第9話 さらなる孤立
正樹に投げ飛ばされた翌日、俺と正樹は担任から呼び出しをくらっていた
どうやら正樹の母親が、俺が嫌がらせをして正樹を困らせたという内容で担任に電話があったそうだ
「で、大輝この内容は本当なのか?」
「いや、本当はー」
俺は、正樹との間に何が起きたのか、自分の言動も正直に全て担任に報告した
「うーん。正樹のお母さんから聞いてる内容と違うんよな。大輝は嘘はついてないんやな」
「はい。全部本当の事です」
「正樹は?何か違うか?」
「いや、大輝の言ってることは嘘っぱちですよ!」
「なら、俺のこの膝についてる傷については?なにか弁明はあるの?」
「はあ?そんな傷知らんし!勝手に俺が付けたみたいに言うな!」
「まあまあ、両方落ち着け」
担任は俺たち二人の間に入り、落ち着かせると
「とりあえず、原因を作ったのは大輝なんやから、正樹に対して謝れ、正樹は大輝を投げ飛ばすのはやりすぎや、これから気をつけろよ」
「え?」
俺はしばらくの間思考が止まった
俺が原因?正樹がサボったことが原因では?
俺を投げ飛ばすのはやりすぎだからこれから気をつけろ?それだけ?
なんで俺だけが謝罪必要なんだ?
まるで全て俺が原因のようではないか
「双方それでいいな!じゃあ大輝は謝罪!」
「え?あ、え、」
「ほら!謝る!」
「ご、ごめんなさい」
言わされてしまった、自分自身は悪いとは思っていないのに、謝罪の言葉を口に出してしまった
「いいよ、次から気をつけろよ」
正樹は何処か嬉しそうに許しの言葉を口にした
俺はどうすれば良かったんだ?先に担任に報告していれば何か変わったのか?
ここで謝罪をしてしまった事、そして相手が許しの言葉を口にしたこと
この二つは俺と正樹の間に上下関係をつけるには十分だった
俺は喧嘩を吹っ掛けた側、正樹は喧嘩を吹っ掛けられた側
加害者と被害者
この関係が正しいと、第3者には見えてしまう
俺にとっての一番の不幸としては、この事が他の同級生たちにも知れ渡ってしまった事だった
「ねえ、正樹と喧嘩したのって本当なの?」
「一応本当やで」
「そうなんや、前から正樹と仲悪かったけど、まさか喧嘩するとは」
担任に呼び出されてから、周りの人から喧嘩について聞かれる事が多くなった
俺は聴かれたことには答えるが、自分が言いふらすことはしなかった
正樹はまるで武勇伝かのように周りに言いふらしていた、内容を自分のいいように変えて
俺だけが否定したところで信じてもらえることも無く、噂の内容は「大輝が正樹に喧嘩を吹っ掛け大輝が負けた」という内容のものになっていた
それからしばらくして、俺は周りとの距離が今まで以上に空くことになっていた
噂に尾びれが付き「大輝は難癖をつけて喧嘩をふっかけてくる」というのが、同級生たちの共通認識のようになっていた
俺は、周りとの距離を取り戻そうと初めは考えたが、どうすることも出来ず読書に逃げるようになっていた
少し期間が経つと、読書にはまり込むようになり、俺は周りとの会話の回数は激減している事を気にしないようになっていた
放課後の部活動は俺にとっては居心地の悪い物になっており、部活中でも最低限のコミュニケーションを取るだけで、あまり話すことは無くなっていった
正樹は俺に対しては何をしても大丈夫と考えているのか、プレー中に俺に対してのラフプレーが目立つようになっていたが、顧問を含めそれを指摘する人はいなく、正樹の態度は大きくなる一方だった
そして、周りとの距離が空いた状態で一年生は終わりを迎えようとしていた
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
次で一年生編は終わります
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