落ちこぼれ竜騎士と、はじまりの船
空色蜻蛉
01 発掘された船
「チャンスは残り三回です」どこか楽しげに声は告げた。
よく通る女性の声だった。興味を覚え視線をやると、広大な格納庫の片隅で、何やら不穏なやり取りが展開されている。
「あと三回の間に、その
「ふざけるな。それはもともと、うちの星にあったものだ」
「はい。ですから、機会を差し上げています。そもそも
格納庫には、黒い覆いが掛けられた巨大な物体が置いてある。その前で、バダインジャラン星の領主と、
領主は太った中年の男だ。彼と相対している
「ムーヤン! まだ
「父さん、でも初めてで……」
「言い訳はいい。お前には、最新式の高価な
領主は、隣の息子を叱咤している。
無駄なことを。
ミコトは唇をゆがめた。
領主の息子は、成績は中ほど。ちょっとできる、くらいじゃ、いくら最新式の補助脳を付けても、
「気になるか?」
上空の桟橋から茶番を眺めていると、同僚の一人が寄ってきた。
「砂漠の片隅で、竜船が発見されたそうだぞ。普通は
「そうらしいな」
「まあ、気持ちは分からないでもない。この星は砂漠ばかりで、珍しい鉱物が出る訳でもなければ、有名人の出身地という訳でもない。
竜船とは、星を開拓する時に見つかる、古代文明の遺物だ。
機械でありながら生物的なフォルム、翼を広げた竜のような姿をしているので、竜船と呼ばれる。
竜船は、発見され次第、
虚種は、寄生獣や、植物の姿を取り、人を喰らって成長する。やがて怪物になって、星を呑み込むのだ。
どこかで星を喰らった虚種の群れは、次なる標的を求め、宇宙を徘徊する。まるっきりB級映画の怪物そのままの虚種から、銀河を運行する船を守るのが、竜船の仕事だ。
「戦闘用の船を、観光目的に飾っておくのか」
ミコトは呆れたが、同僚は不思議そうな顔をする。
「だって動いているところを見たことがないからなぁ。ミコト、お前は昔、バダインジャランの外にでてアカデミーに留学していたんだろ。動いているところを、見たことがあるのか?」
「……」
見たことがあるどころか。
同僚の質問に答えたくなくて、ミコトは曖昧に笑んだ。
「昔だからな。忘れちまった。そろそろ仕事に戻ろうぜ」
今の自分は、しがない
ミコトは同僚の背を押して、通路の元来た道を戻り始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます