春光、立つ日
蜻蛉玉の帯留めが静かに煌めく。
空色の硝子に藍色を混ぜ、銀粉を散らした。
姉はそれを手渡し、あの日共に見た星空だと言う。
組紐を編んだのは兄の手。
赤、白、黒。金糸と銀糸。
その手つきの違わぬ事、兄そのものだった。
松竹梅に鶴が翔ぶ晴れ着は
母が仕立て直してくれたもの。
これはかつて曾祖母も婚礼で着たものだとか。
父が草履を揃え、玄関の戸を引く。
『良い日和だ』
その穏やかな声に導かれ、私は表に出る。
風運ぶ、香りを辿れば臘梅の花。
振り返ればいつでも。
君の元へと香りを運ぶ。
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