103.僕は成長したから私になる!
僕が生まれた三十回目のお祝いをする。僕が精霊を生み出したのは、変革と呼ばれていた。最近になって、ようやく皆が神様だと知ったの。
ルミエルにお花をいっぱい、抱えきれないくらい贈られた。サフィはお菓子、一緒に愛し子のクロセルもお祝いに来る。クロセルは男の子で、サフィは女神様で確定した。
いつの間にか僕を追い越したロレイを連れたシュハザは、綺麗なガラスのペンをくれる。ゼルクは遅刻みたい。ずっと忙しそうだったから、仕方ないね。
シアラは可愛い兎を差し出した。飼う時の注意で、花を食べちゃうんだって。長い耳が羽になってるから、空も飛ぶみたい。逃がさないようにしなくちゃ。コテツも来てくれた。抱っこして挨拶をする。
「イル、ケーキが届いたぞ」
メリクに呼ばれて駆け寄ると、僕が両手を広げたくらい大きいケーキがあった。これは人族がいる世界のお菓子だ。ゼルクと他の神様にお願いしたの。
「遅れて悪い」
ゼルクは、最近人族を増やしている。管理する世界が荒れて大変だけど、どうしても愛し子が欲しいんだって。愛し子はどうして人から生まれるんだろう。
「変なところに疑問を持ったな」
黒髪を撫でるメリクに、首を傾げる。手を伸ばすと抱っこされた。僕はずっと成長しなくて、大きくならない。三歳のまま、メリクは神の成長はもっと遅いと笑った。だから気にしていない。メリクだって、すごく長い時間をかけて大きくなった。僕も同じだよ。
「お祝いを」
「祝福を……」
「変革の愛し子様に幸運を」
他の神様達もお祝いに来た。昔はメリクが嫌がったけど、今は気にしていない。僕が祝ってもらって嬉しいと言ったから。一年に一度は我慢するみたい。僕はたくさん愛されている。
「僕はメリクを大好き」
「俺も愛してる」
「うん。私もメリクを愛してるわ」
サフィの言葉を真似て、私って言った。何だかむずむずする。
「イ、イル?!」
「え、ちょ?」
「なんで!」
皆が騒いで、体のむずむずが強くなって。メリクが布を体に巻きつけた。大きな布にすっぽり隠れたのは、お気に入りだったピンクの服だ。びりっと音がした。
「急成長って……え? 何が、もしかして」
皆が私を見る。体がぼんと揺れて、大きくなった。お洋服が破れちゃうと心配したら、メリクが力を使う。ふわりと柔らかな布が触れて、ピンクの服も成長した。
「私……、壊れた?」
「いいや。成長しているぞ」
メリクは目を見開いて、私を引き寄せた。シーツの大きさの布から覗くと、体が大きい。サフィ程じゃないけど、胸も膨らんだ。手も足もすらりと長い。メリクのお膝から落ちそうだった。
「抱っこし直すぞ」
「わかった」
メリクの首に手を回す。前と違ってぐるりと肩まで届いた。僕の膝と腰に手を当てて、メリクが横向きに抱っこする。
「びっくりしたけど、それ以上に……その、綺麗」
ルミエルがぽつりと呟き、ゼルクやシュハザが呆然と同意する。サフィは笑顔で「今までの可愛いに綺麗が足されたら最強じゃない」と興奮していた。
結局、私の体はどうなっちゃったの?
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