バックヤード

 秋の終わり頃、冬が始まる頃。

 深夜にだらだら動画配信を見ていると、配信者がこたつでアイスを食べだした。

 それを見て、私も無性に同じことがしたくなってしまった。

 外出が億劫な気持ちとこたつアイスを天秤にかけた結果、ついでに飲み物も欲しいという理由を足すことによりなんとか後者に天秤が傾いたので、気力がなくならないうちにコートを羽織り急いで外へ足を踏み出した。


 コンビニのテンポの良い入店音と店員の快活な挨拶を抜け、先に向かったのはドリンクコーナー。

 私が最近気に入っている季節限定のジュースに手を伸ばすと、それが最後の1本であることが分かり、やはりさっき外出を決意して良かったとなんだか嬉しくなった。


 瞬間。


「ひっ!」


 こちらを覗く大きな三白眼が1つ視界に入る。

 ぎょろりと開き充血したその目は、バックヤードの暗さに際立ちとても恐ろしく映った。

 おそらくペットボトルを握ったと同時に、ちょうど目の高さ辺りだったこともあり、その奥に居る店員と目が合ってしまったのだろう。

 しかし意識の外から突然人が現れるなんて、私みたいな小心者には本当に心臓に悪い。

 それにさっきの店員、目つきが悪過ぎるでしょう。深夜だから寝不足なのか、まるで取って食われるんじゃないかというくらいの鋭さで思わず声をあげてしまった。


 恥ずかしさからすぐにその場を離れ、急いでアイスを選びレジへ向かう。

 すると深夜にも関わらずレジには4人も並んでおり、私は小さくため息を吐きながら列の最後尾にまわった。

 ようやく自分の順番がきたので買い物カゴを手渡すと、気さくな雰囲気を纏うお婆さんの店員が、


「お待たせしてごめんなさいね」


 と一言添えながら会計をしてくれた。

 こういった一言があるだけで、随分心にゆとりが出来るものだ。

 私の後ろにはもう誰も並んでいなかったので、


「全然ゆっくりで大丈夫ですよ」


 と返しておいた。

 それに対して笑顔で、


「ありがとう、助かるわぁ。今日一緒に入る予定だった子が急病で、代わりの手配がつかなくてね。

私みたいな婆のワンオペだとどうしても時間がかかっちゃって」


 と返答がくる。

 私はそれを聞き、今度は挙動に出せないほど戦慄した。


 ――そうだ。

 よく考えたら、普通これだけ並んだら補助に来るだろう。

 ――あの時、眼は1つしか見えなかったのか?

 それとも、1つしかなかったのか?


 いったい、私が見たあれは何?

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