行ってやるか。
『我は回収者。落ちてる物もお前の物も、貴賎を問わずに蓄える。……《
巣穴の奥は先程の爆発の影響で光源も無く、言うなれば周り全てが影の状態だ。MPが抜ける感覚と共に、目の前にあった武器や俺の羽などの素材が空気に溶けるようにして消えていく。
日のある所だと影に沈むようにして収納されるし、俺の影と接触していないと使えないが、この巣穴のように周り全てが暗いと《影魔法》の範囲がめちゃくちゃ拡大されるからこのような芸当も出来る。
リオが作っていた体のスペアも入っている。大蛇型や巨人型等様々だ。あいつは亜人を目指す気があるのだろうか。
「おーいリオ、お前の骨も回収しといたけどとりあえずなんか体出そうかー?」
リオ工房の武器道具や素材を収納し、巣穴から出つつ声をかける。
「お!丁度いいところにクロウさん!今呼びに行こうと思ったんですよ!体も出して欲しいんですけど、トーリちゃんのヘルプお願いできますか?」
「は?ヘルプって言っても俺穴掘りなんか出来ねえよ?」
「あ、違います違います穴掘りじゃないです。あれ。頭だけであの中に飛び込むのはちょっと遠慮したいです。」
リオの目線を辿ると人の頭程の大きさの蜂に群がられ、羊の体から伸びる蔦で応戦するトーリの姿があった。
「いやお前トーリめっちゃピンチじゃねえか!悠長に話してる場合じゃねえよ行くぞ!」
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