おしまい!
夜の海に火――三人一括りで、灯台娘。
どこの誰が命名したのか定かでないし、考案した人物の想定以上に流行らなかっただろうこの呼び名を、「なかなかどうして的確だ」と憂は存外気に入っていた。
名付け親には素晴らしい慧眼をお持ちだとありったけの賛辞を送ってやりたいくらいだ。
当の灯台娘達は銘々異なる理由からこのネーミングを気に入ってはいないけれども。
春休み最終日――朝からピクニックへ出掛けた、その帰り道。
四人は緩やかな足取りで、憂のバイト先までの道のりを辿っていた。
まだまだ余力は充分とばかりに夜々と葉火が前を行き、三耶子と憂が後ろに続く形。
歩みが遅々としているのは誰が言い出したわけでもなく自然とそうなった。
それはきっと、名残惜しさからくる意思を共有しているからだろう。
今日という日はまだ続く。
けれど茜色に染まりゆく空と街並みが、否応なしに意識を明日へ向かわせる。
「明日から二年生だねー私達」
トートバッグを揺らしながら、のんびりとした調子で夜々が言った。
「夜々が留年しないか心配だったけど、進級できるみたいでなによりね。どんな手使ったのよ」
「ノーインチキ! 私を成績悪めキャラに仕立て上げるのはやめてもらおうか!」
夜々の鋭い指ドリルを頬で受け止める葉火。
その仲睦まじさを見守る末っ子三耶子が、我が子を慈しむように微笑んだ。
「ついに私にも学内で後輩と接する日常が訪れるのね。三耶子お姉さま、なんて呼ばれちゃったりするのかしら」
「どうだろう……仮に呼ばれたとして刹那的なものだろうから、あんまり期待しない方がいいんじゃないかな」
「憂くん?」
「冗談ですよ三耶子お姉さま」
あながち冗談とも言い切れないけれど。
憂がからかうように笑むと、三耶子はじっとりとした視線を引っ込めてあどけない表情を見せた。
こういう子供っぽさが三耶子にはよく似合う。
故にお姉さまと呼び慕う後輩が現れたとしても、恐らく長続きはしない。人によっては三耶子を年上の妹枠に収める可能性がある、というかそうなる公算が大きい気がした。
そんな三耶子お姉さまは大人ぶりたいのか背筋を伸ばし、口元を手で隠して空咳をする。
「私、部活を立ち上げようと思っているの。そうすれば新しい縁を結びやすいでしょう?」
「いい考えだね。どんな部を作るの?」
「部を立ち上げるための部を立ち上げるわ」
「すっと頭に入ってこないけど……同好会ってことだ」
「いいえ。新しい部を作るのに必要なノウハウを授ける、というのが活動内容よ。いずれ私の教え子が作った部を目当てに入学を希望する子が出てきて欲しいわ。あわよくば殺到」
突っ込み所に絶えない意思表明をする三耶子だったが、ふと飽きが来たのか「
少し残念な気もする。
今回は冗談とのことだが、いずれ本気で行動に移すことがあれば喜んで協力させてもらおう。
「部活動もいいけれど――ふふ、いけない。いよいよ我慢の限界だから話してしまいたいわ。ねえねえ夜々ちゃん」
浮ついた三耶子の呼びかけに夜々が「んー?」と振り返る。
そして二人は目顔で語り合うと、いたずらっぽい笑顔をお揃いで繰り出し、足を止めて。
「実は私と夜々ちゃんも」
「アルバイトをします」
と、息ぴったりに活き活きと発表して胸を張った。
憂と葉火は「おー」と盛大な拍手を送る。
「三耶子ちゃんと遊んでたらそういう話になってさ」
「思い立ったがホトトギス。鹿倉さんに相談してみたら、人が抜けて困っているパン屋さんを紹介してもらったの」
曰くジブリ映画に登場しそうな闊達な老婦が営む店だそうだ。
『求む看板娘。あんたと違って愛想の良い子だよ』なる要求に頭を悩ませていた鹿倉から感謝もされて二度美味しい、とのこと。
