第3話 悪の聖女 エレイナ

片思いの勇者たち

聖女(あなた)は、男性を物としか見ておらず、表向きは聖女のため、清廉潔白、慈悲と博愛に満ちた、世間の悪意にすら鈍感な男女関係に疎い美しい女性ふりをしており、実は肩書きは聖女だが醜悪な性格の女性。

金髪ロングの青灼眼である。胸はCカップ。

あなたは、これから、幾多の男性を色仕掛けをして、利用し最高司祭に成り上がりを目論む。そして、用済みとなった男性たちを次々と口封じで殺す。

彼女の名は、エレイナ。

エレイナは、一人娘で貧困家庭で育った。彼女は上級国民の生活を憧れ、この悪意に満ちた世間で成り上がろうと目論む。

エレイナの両親は彼女が幼い頃に、流行病で亡くなったため、教会の孤児院で育った。

そして、エレイナは、魔王を討伐する勇者のメンバーの回復ポジションを務めた。

魔王討伐前日のこと。二人の男女が屋外にいた。

「ロムズさん、お話とはなんです?」

エレイナは言う。

「君に告白したいことがあるんだ」

「告白…ですか?」

エレイナは聖女として疎い感じだ。

「君のことが好きだ」

「!?」

青年の告白。エレイナは驚いた。

「魔王を倒したら、キミと暮らしたい。ダメかな…?」

青年の告白にエレイナは恥ずかしながら返事をした。

「…ロムズさんから…声をかけてくれるだなんて…。実は…わたしもなんです」

「え?!」

ロムズは驚いた。こんな美少女と付き合えるなんて無理だと思っていたが、声はかけてみるべきものなんだとロムズは実感した。

(え?!まさか?!こんな美女と付き合えるなんて…!無理だと思っていたけど声はかけるものなんだな…。よかった…)

「わたし…いつロムズさんに自分の気持ちを伝えようかわからなくて…その…うれしいです」

「そうか……じゃあ、俺たちは恋人同士だな」

「そうですね……ロムズさん、約束ですよ?」

「ああ」

ロムズにとって人生の中で一番の幸せだったかもしれない。しかし、彼女の本性を知らなかったのが、彼の人生で最も最悪なものであると…。

勇者オレンたちは魔王の元にたどり着くが…。

勇者オレンたちは魔王に苦戦を強いられていた。

勇者オレンは焦っていた。

「このままじゃ、全滅だ…何とかしなければ…!」

すると、仲間のオズウェーンが勇者に話す。

「オレン、やむおえない。あれをやるぞ」

「…ああ、わかった」

オズウェーンはロムズに呪文を唱える。

「え?」

オズウェーンの呪文によりロムズはバラ野茨のようなものに拘束される。

「なにをするんだ?!オズウェーン!」

ロムズはオズウェーンに聞く。オズウェーンの口からは冷酷な言葉が出た。

「すまないなロムズ。お前は生贄になってもらう。オレンの強化のためにな」

「え?そんな!」

「みんなで考えたんだ。この時になったら、誰を犠牲にするか…。それがお前だよロムズ」

ロムズは違和感を感じ取る。

「なんだ…力が抜けていくような…体温を奪われるような…」

ロムズはオズウェーンの魔法により命を吸い取られる。

勇者オレンはロムズとの別れ際に言った。

「すまんなロムズ。オレが強化すれば、魔王は倒せる。おまえの分までエレイナと幸せに生きてやるよ。」

勇者オレンはエレイナを引き寄せる。ロムズはエレイナに救いの視線を向けるが…。

エレイナは勇者と抱き合いながら、無表情でロムズを見下していた。

「……(ロムズを物を見るかのような目)」

勇者はロムズに言う。

「さあ、ロムズ。魔王を倒すための魔力をくれ」

「いやだ…しにたくない…!」

ロムズを拘束しているイバラがロムズの体力と魔力をすべて吸い上げる!

