第8話 わたしは霊に対して質問した。これでわたしをコミュ障とか言うバカは居ねぇよな!
まずは犯人について聞くことにした。
『犯人は分からない、です』
「敬語が苦手ならする必要は無いです」
『はい。ありがとう。犯人は分からないんですけど、昼のどこかを歩いていたら、いつの間にか死んでて、幽霊になってて、こうなってて』
いまいち状況がわかってないらしい。
付け加えて言えば、霊の体を分解されている間も顔を見ることができなかったと。
『その。自分の体の部位はある程度の位置はなんとなく、分かる』
体の一部でも霊魂、魂のようなモノなので離れていても感じるモノはあるだろう。
信じてくれているのか心配らしく、オドオドした雰囲気か感じられる。
「今回の犯人は几帳面って言うか、情熱を感じるな」
人間の『作品』もかなり丁寧に作られており、余計にキモさが増していた。
その丁寧さが霊にも出ており、霊と使ったパーツをきちんと合わせて作り替えている。
これは霊が見える人に対してのモノだと思う。
何が目的か分からないが、絶対に見つけ出す。
霊を直接操ったりするのは死神教団の常套手段だ。
今回の事件を追っていけば奴らのしっぽを掴めるかもしれない。
手離す訳にはいかない。
「当分はここで休んでください。ここなら霊媒師も入って来ない⋯⋯解決の協力もしてくれませんか? 全てが終わった時には貴方を蘇生します」
『で、できるんですか?』
『我を侮るな!』
「はい。可能です。死神ちゃんの力は死を操る。死を司る神ですから。死を与えることも奪うこともできます」
蘇生、その餌により協力者が増えた。
今回の犯人はこの改造霊と作品をくっつけている特徴がある。
ダンケンに取り押さえられた作品などの回収もしないと、完全復活は難しいだろう。
すぐには燃やされないとは思う。
死体と霊魂があれば蘇生は可能だ。
作品にはしっかり処置が施されてとり、死体の状態維持が可能になっていた。
証拠品として当分扱うだろう。
学校に行くことにする。
霊は両親と仲良く会話しており、テレビをつけている。
『ダンジョンニュースです。昨日、ダンジョン内にてとあるモノが発見されました。それはとてもおぞましく、見せることはできません。ただ、事件性ありと考えられており、冒険者皆様はお気をつけて冒険してくださいとのことです』
ニュースになってた。
昨日のあれが初って訳じゃなかったようだ。
まぁ、それだったらダンケンの人達がぞろぞろ来る訳ないか。
それにすごく落ち着いていたし。
学校に到着した。
今日の四限目の体育の授業でぶっ倒れたわたしは保健室で寝ていた。
この学校は設備が良く、保健室のベッドの寝心地はなかなかに良いと言える。
今のうちに今回のニュースがネットニュース公式アカウントから発表されていたので、引用して調査すると告知する。
するとすぐにコメントが寄せられる。
『死神探偵が動くなら解決間違いなし!』
『ダンケンの意味がなくなってしまう』
『やめて、ダンケンのライフはもうゼロよ!』
などなど、数々の応援コメントが寄せられる。
「へへ」
『典型的なネットイキリマンじゃな』
「⋯⋯」
死神ちゃんが普通に外に出られるようになって(わたしと一定範囲)やかましくなった。
嫌な訳じゃないが、こうも煽られるとさすがに腹立つし殴りたくなる。
殴ろうとすると消えるので殴れないのだけど。
「任せて視聴者よ。今回は全力」
『いつも全力』
⋯⋯うっさい。
わりと事件解決とかしちゃっているわたしは謎を追えばすぐにバズる、人気者だ。
そんな人気者はこの学校でも有名なはずだが、誰もわたしにサインを求めてこない。
ただ、いついかなる時も完璧なサインが書けるように毎日練習はしている。
実践経験はゼロだけど。
「あれ? 今日も体育で倒れたの?」
「今日も、じゃないです。今日は、です。バレーのスマッシュが炸裂しました⋯⋯顔面に」
多分鼻の骨が折れたと思うけど、それくらいなら数分で回復した。
ぶっちゃけもう動けるけど、体育をやりたくないのでおサボりだ。
体育の成績なんて、ちゃんと出席してまともに取り組んでるアピールしとけば留年はしない。
きっとね。
「少しは日頃の運動をしたらどう?」
「風音先生。わたし、運動したら灰になって死にます」
