54.お友達が楽しみで眠れないの
また明日ね、は約束なんだって。お風呂で教えてもらい、嬉しくなった。だって、僕と明日も会ってくれるんだよ。遊ぼうって言っていた。
「お友達は仲良くできそうか?」
「うん! ルミエルだよ。やさしいの」
僕を嫌わないし、叩かない。それに色々知らなくても、変な顔をしなかった。いっぱい説明したい言葉が溢れるけど、うまく言えなくて。それをメリクは分かってくれる。
「よかったな」
「うん」
言葉はたくさん聞いて、使うと覚えられるみたい。僕は今まで知らないことばかりだけど、メリクはいっぱい知ってる。僕はメリクから覚えて、ルミエルにも教えてもらおう。そうしたら、いっぱい話せるようになるね。
明日も来てくれるのが楽しみで、ベッドに入っても眠くならなかった。メリクの本を読む声が止まっても、目がぱっちりしている。
「興奮しちゃったか。じゃあ、歌ってやろう。そうしたら眠れるぞ」
「おうた?」
頷いたメリクの口から、すごく綺麗な音がいっぱい出てきた。きらきらと音が舞う。精霊も踊ってるし、にゃーもゆらりと尻尾を振った。柔らかい音がいくつも並んで、僕はゆっくり目を閉じる。深く吸い込んで吐いて……眠れそう。
最後にメリクの声が「おやすみ」って言った気がするけど……。
次に目を開けたのは、明るいお日様が出てからだった。もしかして、もう来ちゃうかな。慌ててベッドから降りようとしたら、メリクに止められた。
「まだ来ないよ。遊ぶのは後にして、ご飯を食べて着替えないと」
「うん、へいき?」
まだ時間はある? 尋ねる僕に、メリクが「平気だ」と言い切った。安心してご飯を待つ。メリクが用意したのは、両手で掴んで食べられるパンだった。真ん中に卵が入ってる。僕、卵は好き。メリクとご飯をして初めて食べたの。
もぐもぐと食べる間に、メリクの口へパンを運ぶ。僕の口が空くと、メリクの手がパンを差し出した。僕が持ってるのより、メリクが差し出すパンの方が小さいの。食べやすいんだよ。
汚れた手を洗って、お着替えをした。赤いリボンがいいので、服も同じ赤にする。それから靴も赤。みんな赤にした。
「すごく似合う。可愛いぞ、イル」
「ありがとう」
全部準備したら、赤い扉がコンコンと音を立てた。走っていって開けると、ルミエルがいる。
「イルちゃん、遊びましょう」
「うん!」
「今日は日差しも強いし、中でお菓子を作ったらどうだ? 準備できているし、焼いたら食べられるぞ」
メリクが後ろからお菓子を作ろうと誘う。ルミエルはぽんと手を叩いて喜んだ。
「素敵。おやつね」
おやつは分からないので、教えてもらった。その間に、にゃーがお外へ出ていく。メリクは扉を閉めちゃったけど、帰ってきて困らないかな? コンコンしたら、僕が開けるからね。
用意されたのは粉と卵とミルク。それからミルクを固めた黄色いの。それを混ぜたり潰したり伸ばしたりして。最後にいろんな形にして並べた。これ、本当に食べられるの?
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