第16話 一悶着あったけど、無事完了
「ごめんなさいね。あんまり記憶が残ってないのよ」
風音先生に死神教団に質問したら、入会してからの記憶があまり残って無いと言われた。
多分だが、呪いの部分が記憶部分にされていたからだと思う。
しかし、入会する前に訪れた場所は覚えているらしく、その場所は既に廃墟となっていた。
だけど、まだ敵にバレてない可能性もあるし、奴らが風音先生に接触する可能性はある。
スパイとして協力して貰う。
「ここが⋯⋯」
わたしが来ている場所は風音先生の家である。
『うむ。かなりの霊魂を感じる』
中に入り、作品が保管されている場所に移動する。
かなりの数が保管されている。
「霊も含めて元の状態に戻してください。わたしは⋯⋯他の作品を回収して来ます」
「せっかく造ったのに⋯⋯誰にも見て貰えないなんて⋯⋯」
「先生⋯⋯」
「冗談よ」
わたしはとある場所に移動した。
そこは警察だ。
ここに証拠品として作品が保管されている。
「それじゃあ、行きますか」
真っ赤なパーカーのフードを深く被り、侵入する。
犯罪モードとでも言っておこう。
今からわたしがするのは、警察に真っ向から喧嘩を売る行為だ。
でも、やないといけない。
風音先生はきちんと裁かれるべきだと思う。
だけど、それが嫌な自分と、死神教団を追い詰めるための手がかりを失いたくないと言う思いが混在する。
別に良いさ。
いまさら犯罪を重ねようが、わたしには罪悪感が無い。
「ここか」
厳重な壁だけど⋯⋯システムそのモノに『死』を与えれば力でこじ開けられる。
すぐにシステムエラーとして警報が鳴り響くけどね。
「死神ちゃん」
『あいよ』
亜空間に瞬時に収納して、脱出しようとする。
「なんか色んな人が寝てると思ったけど⋯⋯お前が原因か?」
手をポキポキ鳴らしながらコツコツと歩いて来る男が居た。
眠らせたのは風音先生が用意してくれた睡眠薬を利用している。
「げっ、狂犬」
木山要、ダンケンの武闘派である男だ。
二つ名で狂犬と呼ばれており、裏社会でも有名な男だ。
一人でマフィアを殲滅したと、人間離れした伝説も残している。ちなみにこれはガチ。
その性格は二つ名に似合う狂気を秘めている。
「俺の二つ名を知ってる? 何者だ、お前は」
「凍れ」
魔法を使うけど、思った通り拳で粉砕された。
うん。
わたしじゃ勝てない。
死神ちゃん。
「我、参上」
気をつけて。
アイツは⋯⋯本当に強いから。
「我が人間に負けるはずなかろう」
「舐められてるなぁ。女だからって⋯⋯容赦しないから」
あー! わたしの目じゃ追えない!
「問題はない!」
要の高速の拳を受け止めた。
だけど⋯⋯それだけじゃ終わらない。
「なかなかやるな。ふんっ!」
「グッ」
魔力を相手の身体に流して、内部から爆発させる技術。
それを死神ちゃん相手にやってのけた。
左腕が完全に粉砕した。
容赦がない。
「どうせ回復できるし、喋れたら問題ないよね」
「我的には死んでいても問題ないがな。まぁ、この身体を傷つけた代償は貰うぞ」
だけど、死神ちゃんがその気になれば、腕を破壊されただけならすぐに回復できる。
人間離れした芸当だが、死神ちゃんは死神ちゃんなので問題ないだろう。
「お前⋯⋯人間か? 少しだけ、本気を出そうかな」
要は魔力への親和性が高く、相手の属性を見抜く力を持っている。
それだけ魔力の扱いが優れており、恵まれた肉体をさらに鍛え上げている。
そこから放たれる拳、しかも魔力を乗せている。
それは重機のように重い⋯⋯と、客観的に判断する。
「呑気に座って観戦かっ!」
「ん?」
両腕でガード、粉砕されて瞬時に再生。
呑気にって酷いな。
わたしはしっかりと要の動きを観察して、死神ちゃんに情報を送っているでは無いか。
わたしにできる事はこれくらいだ。
「それじゃ、スピード上げてくよ!」
身体能力を向上させて死神ちゃんを襲う。
だけど、その場合死神ちゃんも強化を上げれば追いつけるし、もう慣れただろう。
「まずは反撃の一撃じゃ!」
「ぐっふ」
相手の腹に重い一撃を当てた⋯⋯だけど、口から血を吐きながら要は笑みを浮かべた。
「こんなダメージ受けたの、久しぶりだぁ」
「お主はドMなのか?」
「どうだろうな!」
再び瞬時に移動、さっきとはあきらかに違う拳を飛ばす。
それはフェイントで、本当の攻撃は踵での回し蹴りだ。
重心が少しだけ違っていたので、その動きをわたしは理解していた。
わたしがわかっているなら、死神ちゃんも瞬時に反応できる。
「せいやっ!」
「防ぐのか⋯⋯」
見事にキャッチして防いでみせた。
