第6話 弊害
中間テストも終わり、次は文化祭に向けてという所で俺たちの班は中々進捗が良くなかった
理由は簡単である。「やる気が出ない」この一言に尽きる
中間テストが終わり、気が緩んでいるのもあるが、如何せん題材が「本四連絡橋について発表資料を作る」である
ほとんどの中学生が楽しいとは思わない内容でもあるので、やる気が出ないのはある程度仕方ないのだが、他の班を見ると尚やる気が削がれる
ある班では、「東京スカイツリーの模型を段ボール、割り箸、爪楊枝だけで作ってみた」であったり、「地震での液状化現象を実際に実験で再現してみた」であったり、やっていることが自分達の班に比べ楽しそうなのである
「やる気でね~」
片山がそうつぶやくと他のメンバーも同じ様で、皆それぞれで頷いていた
自分も普段なら面倒くさいと思うのだが、今回の題材は俺の興味がある範囲に入っているため、そこまで面倒には感じていなかった
「ただでさえ面倒なんだから、早く終わらして他の班に遊びに行かね?」
かといってやる気が出ないのも分かるので、他のメンバーにやる気が出るように伝えてみると
「それもそうだね。大ちゃんの言う通り早く終わらして他の班の所に遊びに・・・いや、手伝いに行こう!」
姫川が本音を隠せずそういうと、他のメンバーも少しずつ作業を開始していった
しばらくすると、作業がひと段落ついたのか、体の固まった部分をほぐすようにそれぞれが伸びを始めた
「皆どれくらい進んだ?」
小谷が皆に進捗を聞いてきたのでそれぞれ答える
「俺は内容は決まったから今から下書きかなぁ」
「私もおんなじ感じ~」
「俺は今から清書かな?」
上から順に、片山、姫川、俺が答えると、俺の答えが意外だったのか皆が目を丸くした
「え?もう清書なん?早くない?」
片山が驚いて聞いてきたので
「いや、今回俺が調べたしまなみ海道は前から少ししってたし、俺の興味がある範囲やったから、意外とすぐに調べられた」
「いや、しまなみ海道に興味があるってどんなやねん」
「教科書に載ってたから気になってただけやで?」
「いや、それもおかしいやろ」
俺が今回の題材に興味があったことが異常かのように扱われた・・・心外である
「まあ、いいや。じゃあとりあえず今日は金曜日やし、残りは土日に家で終わらすか。で、どれだけ進んだかRINEで報告する感じでいい?」
「「いいよー」」
片山が提案すると女子二人も特に問題が無いのか了承の合図をするが
「ごめん、俺スマホ持ってないから、RINE出来へんわ」
そう、俺はまだスマホを持っておらず、RINE等での連絡は出来ないのである
一応ガラケーは持っていたりするが、これも普段は親に管理されており、どこかに出かける場合を除き持たせてもらえない
「え!?大ちゃんスマホ持ってなかったんや」
小谷に少し驚かれると
「そういえば、俺も大輝の連絡先知らんわ」
と片山も今気づいたかのような反応をした
「そうなんよ、だから俺は今日中に終わらして帰っとくわ。それなら、進捗報告せんくても分かるやろ?」
「了解、じゃあ他のメンツでグループ作るかぁ」
俺以外のメンバーはスマホを持っている。というか、俺以外の同級生はスマホを持っており、俺だけが持っていない
普段は気にすることが無いが、やはり、こういう時に少し寂しくなる
この学年に俺の連絡先を持っている人は一人もいない
昔冬香にスマホをねだったことがあるが
「無くても生きていける。スマホが無いなら家に電話かけてもらえ
連絡とる手段なんて他にもあるのに使わんお前が悪い」
と一蹴されてしまった
今の時代に家に電話をするなんて面倒な事をする子がいるはずもなく、俺はずっと同級生と電話をすることなく育ってきた
俺達の世代でスマホを持っていないというのは中々に珍しいもので、ニュースを見るとそれが原因でいじめられるという事件もあるらしい
俺は今の所いじめられてはいないが、もしかすると、RINE上で悪口を言われているかも知れない。そんなことを気にし始めると気が休まらない
全ての人に好かれているとは思ってもいないし、好かれたいとも思わないが、普段笑顔で話している同級生が裏では悪口を言っているかもしれないと考えると俺は人と話すことが少し怖く感じるようになった
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