第2話 ゲーム開発者・坂本翔平は、バトルがしたい
――カタカタカタ。
えっと、『ファンタジア・エルドーン』の反応っと。
*ユニーク・イベント発生!?
*チャリン・スキーの言う、王都とは!?
*銀行で、貯金! 資産が倍に!!
*銀行だから、株式も導入くるか!?
*融資はあるの?
*明日買えるという、銀行でしか買えない武器・魔法・スキルとは!?
*銀行で買える物の内容が分かりました! リーク注意! 削除上等!!
*銀行で買える内容の、偽情報に注意! なんも分かってないぞ!!
*明日、続編くる!? 新エリア解放か!?
*俺たちの、ファンタジア・エルドーンが、返ってきたのか!?
「ふーむ」
なかなか、多くのスレが立ってるし。話題になってるな。
半年何もなかったゲームとしては、上々だろう。
「まァ、復活できるか、マジで分からんがなァ」
正直、厳しいだろうな。
というか、無茶で無謀な案件だ。普通は受けない。
つまり、これを受けた俺の状態は、普通じゃないってことだ。
「これで稼がんと、人生詰んでるからねぇ」
ことの始まりは、1か月前。
俺は勤めていたゲーム会社の経営方針転換で、いきなり首になった。
その時。
「稼げん奴は首だ! さっさと出ていけ無能!!! お前の作ったゲームは、絶対に売らないし! 退職金はなしだ!! 儂に不利益を与えたことを訴えられないだけ、ありがたいと思え!!!」
っと、社長に言われてカチンときて。
その足で、労基に駆け込み。
今までの残業未払や、土日出勤当たり前。24時間勤務に、有給絶対不許可の話を報告して。
会社に強制捜査を入れたのである。
そのおかげで、会社は通常業務も回らなくなり。リリース予定だったゲームは、開発が頓挫。
ものすごい赤字を抱えたようで、ニュースにもなってた。
ざまァWWW
っで、そこで話は終わり。
労基が分捕ってきてくれた、満額の退職金に、これまでの残業代や諸々入った大金で。
これから、どうすっかなァ。と思っていたら。
「死ねぇぇえ!!! 泥棒! 盗人! 犯罪者!!! しねぇぇえ!!!」
っと、鬼の形相の社長が、俺の家に突撃。
どうやら、退職金もろもろを盗られた(と社長は思っている)のと、その関係でゲーム発売できずに会社が傾いたことで、血管ブチギレ。
チェーンソーを持って、俺を殺しにきたらしい。
なので。
「あ、警察ですか? チェーンソーを持った『ロクデナシ・ゲームズ』の社長が、家に突撃してきてまして。
ええ。住所は○○ハイツで、はい。あのニュースの会社の社長です。
私、あそこをやめた社員でして、その報復でしょう。すぐ来てください」
と、通報。
その直後。バリバリバリィィィ!!! っと、ドアが破れる音がして。
「死ねぇぇえ!!!」
と、社長が入ってきたので。
俺は、側に置いてあるライターと、強力殺虫剤を手にし。
即席火炎放射を、お見舞。
――ブォォォオオオ!!!
「!? ぎゃあああ!!!」
親父から、『生き物に襲われたら、火を使え。顔を焼き、鼻と口を焼け。痛みで怯み、相手は逃げる。逃げなくても、呼吸ができなくなって倒れる』と言われていた通り。
チェーンソーを持っていた社長は、火をガードできず。思いっきり顔を焼かれて、絶叫。
口を開けたものだから、喉まで焼かれて酸素が一気になくなり。
その場に倒れ込んだ。
尚、チェーンソーの上に倒れ込んだので……まァ、お察しである。
ズバババッッッ!!! っと、肉と骨が切れる音はすごかった。
今度、ゲームで採用しようと思うくらいには。
っと、言う訳で。
凸してきた気狂い社長を、正当防衛で焼き。事故で、スプラッターなことになった後。
おっとり刀で駆け付けた警察官が、驚愕しながら救急車を呼び、俺は証言。
同時に、部屋に仕込んでいた防犯カメラを見せて、正当防衛成立。
昔なら、正当防衛でも認めっられるのに裁判やなんかが必要だったらしいが。最近の法改正で、手続きがぐっと縮小されたこともあり、『俺に罪なし』となった。
ただ、社長が生きてたら(警察は、100%死ぬと思ってたようだが)、殺人未遂の証言を求められるかもしれないといわれ。その後はいろいろな手続きと会話をして終わり。
住んでたハイツの大家には、マジで迷惑かけたなと思ったので。
退職金から金出して弁償しつつ、社長に賠償を請求した。
まァ、社長は死ぬかもしれんし、裁判も長引くかなァっと思っていたんだが。
なんとあの社長、死なずに生き残り。裁判も、スピード裁判で有罪確定。
懲役20年で、執行猶予梨の実刑。
俺の家の賠償や、ダメもとで出してた慰謝料が、満額出たのである。
いったいどうしてだろうか? と思ったが、過ぎに理由は分かった。
実は、『ロクデナシ・ゲームズ』を解散し、新しく『株式会社ゼニゲバ』という会社を作ったのが、俺と一緒に働いていた同期であり。
もっと言えば、俺が開発したゲーム・システムを盗んでゲームを作った、クソ・オブ・クソの同僚であったのである。
それで、『ああ、クソ野郎が気狂い社長のデータやらなんやらを警察や検察に渡して、弁護不能な事態に持っていったんだな。その功績で、社長になれたわけか』と、気付いたのだ。
おそらく、会社の運営がひどすぎて、国家・運営介入法が動き建て直しを図った際。
事件解決に尽力したってことで、選ばれたんだろうな。
けった糞悪い!!!