「昨日夜々ちゃんと面接を受けてきたけれど、その場で採用を告げられたわ」
「優しい人だったよね。まさか三耶子ちゃんと一緒に働けるなんてなー、楽しみ」
「一週間後に研修が始まるから、お腹を空かせて買物に来て頂戴」
三耶子と夜々が「いらっしゃいまふぃん」と口上を述べて楽しげな笑い声をあげる。
看板娘を冠するに相応しい華やかさ。
そんな新進気鋭の二人へ向けて、常連客確定の憂と葉火が揃って得意げな顔をする。
「可愛いあんたらのために、あたしと憂が接客態度をチェックして逐一修正してあげる」
「ふっ、任せてくれたまえ。労働に関しては僕達に一日の長がある。ここは轟々と先輩風を吹かせてもらおう」
「ここで問題よ。パンはパンでもあたしの好きなパンはなーんだ」
「タイムアップ! 答えはアンパン。はひちゃんって小さめのアンパンいくつ食べられるんだっけ?」
「年の数だけ食べられるわ。この惑星の」
葉火はともかく何故だか憂まで偉ぶると、看板娘の卵達は「おおー」と小刻みな拍手を送った。
それを以てこのおふざけに区切りをつけ、四人は再び歩き出す。
「夏休みはみんなで遠くへ遊びに行きたいよね。それもアルバイト始める理由の一つ」
と言った夜々の頭に手を置いて葉火が答える。
「沖縄――を推したいとこだけど、それは卒業旅行まで温存ね。レンタカー借りて隅から隅まで走り回りたいし」
「そいつは名案だ。運転は僕に任せてくれ、免許を取得する用意がある」
「嫌よ、あたしがドライバーに決まってるでしょ。ハンドル握り込んで絶対離さないわ」
「僕より先に免許を取れたなら認めてやろう」
「望むところじゃない。あたしにビビって抜け駆けするんじゃないわよ」
同じ日から教習所に通う約束を交わして一段落。
生まれた隙間を埋めるように、
「また夏が近付いたらみんなで計画しようね。その前に六月も――」
と、言いかけた夜々の頬を葉火が左手で挟み込む。
「もがもが」
「あんたの口はあたしが統べるわ」
電光石火の早業は夜々の失言を見事食い止めたが、あまりに早すぎるためかえって違和感を生み出してしまったようで。
それはそれは嬉しそうな三耶子が、憂の耳元へ顔を寄せるように背伸びをする。
「憂くん憂くん。みんなが私の誕生日に向けてもう準備を始めてくれているようだわ。ちょー嬉しい」
「さてなんのことやら。それより三耶子さん、ひそひそ話は」
「手で仕切るのがセオリーよね」
自身の口に手を添えて上品に笑う三耶子。
あえなく企みを暴かれてしまったが、問題は無い。
他人の機微に聡い彼女のことだ、こちらが隠し通そうとしてもどこかで勘付くだろうと満場一致で結論しているため、むしろ今の段階でバレてしまったのは好機である。
二ヶ月という準備期間の分だけハードルを上げておいてもらえば、飛び越えた際に三耶子が感じる喜びは果てしないものとなるはずだ。
腕が鳴る――葉火風に言えば、望むところ。
とはいえ深掘りされると困るので憂が話を逸らそうとすると、葉火が夜々を掴んだままで言った。
「そういえば体育祭って五月だったわよね。あんたら、去年のあたしの活躍知らないでしょ」
「何言ってんだよ知ってるに決まってるだろ。借り物競争が怪しい取引に利用されてたから、裏に潜む組織を突き止めて滅ぼしたんだよな」
「スタートからゴールまで一人で一位を守り抜いたリレーでの勇姿、覚えていないはずないじゃない」
憂と三耶子による設計図もなく喋りながら組み立てられた思い出を聞き、葉火は呆れた風で口を綻ばせた。同時に手の力も緩んだのだろう、拘束を抜け出した夜々が会話に飛び込んでくる。
「今年の私は葉火ちゃんにも勝つよ。覚悟しといてね」
