第1話 春の陽気に触れながら
「なあ大輝!昨日の宿題やった?」
「え?やってるわけないやん。逆になんでやってると思ったん?」
朝登校するとクラスメイトの川本樹がまるで俺の答えを知っていたかのように、話しかけてきた
「いい加減宿題くらいするようにしろよ...
中学生になったのに小学生から変わってないやん」
「いや、毎回もらったときはやろうと思うんやけど、家に帰ったらきれいさっぱり忘れてるんよな」
「連絡帳的なの作ったら?」
「見もしないのに?」
「ダメだこりゃ...」
そういうと、川本は他のグループに話しかけに行った
少し時間が経つと朝学活で担任から全体連絡が入った
「今日から部活見学期間に入るけど、全員よほどの理由が無い限り運動部に入ってもらうからそのつもりで、あと、6時間目に詳しく話すけど、部活見学は班ごとに順番に見学してもらう事になるから、自分が楽しいと思う部活を探してください」
朝学活が終わると、クラス内で不満の声が至る所から聞こえてくる
「いや、楽しいと思う部活って4つしか部活無いのにそこから探せとか鬼畜かよ」
そう、この田無中学校には運動部は陸上部、テニス部、バスケ部、卓球部の4つしかなく、よほどの事情が無い限り、一つの部活を除き入る事が出来ない
「大ちゃんはどの部活に入るか決めてる?」
隣の席の、
「多分バスケかな。黒○のバスケ好きやし、小学校のクラブ活動もバスケやってたし、関は?」
「私は卓球かな?なんか一番練習が楽って聞くし」
「練習楽なのは良さげよなぁ」
「何々?部活の話?」
こんな話をしていると、前の席の
「そう。小西は部活決めたか?」
俺がそう聞くと、小西は少し苦笑いしながら
「俺は小学校の体育の授業中に陸上部の顧問に誘われてたから陸上部に入るかな?」
「あ~確かに孝ちゃん冬の持久走で話しかけられてたね。
陸上部は大変そうだね」
うちの中学と小学校はグラウンドを共有しており、体育の授業は中学の先生達も見ていたりする。特に陸上部の顧問は持久走でいい成績を残している生徒には中学で陸上部に入るように勧誘していたりする
「そうなんよなぁ。しかも、武田先生だから断るの怖いし、このまま陸上に入る事になると思う」
「しゃあないべ、小西足早いし、なんとかなるんじゃね?」
「いや、練習きついって聞いてるから今は恐怖心しかないわ」
「ファイト♡」
俺がふざけて応援すると小西に小突かれた
そんな会話をしていると関が少し気になった風に話始めた
「けど、皆どこに入る事になるんかな?
仲いい子と一緒になれると良いんやけど」
「卓球は大丈夫じゃない?楽って噂が立つくらいならそれなりに人は集まるやろうし」
「やといいけど、運動苦手やからなるべくそういう子が多いとうれしいんやけどね」
そんな会話をしていると1時間目の授業を始めるチャイムが鳴る
「はい席について―。授業始めるよー」
先生が教室に入ってくると、ぞろぞろと自分の席へと皆が戻っていった
それから、午前の退屈な授業を過ごしながらも部活動を決めるという中学生活の中で初めの行事に少し浮ついた雰囲気な教室で半日を過ごした
昼になると「サッカーやるやつグラウンド集合なー!」とクラスの一人が呼びかけると、クラスの男子ほとんどが教室から出ていく、もちろんそのほとんどに俺も入っている
「じゃあグループ分けするか―、じゃあ俺と高山でじゃんけんして、どんどん取っていこうぜ」
さっき呼びかけていた東谷正樹がそう呼びかけると、じゃんけんによるチーム分けが始まった。俺は最後まで呼ばれること無く、残り物として高山良助の班に属することになった
35人はいるメンバーの中で最後まで選ばれない。これがこの学年の中での俺の立ち位置だという事が嫌でも分かる。勿論、朝のように、同級生と話すことに抵抗は無いし、こっちから話しかけることもある。ただ、それだけの関係であり、遊ぶ仲かと言われれば即答できないような関係性なのだ。普段は気にしていないが、こういうときだけは少し悲しくなる
「じゃ、残り物としてよろしくー」
俺はそういうと自陣のゴール前で待機する姿勢を取る。別に俺はキーパーでは無いが、走るのは疲れるという理由から、俺のようにゴール前でボールが来るまで動かないという人は多い
「なあ志摩、今日の授業わかった?」
「なんとなくなら、ただ、宿題が面倒くさそうだなぁとは思ってるけど」
「あー国語のワークな、やらななー」
「いや、大輝がそれを言ってやってきた試しがないやん」
「確かに」
こんな会話を、キーパーをしている志摩恭輔と話しながら昼休みを過ごしていた
ちなみに、ボールが自陣まで飛んでくることは無かったが、両チームの点数が変わる事も無かった
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