「うああああああああああああああ!!」

「ご苦労だったな。ロムズ」

オズウェーンはロムズが倒れると、ロムズを冷たい眼差しで言う。

「これで、お前は用済みだ」

「そ……んな……」

ロムズは絶望した表情になり、息絶えた。そして、魔王は勇者によって倒された。

魔王討伐後…。

ロムズは奇跡的に生きていた。しかし、体が動かない。森の中で一人仰向けに倒れていた。

「オレは…捨て駒だったんだな…」

ロムズが独り言を言っていると、そこに、オオカミが集まってきた。

オオカミは空腹に苛まれていた。

「ウソだろ…」

オオカミの群れがロムズにとびかかってきた!

「うわ!だれか!」

人が来るはずもなくロムズは悲鳴を上げる。

(クソ…こんな最後なんて…ここに人が来るわけがない…クソ…いやだ…オレは生きたいんだ!!)

するとロムズのカラダになにやら邪悪な力が沸き上がるのを感じた!

その力はオオカミの群れの命を奪っていく。

(な…んだ?これは……?)

ロムズは力の制御ができず、どんどんオオカミを殺してしまう。

「なんなんだ……このチカラ……?」

ロムズはこの沸き上がる謎の暗黒の力を実感する。

「あいつらに…復習してやるぅ…!」

ロムズはこの場を去っていく。

魔王討伐後の勇者オレンたち。

オレンたちは各場所でそれぞれの生活を送っていた。

大男のヴァエルは、土地を手に入れてやりたい放題していた。

「おい!文句言わずに働け!奴隷ども!」

ヴァエルは地主になり、そのにいる人たちをこき使っていた。

そこにある男がやってくる。

「ようヴァエル」

「ああん?!誰だ!」

「ロムズだよ」

「なんだ?!テメエは!」

「ロムズだよ。忘れたのか?あの時のこと?」

「知らねえな!帰れ!殺すぞ!」

「ああ、そうか……。なら思い出させてあげるよ」

「ああ?」

ロムズはヴァエルに手をかざし、呪文を唱えた。

「!?」

すると、ロムズの手から邪悪なエネルギーが放出され、ヴァエルの体は飲み込まれていく。

「どわぁああああああああああああ?!」

ヴァエルの鎧はみるみるベルトが千切れて外れて飛んでいく。鎧の下に着ていた衣服もびりびりに裂けられヴァエルの鍛え抜かれた筋肉の肉体美が露出する。

「あのときのお返しだぜ」

「うわぁああああああああああああああああああ……!」

「じゃあな。もう会うことはない…」

ロムズのエネルギーで、ヴァエルの城はかき消され、ヴァエルは白目をむき出し裸で空のかなたに飛んで行った…。

「さて…次は……オレンだ…!」

ロムズは次の復習相手決める。

そのころエレイナは…。

最高司祭のボロスとベッドでカラダを交じらせていた。

「ボロス様……今日はありがとうございます……」

「ふん、魔王の討伐という栄光を達成できたのだ。おまえの願いを聞いてやらんでもない」

エレイナの陰部にはボロスの白い液体が垂れている。

「ありがとうございます、最高司祭さま」(気持ち悪い…しかし、これでわたしは…)

ボトスはワイングラスを片手に持ち、酒を飲んでいた。そこに、押し入ってきた者がいた。勇者オレンだ。

「エレイナ!どういうことだ!おまえ…その男と寝たのか!?」

ボロスはオレンに注意する。

「なんだお前は!無礼であろう!」

エレイナは眉間にしわを寄せる。

(チッ)

「お助けください最高司祭様」

エレイナは噓を言う。

「あの者は以前から私に迫り、私が断ると逆上して…」

「なるほど、一方的な痴情のもつれということか」

「ふざけるな!エレイナ!」

オレンはエレイナに問い詰めようとするが。

「すぐに出ていけ、見ての通りエレイナは私と関係を持っている。」

「エレイナ、お前がオレに言ったあの時の言葉は嘘だったのか?!」

「衛兵!奴をつまみ出せ!」

最高司祭ボトスの指示で勇者オレンはつまみ出される。

エレイナは勇者オレンがつまみ出されるのを見届ける。

(わたしは…成り上がって見せる…この世界で…必ず…。男はしょせん道具…)