そのまま力を込めて逃がさないようにする。
「⋯⋯凄い力」
「今度は⋯⋯こっちの番じゃ!」
死神ちゃんは拳に邪気を集める。
気をつけてね。
死神ちゃん。
「問題ない! きちんと手加減はする!」
そうじゃない。
むしろ逆だ。
下手に手加減する必要は無い。しちゃいけない。
「なにそれ⋯⋯面白いなぁ」
体勢が安定しない中で要も拳を固める。
その拳に宿る魔力はかなり、死神ちゃんの邪気近かった。
ぶつかり合う拳に弾かれる二人。
要の手が火傷を負う。
要は魔力の属性を見る事ができる⋯⋯正確に付け加えをするなら、エネルギーの流れと色を見れて判別できる。
本人はわかってないだろうけどね。
そして、その属性をパクる事ができる。
「なんじゃよそれ。それ本当に人間か? 我の力に合わせるとか⋯⋯」
性質の違うエネルギーだから完璧じゃないけど、近くまではパクれるよ。
「不思議な感覚だな」
「なんて強さじゃ」
「無傷の敵に褒められてもねぇ」
そりゃあそうだ。
木山要、こいつは地黒さんの双子の弟なんだから。
「はぁ! 地黒じいさんの!」
「あぁん? なんで俺の父親の苗字を知ってるんだ?」
育てられた場所や内容が違うから、地黒よりかは弱いけど、もしも同じ環境で育っていたら⋯⋯この人の方が強い。
それは地黒さんが認めていた。
⋯⋯と言うか死神ちゃん、記憶は共有しているはずなのになんで知らないのさ。
「えーいや、興味なかったって言いますか〜なんて言いますか?」
「さっきから⋯⋯電話でもしてるのかっ!」
「残念、そんな相手居ません〜!」
ぶ、ぶん殴りたい。
なんだこの怒りは。
「オラッ!」
肉弾戦は要の方が有利だろう。
まず、体格が圧倒的に違うのと、格闘戦なら相手の方が経験が多い。
だけど、こっちは死ぬ事は無いし、エネルギーが続くがきり無限に再生できる。
その度に相手の攻撃に慣れて、避けたり防げたりする。
対して相手はバケモノ級でも普通の人間だ。
ダメージは蓄積されていく。
「なんなんじゃお主は! ダメージを受ける度に、加速して強くなる!」
「楽しいなぁ!」
「お主本当に警察か!」
血を流しながらも狂気的な笑みを浮かべる要。
あの死神ちゃんですら引いてしまう。
時間が長引くと増援が来るかもしれないし、そろそろ終わらせないといけないよ。
「確かに⋯⋯山中が来るのは避けるべきじゃな」
「俺の仲間についても知ってるのか?」
「悪いのじゃが、もうじゃれ合いは終わりじゃ」
死神ちゃんが鎌を取り出す。
「変な形!」
突き刺すような蹴りが死神ちゃんの腹に炸裂する。
パーカーがボロボロになるので、本当は避けて欲しかったな。
風穴が腹に空く。
痛々しい。自分の身体だけど。
「⋯⋯倍返しじゃ」
黒い刃を要にトン、とぶつける。
刹那、要が壁に突き刺さる勢いで吹き飛んだ。
「蓄積されたダメージを邪気に溜め込み、それを一気に放出する⋯⋯倍返しと言ったが、実際は今までのダメージをそのまま返しただけじゃだな」
その後、他のところでも全ての作品を回収した。
◆
「クソっ! スカーレットモルテめ」
「たっつーその名前辞めない? ダサい」
雪姫に文句を言われた。
一週間前、俺達のところに紅いパーカーを羽織った、全身紅色の女が襲来していた⋯⋯らしい。
その時にここに戦闘員的な立ち位置で残っていたのは要だけだった。
要の実力は折り紙付きなので、問題ないと思っていたのだが⋯⋯相手が想定以上に強かったそうだ。
その時に使っていた武器が大鎌だから死神、紅き死神としてスカーレットモルテと呼んでいる。
「数少ない証拠品が⋯⋯遺族の人達にも申し訳ねぇし。最悪だよ⋯⋯しかも、他のところでも同様の事が起こったらしいし⋯⋯」
「自分が残ってたら、なんとかなったかもしれませんね。要くん、ごめんね?」
「良いですよ。⋯⋯そういや、そいつ桜さんを警戒してましたね」
「それ早く言えよ」
嘆いても仕方ねぇか。
次だ次。
今回の後悔を反省して成長に繋がろ。
「⋯⋯ん? 嘘」
「どうした桜? また死神探偵か?」
「いえ、これです」
それはネットニュース。
「は? なんじゃそりゃ」
過去の行方不明者⋯⋯作品にされた被害者⋯⋯その全てが同時に全員家に帰った?
学校に報告し⋯⋯その人全員の学力が向上しており⋯⋯東大合格レベルに達している?
「はは、なんじゃそりゃ」
死んだ人間が蘇ったのか?
あんなおぞましい造形にされていた人達が全員、蘇ったのか?
「神業じゃねぇかよ」
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