それは壊れやすいもの

貴方は鏡を見ながらネクタイを整える。

何事も無かった事にしなければならない。

この関係は正しいものではないから。


「次はいつ?」


背中に問いかけた言葉は無機質にフェードアウトする。

貴方はこちらに向き直り、微笑むとそっと指で頬に触れた。

「月曜には会えるだろ。」

「そうじゃなくて…。」

言い切らない内に頬をつねられる。

楽しそうに笑うと指を離し、強く抱き締めてくれた。


「わかるだろ?」

「…うん。」


わかるよ。

望み過ぎれば簡単に壊れる関係だってこと。

それでも望まずにはいられない。


貴方を独り占めできるわずかな時が、今の私(僕)の全て。


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