「あはっ。最高じゃない当然受けて立つわ。あたしと戦うまで負けるんじゃないわよ」
マッチアップが実現する前にどちらか負けそうな言い回しだな――と思ったが、水を差すような発言は控えておく。
体育祭が話題に上ったのを切っ掛けに、四人はこれから訪れる学校行事について語り合い始めた。
例えば。
「今年は修学旅行もあるよね。噂によるとスキーできるらしいよ――あれ、三耶子ちゃんどうして笑ってるの?」
「ごめんなさい。体育座りで滑走する夜々ちゃんを想像しちゃって」
「もーなにそれー。私、お手本みたいに滑る自信あるから楽しみにしててよ」
例えば。
「忘れちゃいけない、氷佳の授業参観もある」
「そ、それは私も行かなきゃだね。制服がいいのかな?」
「おバカね、私服でいいのよ。オフィスガジュマルなら文句は言われないわ」
「観葉植物に擬態するってことかしら……?」
例えば。
「私、イベントの中で文化祭が一番好き」
「夜々ちゃんの嬉しそうな顔を思い出すと、今でも涙ぐんじゃうわ」
「今年は違う種類の嬉し涙を流させてあげるから、たらふく水を飲んどきなさい」
「なんとなく想像できる。最初に泣くのは僕かはひちゃんだ」
それから、再び学校を出て。
春といえばいちご狩りは欠かせない。
夏になったら海もプールも水場全てを制覇しよう。
秋は月と食欲の満ち欠けを謳歌して。
冬にはまた葉火の家でクリスマス会をしたり――
大小様々な思い付きを、時に丁寧に時に大雑把に並べていく。
そして不意に、葉火がさらに時を進め、
「こんな時間が永遠に続けばいいって思うけど――卒業式も楽しみなのよね、実は」
明るい声音でそう言った。
「泣くね。はひちゃんは泣く。絶対、号泣」
「泣くわね。すぐ泣くわ。絶対泣くわ。ほら泣くわ」
なんて三耶子と共についつい茶々を入れてしまったが、葉火の言わんとすることは理解できる。
卒業式。
最終回――と呼ぶにはその先が遥かに長いけれど。
学生にとってはそう呼ぶに足る、万感籠った大きな区切り。
物語は完結して完成する。
大好きな物語だからこそ未完成は許せない。
少年漫画という物語をこよなく愛する葉火が言いたいのは、おおよそそんなところだろう。
故に葉火は、いつか訪れるその日を心待ちにする。
「――って、あたしが言い出しといてなんだけど、この話はやめね。湿っぽい空気も締めっぽい雰囲気もお呼びじゃないわ。憂、将来の目標なりを述べて速やかにオチを付けなさい」
「無茶振りをしてくれる」
おほほ、と意地の悪い高笑いで場の空気をあたためる葉火。
もしかするとシンキングタイムを設けてくれたのかもしれないが、憂はまるで事前に示し合わせていたかのように、即答した。
「死ぬのが惜しいと思えるような。死ぬのが惜しいと思われるような大人になるよ」
「へえ、あたしに憧れてやまない発言だと受け取るわ」
「まあ、そんな感じ」
憂が笑って。
葉火も笑い、満足気に頷いて言う。
「色々話したけど、未来のことはまたその付近で考えるんだから、いま意識を奪われ過ぎるのは勿体ないわよね」
「そーだね。私もさ、前は一年後とか十年後とか、先のことばっかり考えてたけど――いまは違うよ」
風向きを変えようとする葉火に夜々が続き。
後ろ歩きで三人を見渡しながら、
「みんなといると、今日と明日で手一杯って感じかなー。楽しくてしょーがなし」
そう言って、屈託のない晴れ晴れとした笑顔を浮かべた。
可愛いことを言ってくれる抱きしめてやろうか――と憂は思ったし、三耶子と葉火からも同様の声が聞こえてくるようだった。
三耶子が夜々の後方を指して言う。
「夜々ちゃん、後ろ、危ないわ」
「ひゃー! なんとっ!」
夜々は慌てて正面へ向き直ったが、そこに脅威は迫っていない。
