第26話 お祭り②

私は鏡の前に立っていた。



細かい花柄のワンピースにフリルが少しついたもので、帽子にはスズランの造花がついている。




いつもなら、落ち着いたものを着ているが、今日はお祖母様にいただいたワンピースドレスだ。婚約している間私はおとなしめのものしか着ていなかった。それが、王妃になるためだったから、私は納得していた。少し明るめの上品なものを着ていたら、彼に似合わないと言われたはず…。





「今は好きなものが着れるのね。」





「とーっても似合ってるよ、マリア。」



ジャスミンが私の周りを飛びながら喜んでいる。



「あぁ、そうだな。サイラスが誉めなかったら、私たちが悪戯しよう。」




サイラスも私のワンピースを見て誉めてくれた。いつも言わないジョークまで言っている。




「お嬢様、サイラスノーフォーク様がお越しになりました。」



イリーナが私に声をかけてきた。




「わかりました。今行きます。」



私はドキドキした気持ちを抑えながら、階段を降りた。


なんて言われるかしら…。



「こんばんは。今日は誘っていただきありがとうございます。」




私はサイラスの近くに行くとすぐお礼の言葉とお辞儀をした。彼がどんな反応をするのかとても怖かったからだ。




「こちらこそありがとう。今日もとても綺麗だね。」




彼はにっこり微笑んでくれた。




顔が少し赤くなるのに自分で気がついた。ドキドキしてるんだわ。誉めていただくなんて久しぶりだもの。






私は自分を納得させるように一旦下を向いて息を整えて、




「ありがとうございます。サイラス様もとても素敵です。」





サイラスの衣装は、すこしカジュアルなシャツに軽め深緑のジャケット、動きやすい服装だ。




彼は私の目の前に手を差し出し、




「行こうか、マリア」




ゆっくりと手を取り私は返事をした。




「はい。」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る