第80話 野望の跡 ーヴィダルー
「こ、このアンデッド強すぎる……っ!?」
ハーピー兵が剣を振るうが、不死の兵は攻撃を物ともせず、ハーピー兵へ剣を突き刺していく。
「ギャアアアアァァァ!」
移動魔法により現れた大量の
「妾の身体強化魔法をかけた軍勢じゃぞ? 鳥女如きが勝てる訳なかろう」
イリアスが呆れたように肩をすくめた。
「死ねぇぇぇぇ!!」
突然飛びかかって来た兵士達。そんな敵を見てもなおイリアスは不敵に笑った。
「素早さ
彼女が魔法を使用すると、その側近達3人がハーピー達へと向かっていく。
「ザンブルは地上の者を斬り伏せろ。ダルクは空の鳥女を撃ち落とせ。ラスハは……」
「貰ったあああぁぁぁ!」
言いかけた所で背後から新手が現れる。イリアスは一切振り返ることなく指示を出した。
「後ろの女を切り裂くのじゃ」
影から現れた大斧がハーピー兵の上半身を飛ばす。
「あう"!?」
周囲のハーピー達が同時に叫び声を上げる。イリアスの側近達が連携しながら敵を討っていく。そして、ものの数秒で周囲にいた敵兵へ対処した。
「イリアス様。全て対処致しました」
大斧を担いだ人間の女……ラスハが片膝をつく。イリアスはそれを見て満足そうに笑みを浮かべた。
「うむ。皆良くやったのじゃ。次は
「「「はっ」」」
返事と同時に3人の兵士が散っていく。
イリアスの仕上がりは完璧だな。側近との連携も良い。これからは単独作戦も任せられるな。
……俺達も行くか。
「キュオリス。アクアブレス発射!」
「キュオオオオオオオォォォン!!」
ディープドラゴンが、その透明な被膜を広げ飛び上がる。
空中で体を翻したドラゴンが大地へと向かい水流を吐く。
「皆伏せろぉ!! がぁっ!?」
他の者へと呼び掛けていたハーピー兵の首が飛び、大地へと転がる。
糸の様に細くなったアクアブレスは、直線にある物全てを切断した。
「やっぱり威力すっごいね! でもヴィダル? なんでキュオリス? キュオちゃんじゃないの〜?」
「フィオナが付けてくれた。レオリアの付けた名前だと戦場では呼び辛いだろうからと」
「む〜!! なにあの女ぁ!!」
地団駄を踏むレオリアをなだめながら耳打ちをする。
「そう怒るな。戦場で最も信頼を置いているのはレオリアだ」
「本当?」
「当たり前だろう? 俺にその双剣とレオリアの実力、見せてくれ」
「うっふふふふふふふヴィダルがそう言うなら僕がんばっちゃうからねぇ〜」
「な、なんかクネクネしとるのぉレオリア……」
「イリアスも見てなよぉ〜僕の活躍をさ!」
口調とは裏腹にレオリアの瞳孔が獣のように鋭くなる。
「あっはははははははははははは!! ハーピー共!! 覚悟しろ!!」
興奮を抑え切れない様子でレオリアが走り出す。
闘技場の観客席を猫のように走り抜け、空中のハーピー兵めがけて飛び上がる。
「
縦に高速回転したレオリアが斬撃を放つ。そこに双剣クラウソラスのアビリティが加わり、斬撃は光の刃となって空を飛ぶハーピーを切り裂いた。
「ギャァアッ!?」
「あっはははは次つぎぃ!!」
落下するハーピーを踏み付けレオリアがさらに高く舞い上がり、別種のハーピーの上空を獲る。
「コイツ!? 翼も無いくせに!?」
狙われたハーピー兵がその槍先でレオリアを狙う。
「無駄だって!」
レオリアが双剣ソラスを振るうと、その槍は木端微塵に切り裂かれる。
空中でマントを翻しながらレオリアが
「
円を描いた連続斬撃がハーピーを微塵切りにする。光を帯びたその斬撃は、勢いを止めず、地上にいる兵士達をも切り裂いた。
「な、なんだよ……お前達……なんで、そんな、力が……」
動揺した様子のザビーネへと語りかける。
「我らは魔王に愛されし血族。今のハーピオンに我らを倒す術は無い。降伏しろ」
「降伏だとぉ……? ふざけんじゃねぇ!! アタシはなぁ死ぬ気で女王になったんだ!! これからは奪う側として生きるんだよっ!!!」
「……私欲の強い女だ。魔王軍知将の名において宣言してやろう。ザビーネ。貴様は王の器では無い」
「黙れええええぇぇぇ!!」
……最大威力の
「レオリア。格の違いを見せてやれ」
「あはっ。了解!」
レオリアが双剣クラウとソラスの背を合わせる。
2つの双剣が溶け合い、一つの大剣へと姿を変える。
「オラオラ鳥女ぁ! お前のその顔歪ませてやるよぉ!!」
レオリアがザビーネと全く同じ構えをとる。
「テメェ!! なんで大剣技の構えをとってやがる!!」
「僕はねぇ。ふふ。
「ふざけやがって……っ!?」
ザビーネがグラムの力を解放する。大剣が凄まじいオーラを放つ。
「死ねえええええぇぇぇ!!」
そして、2人の剣士は同時に技名を叫んだ。
同じ
「「
双方から同時に斬撃が放たれる。
聖大剣グラムは空間を歪ませ、聖剣クラウソラスは巨大な光の刃を放ち——
——2つの斬撃が激突する。
「貰ったああああああぁぁぁ!!」
グラムの斬撃が光の刃を飲み込んだと思われた瞬間。
光の刃がその輝きを増し、グラムの斬撃を打ち砕いた。
「な……ん……」
さらに輝きを増した光の刃がザビーネへと直撃する。
「ぐああああああァァァ!!?」
胸に大きな傷を刻み込まれたザビーネは、そのまま力無く崩れ去った。
「ふふ。絶対的な自信を持つ技での敗北……プライドズタズタでしょ?」
レオリアが双剣を納刀する。
女王を倒された闘技場にはハーピー達の叫び声だけがこだましていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます