フードの中身
大学の仲間が主催するハロウィンパーティーへ参加することになった。
小さなライブハウスを貸し切ってやるとだけ聞かされていたのだが、現地についてみればそれぞれがそれぞれの知人を呼び人数は30人近くにもなっていた。
参加条件はただ1つ。
必ず何かしらの仮装をして参加するというものだ。
俺は夕方百貨店で適当に見繕ったフランケンシュタインの衣装を纏っているが、辺りを見渡すと皆、この日に備えて下準備をしたであろうクオリティの高い仮装をしていた。
しまった、気合を入れ過ぎるのもどうかと思ったが裏目に出たな。
狼男、ドラキュラ、ゾンビナースにバニー。中には有名漫画の主人公なんかも居る。
せめて頭にネジくらいは用意してくるべきだったか。
そんなことを考えている最中、俺の視線は一際目立つ人物に奪われた。
いや。
マントや包帯、オッドアイに牙や血糊など派手な格好ばかりの中、あまりにも地味な姿が逆に目立っているので悪目立ちという方が正しいか。
その人物は鼠色のパーカーに黒ジャージと、まるで自主練をするボクサーを彷彿させるような全く場にそぐわない格好をしている。
かなり深くフードを下ろしているため、顔は確認できない。
「それって、なにかのアニメキャラクター?」
酒の勢いもあり気が大きくなっていた俺は、直接聞いてみることにした。
一見普通の格好に見えるが、もしかしたらスポーツ系アニメの登場人物だったりするのかもしれない。
しかし、返事は一向に返ってこなかった。
いくら周りが騒がしかろうと、この距離で俺の声に気付いていないなんてことはないはずだが。
——なるほど、そうくるならこっちだって。
まぁどうせこの場にいるという時点で知人かその知人なんだ。多少粗相をしたところで問題ないだろう。
俺は近づいてフードに手をかけると、そのまま勢い良く首の後ろへ払い除けた。
「さぁ、正体を暴いてやる……って、え? ……どうなってんだ?」
俺は困惑した。フードを外した中から、またフードが現れたからだ。
なんだ、これ。
もしかしてこういった趣の仮装なのか?
それならと何度もフードを払い除けるが、取れども取れども中からはことごとく新たなフードが現れる。
そんなやりとりが10回目を迎えた頃、酒が回っている俺でも流石に恐怖と違和感を覚えた。
……おかしい。
こんなに着込んでいる厚さには到底見えなかった。
おそるおそる11回目の手をかけると、そいつは初めて。
いや、ついに言葉を発した。
「それが最後だけど、本当にいいの?」
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