『その時は我が蘇生してやる。我々に死の概念はなーい!』
クスリと先生は笑い、窓際に置いてある花に水をやる。
「また新しいですね」
「ええ。コロコロ変えたら、君の様な常連さんが楽しめるでしょ? 自分のモノを見てもらって、評価されるのが好きなのよ」
「⋯⋯綺麗ですよ」
「ふふ、ありがとう」
風音先生は悪霊に取り憑かれてないので、誰かに恨まれる人生は送ってない。
だからこそ信用できる人でもある。
「風音先生。今日のダンジョンニュース見ましたか?」
「⋯⋯あれでしょ? おぞましい作品って言う」
「そうです」
「嫌な世の中だよね。ダンジョンで殺人してもなかなか立証されない。罪にするのが難しい。でも、こうやってアピールする人もいる」
そう言って、ネットニュースになっているのをわたしに見せてくる。
誰かが撮影した画像もあるのか、その作品が世間に露呈していた。
警察は何をやっているんだ。
こう言う情報を広めないようにするのも警察の仕事だろうに⋯⋯ま、難しいんだろうけどさ。
「先生は犯人、どんな人だと思いますか?」
「そうね。分からないかな。ダンジョンって複数あるギルドのゲートを通ればどこでも行けるんでしょ? どこに犯人が住んでるとか、分からないわよ」
「そうですね。その通りです」
国ごとに行けるダンジョンは違うけど、国内なら同じだ。
どこのギルドからもダンジョンに行くことができる。
だからこそ、ダンジョンで起こった事件は難航するのだ。
ダンジョンで起きた事件を証拠などを掴んで犯人を捕まえる⋯⋯それが表向きのダンケン。
だけど、奴らは法をくぐり抜けようとする犯罪者には容赦しない。
目には目を、歯には歯を普通にやってくるやからなのだ。
「⋯⋯いまさらなんですけど、先生なにか良いことありましたか?」
「なんで?」
「どことなくテンションが高い気がしまして⋯⋯」
実際、どこか浮ついた感じが先生から感じる。
いつもよりも声のトーンも高いし。
⋯⋯か、彼氏でもできたのかな?
彼氏居ない歴年齢って自嘲気味に言っていたのに、ついに卒業したのかな?
「気づいちゃったか〜実はね、前々から欲しかった機材が今日、届くのよ! だから今朝からテンション爆アゲなの」
「そ、そうなんですね」
先生に春が来た訳では無いようだ。
化学の授業だ。
午後最初の授業が化学だとすごく眠くなってしまう。冗談だけど。
いつものように早く来たわたしは毎回化学室で寝たフリをして授業開始を待ち、体力回復と睡眠している感じを出している。
七義先生は来るのが早い。
だからこの場合、気まづい空気が流れるのだ。
わたしは受身を基本としている。
『取り憑いたままだな』
「そうだね」
女性二人の霊が七義先生に取り憑いたままなことに死神ちゃんがわたしに言う。
死神ちゃんの眼をわたしも持っているので、当然霊の姿は見える。
やつれたような先生。
「今朝のニュースは見たかい? ネットに上がってる写真知ってる? 紫菜々伊さんは知ってるっけ? 僕が元々医者を目指していたことをさ。だから許せない部分もあるんだ」
全くご存知ありませんでした。
「医者になったら、人の内蔵いじれると思ってさ。人の体を変えるとか、最低だよ」
サイコパス!
その考えもなかなかに酷い気がするのはわたしだけ?
死神ちゃんは⋯⋯そもそも人間的価値観を持ってないので参考にならない。
「まぁなんか医者にはなったんだけどさ、ハブられて、耐えきれなくて先生になったんだよ」
世の中で医者になりたい人に謝るべき発言をサラッと言ったぞ。
職場環境が嫌になって先生になったの?
教員免許は?
「まぁでもさ、医療の知識や技術があっても、魔法のある世の中じゃあまり重宝されない。魔力があればどこでもできる魔法と、設備や道具がないとできない手術」
人体模型をいじりながらそう言ってくる。
なんか怖さを感じる。
「で、でもです。回復魔法はただ、治すだけ。手術は悪い部分を取り除くことができる、ますし、やっぱり、違うと⋯⋯思います」
我ながら饒舌になってしまった。
「⋯⋯はは。ありがとうね。でも僕はね、回復魔法が欲しいんだ。そしたら、どこでもくっつけることが可能だから」
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