あいつが運営する会社なら、絶対ろくなことにならねぇわ!
そもそも、あいつが俺のゲーム盗んでなかったら! こうなってないんだわ!! と、ブチ切れながら。
俺は、無職の日常を手に入れたのだ。
ああ、手に入れた金で買った、セキュリティー万全のマンションの一室で、寝て食って、遊ぶ日々。
でも、ずっとはそうできない。
この後、どうすっかなァ。と思っていたら。
――ピピピ。電話です。三国幸太郎。
懐かしい奴から、電話が来たのである。
そう。それが、ファンタジア・エルドーンの開発者であり。
俺の大学の友人であった、三国幸太郎からだったのだ。
っで。
「ファンタジア・エルドーンを助けてよ! 給料は、出来高制で!!! 課金分は、ほぼ上げるから! ね! お願い!!!」
そう言われて、俺は、奴の会社と契約し。この仕事に就いたのである。
うん。首になり、社長を倒し、無職になっていなかったら。
絶対にしてない仕事だったのだ。
……まァ、そうだろうな。
普通、300万から300人に減ったユーザーのゲームが、復活することはない。
VRゲーム開発者のはしくれとして、断言できる。
このままユーザーは減り続け、サービスて停止。ゲームは死亡するだろう。
だが。
「このゲームが死んだら、俺も死ぬ。なんとか、生き返ってもらわないとなァ」
不景気の日本で、次の仕事ってのはそうそう見つからない。
世界的に経済がヤバいんだ。そりゃあそうだろう。
あと、俺は労基と社長殺し(正当防衛)の件で、業界じゃ名前が知れた。
ココを去っても、ゲーム業界で俺を雇う奴はいない。
つまり、このゲームが死ぬとき、俺も死ぬ。
それくらい人生がけっぷちの俺は、ほぼオワコン状態のファンタジア・エルドーンに、全掛けするしかなかったのだ。
「さて、スレや掲示板での動きは……お、少しある!」
*復帰する人確認! 今の、ファンタジア・エルドーンでのマナー! 流行! チェック!
*復帰する旅人たち! 要チェック! 現在のファンタジア・エルドーンの状況! 半年前と、ここが違う!!!
ほうほう。結構あるな。
こういうスレや掲示板が立ってくれると、少しは宣伝になる。
プレイヤーも、何人か戻ってきそうだ。
まずは、話題にならねぇとなァ。
――ピピピ!!!
っと、電話。あいつか。
もしもし。
「おお! 翔平! ネット見てるか!? 早速反応あったぞ! ユーザーが戻ってきてるよ!」
「落ち着け。幸太郎。まだ初動だ。それに、今後の展開を考えると、また離れる可能性が高い。なんせ……」
本当のゲームの続編は、明日に来ないんだからな。
「う。まァ、確かにそれはそうだな。続編期待してきてる人は、離れるかも」
だろうな。だが、何もしないわけじゃない。
明確なアクションは、起こすんだ。
それにより、何人かは離れるが、何人かはユーザーとして取り込めるだろう。
失ったものは、すぐには戻らない。
少しづつアクションを起こして、少しづつ。やり直すしかないのさ。
「ああ、お前の言うとおりだよ。翔平。半年も何もしてなくて、本編もまだ開発中だしなァ。何かしないと、本当に終わる。ファンタジア・エルドーンが、終わってしまう」
「翔平! マジで頼むぞ! 明日からの、イベント! 始まりの街と、静かな森、岩山のエリアだけでできる! 時間稼ぎイベント! ぜひ、成功させてくれ!!!」
わーてるよ。
俺としても、給料は欲しいからな。
お前の『続編開発までの時間』を、俺が稼ぐ。
ありあわせのゲームデータと、俺のアイデアを用いた。
アドリブ・イベントで!
「~~~!!! ふ、不安だ! 何度聞いても! 開発中のゲームデータと、お前のアイデアのみのイベント! オール・アドリブのイベントで、ゲームを盛り上げるなんて!!!」
いや、それ以外に方法ないだろ。
お前も賛成したろうが。
それに、安心しろ。似たようなことでの実績はある。
だから、お前は俺に命預けて! 早くデータを作れ!!!
マジで!!!
「っく! わかってるよ! それは! だから今も、作ってるし!!」
「でも、本当に大丈夫なのか? お前、チャリン・スキーっていうNPCのフリして、銀行作ってたけど。何をするんだ?」
フリじゃねぇ。NPCの中に俺が入って、動いてるだけだ。
そして、イベントの内容はお前にも言えない。
これは契約の時にも行ったが、俺は誰の指図もうけない。ゲームの内容は誰にも話さない。俺の、やりたいようにやる。
前の会社でゲームを盗まれた時から、俺はそう決めたんだ。
後、お前の作るゲーム本編に、なんか影響与えちまうとまずいからな。
そういう意味でも、あんまりしゃべらんようにしている。
って、前にも言ったよな。
「いや、それは分かるけど。やっぱ心配で……」
はー(くそでか溜息)。
っま、明日には分かるし、ここで反対されたらファンタジア・エルドーンが死ぬだけだから。
特別に教えてやろう。
「!! ありがとう! で、何をするんだ?」
何って、決まってるだろ。
あんまり広くないステージで、300+α人のユーザーで。
盛り上がる事と言えば。
「戦争しかないだろーが」
殺し合いだよ、ええ!!!
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