つまりはちょっとした冗句、可愛いから意地悪をしたくなった――というわけではないようで。
静かに駆け出した三耶子が夜々を背後から抱きしめた。
「ほら、言ったでしょう?」
「騙されちゃったー」
和やかに声を弾ませる二人。
あたしも混ぜなさいよ、と葉火も加わり三人で楽しそうにじゃれ合い始める。
憂は周囲に危険の種が無いかを確認しつつ、スマホを取り出して写真を撮った。
連写である。
その後しばらく静観していると、誰がパンで誰が具材かという珍妙な話題に発展し、間に挟まれた夜々が揉みくちゃにされたのち抜け出して、憂の隣に並んだ。
「セーフ! ぺしゃんこになるとこだった」
と、一息つく夜々へ葉火がサディスティックな表情を向ける。
「何言ってんの。あんた既にぺしゃんこでしょうに」
「非常に言い辛いけれど、夜々ちゃんは、そうね」
「どこがかな!? 二人とあんまり変わらないと思うけど!?」
両手を掲げて可愛らしく威嚇する夜々。
軽口を叩いた二人はからかうように笑んで、逃げるように距離を取る。
「三耶子は人のこと言えないわよ」
「葉火ちゃんだってそうじゃない」
矛先を変えて仲良く言い争う二人を眺め、夜々は「もー」と腰に手を当てる。
ぷよぷよと評されたりぺしゃんことと評されたり、夜々もなかなか大変だ。
「まったく失礼しちゃうよ。私は決してぺしゃんこじゃない」
「何を指してるのか明言されてないから答え辛いけど、それでもあえて答えるとしよう。夜々さんは立体的だよ」
「う、嬉しいけどなんかやだ」
夜々はトートバッグを巻き込みつつ自身を抱き締めるようにした。
もしかするとジト目が飛んでくるやもしれぬ。
憂はさりげなく視線を前方へ移し、爽やかな表情を作った。
「みんなで一緒のクラスになれるといいね。案外、そんな都合の良いことがあり得るかも」
「ねー。その辺りは任せてってマチルダちゃんが言ってたから、ちょっと期待してる」
「何をするつもりなんだ奴は……」
夜々のファンガール故に口走ってしまったのだろうが、彼女ならもしかして、と思わされる。
自称全知全能。
機械仕掛けの神。
情報という強力な武器を携え暗躍するマチルダに改めて戦々恐々とする憂だった。
まあ、どうなるかは分からないけれど。
憂が口を開こうとすると、夜々が先に言葉を発した。
「ドキドキするけど、明日が楽しみだよ」
「同感。新年度が楽しみなのは初めてだ」
期待に胸を膨らませることも憂鬱に背を丸めることもなく、流れのまにまに新生活へ身を投じた一年前とは違う。
憂は明日という新たな始まりが楽しみで仕方なかった。
今日という日のおしまいが惜しくて仕方なかった。
けれど、それでいい。
それがいい。
一日を心から楽しむ、だからこそどうしても生じる名残惜しさを、前向きな感情に変えて明日へ託す。
そうして日々を繰り返していく。
いつまでもどこまでも。
ああ、本当に――
本当に。
楽しみだ、毎日が。
「憂くん、嬉しそう」
「夜々さんと同じだね」
互いの顔を見て笑い合い、前を向いて並んで歩く。
やがて目的地が見えてきて、三耶子と葉火が我先にと駆け出し、出入口の前で足を止めるや早く来なさいと手招きをする。
憂と夜々も競争するように走り出し、引き分けて、四人で入店。
店内は相変わらずの客入りで、葉火曰く伽藍洞。
窓際のテーブル席へ位置取り、髭親父の許可を得て荷物を隣の席へ置かせてもらい、それぞれ飲み物を注文する。
そして全員分の飲み物が配膳されたところで。
窓際の葉火がコーラを一口啜り、隣の三耶子、その正面の憂から夜々へと視線を滑らせ、最後に外を見遣ってしみじみと言った。
「思えばここから始まったのよね」
半年前。
たまたま迷い込んで来た彼女達と出会ったあの日が脳裏に蘇る。
今になって思えば偶然では片付けられない、運命的な引力が働いていたのだろう――なんてことを恥ずかしげもなく考えた。
葉火の隣で三耶子が微笑する。
「ふふふ。あの時の憂くん、帰って欲しそうにしていたわよね。全然隠しきれていなかったわ」
痛いところを突かれた憂は、苦笑い。
確かに今は亡き当時の姉倉憂は「帰ってくれ。そして二度と来ないでくれ」などと生意気をほざいていた。
うむ、あの頃は若かったのだよ――
「あっ!」
不意に葉火が何かを思い出したような声を店内に響かせた。
「マスター親分から聞いたわよ。あんた、初めて会った時サービスだなんだとか言って自腹切ったらしいじゃない。あたしらの分」
「……まあ、ささやかながら。白状すると、当時の僕は今と違って、とにかく帰ってもらうのに必死だったんだ」
頬を掻く憂を見て葉火が「おバカねえ」と豪快に笑う。
返す言葉は一つもない。
自分でも忘れていたくらいだが、まさか今になって掘り返されるとは。
「そうだったのね。恩を返さずにはいられないわ」
「今日は私達がご馳走するね」
別にいいよ、と遠慮しようとして。
言葉を呑み込み、言い直した。
「お言葉に甘えて、いただきます」
「うむ、よろしい。召し上がれ」
と、満足気に胸を張る夜々。
憂はふとした思い付きからグラスを持ち、ストローの先を夜々の口へ近付ける。
夜々がぱくりと咥えてコーヒーを吸うと、
「あたしのもいいわよ」
「私のも」
対面の二人も身を乗り出して同じようにした。
律儀に全てを味わったのち、夜々は「そうじゃなくって!」と頬を膨らませる。
が、すぐにふんわりとした笑顔になった。
それからも他愛のない雑談に花を咲かせ――そして。
「そろそろ僕は働く時間だ」
「行ってらっしゃいな。にしても物好きよね、あんた。マスター親分は休みでいいって言ったのに」
「なんとなく今日はここで働きたかったんだよ。ありがとう、僕に合わせてくれて」
言って憂は席を立ち、三人を順に見る。
道しるべとなってくれた彼女達を。
自分もそうなると思わせてくれた彼女達を。
「もう一つわがままを言うけど――僕のバイトが終わるまで居てくれると嬉しい」
自然と口を付いて出た本心に、三人は揃って頷いてくれる。
「追い出せるものなら追い出してみなさい」
「憂くんから色々と学ばせてもらうわ」
「うん、待ってる。行ってらっしゃい、あなた……なんちゃって」
前触れもなく惚気た末に俯いて縮こまる夜々。
三耶子と葉火が嬉々として羞恥心の刺激に掛かる。
「何かあったら呼んでよ。すぐに行く」
明るく愉快にじゃれ合う三人へそう告げて。
おかしそうに笑いながら憂は席を離れた。
――後で僕も混ぜてもらおう。
こうして今日という日は緩やかに過ぎていく。
今日が終われば明日が来る。
時に劇的で時に平凡な、掛けがえのない一日が始まる。
勝ったり負けたり。
変わったり変わらなかったり。
白かったり黒かったり。
予想もつかない一日が始まっては終わり、終わっては始まって。
いつまでもどこまでも、人生は続く。
同じような日は一度としてない。
行き止まりも頂上もない。
いつだって今が一番幸せだと胸を張れる、そんな毎日が、続いていく。
大切な友人と共に。
姉倉憂は改めて思う。
誰かに自慢するように、思う。
名瀬夜々。
古海三耶子。
剣ヶ峰葉火。
夜の海に火、灯台娘。
彼女達の代わりはどこにも居ない。
僕の代わりもどこにも居ない。
だからこれからも、四人で。
同じ明日を一緒に見る。
〈終〉
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