翌日エレイナは最高司祭ボトスのコネで最高司祭になり式典が始まっていた。

人々に歓喜の声で迎えられながら。

「大聖女さまー!」

「ありがたや~!」


「神に祝福された方だ!」

エレイナは人々の歓声に手を振り笑顔を見せる。

その様子を物陰で見ていた者がいた。ロムズだ。

「エレイナ…すでに最高司祭になったとは…」

ロムズは復讐の機会をうかがっていた。そんな時、一人の男性が道を阻み式典を妨害する。

その男性は勇者オレンだ。

「エレイナー!!よくも騙したなー!!」

オレンは目を真っ赤にして怒りをあらわにしていた。

「落ち着いてください。なにがあったので?」

エレイナは白を切る。

「ふざけるなー!オレを弄んだ奴が!」

勇者オレンがエレイナに近づこうとする。

「きゃあ!」

エレイナは悲鳴を上げる。すると、エレイナを護衛している兵士がオレンの道を阻む。

「な!?」

多勢に無勢、オレンに勝ち目はない。

しかし、オレンは引く気はない。

「みんな聞けぇ!!こいつはなぁ!醜悪なクソやろうだ!」

オレンは民衆に向かって叫ぶ。しかし。

「そんなわけないだろ!!」

「そうよ!」

「悪いのはお前だー!!」

民衆のなかに誰一人としてオレンの味方になるものはいなかった。

「な…!」

オレンは驚く。エレイナはみんなの怒りを鎮めさせる。

「みなさん!どうか落ちついて!オレンはあやつられているのです!」

エレイナはオレンに指をさす。

「ちがう!あいつが……あいつがすべて悪いんだ!」

オレンは必死に否定するが誰も聞こうとしない。

「わたしがオレンをお救いします」

そういうとエレイナはオレンに魔術をかけた。

「うっ?!」

するとオレンは剣を放して立ち尽くす。

「オ、オレは…なにを?」

「あなたは操られていたのですよ」

「そ、そんな!申し訳ございません!エレイナ様!どうか!私の命で償います!」

勇者オレンは再び剣を握り、自分の首を斬ったのだ!

「え……?」

オレンの首から大量の血が流れる。

「オレン……なぜ!?」

エレイナは膝から崩れ落ちる。

「エレイナ…」

オレンは死ぬ寸前に洗脳が解けてエレイナに憎しみを抱いて息を引き取る。エレイナは、民衆に見えないように邪悪な笑みを浮かべていた。

ロムズはそれを眺めていた。

「おそろしい…あれは一種の洗脳魔術だ。相手を操り…自害させる…。これでエレイナは聖女としてのアピールもでき口封じもできた。奴は…英雄だ…クソ…」

エレイナは権力と名声を手にいれたのだ。

しかし、ロムズは自分から込み上がる謎の力に勝利の自信があった。


ロムズは無謀にもオレンの後にエレイナの式典の妨害を始める。

「なんですか?!」

「また妨害者です!」

「今度はどんな愚か者が!?」

ロムズはエレイナの前に立ちはだかる。

「よう、エレイナ。久しぶりだな」

「知り合いですか?」

「いいえ、知りませんね」

「まったく、いい加減な奴もこの世にいますな。どれ、エレイナ様、ここはわたくしが、この者を調教してご覧に見せましょう」

「だまれ」

男はロムズの魔術にかき消される。

「護衛隊!」

ロムズの前に護衛隊が立ちはだかるが、ロムズの圧倒的な力に負ける。

「待ってください!この者たちに罪はありません!どうか武器をおろしてください!」

ロムズはイラつきを感じた。

(ここでも聖人アピールか。まあいい、オレの目的はエレイナだけだしな。アイツの思うように事が運ぶのは嫌だしな。)

「いいだろう、やめてやる。ただし、お前とは二人っきりで交渉したい」

「わたしと……?」

「ああ」

「なにをぬかす!このお方は!」

「いいのです。これでまた一人でも多くの人の命が救われれば」

「おおおおおおおお!!!エレイナさまーーーーー!!」

民衆の声は高まる。

「ただし、町から離れた使われていない修道院でな。誰も連れて来るな。もし誰か連れてきたら、エレイナの命に保証はない」

「エレイナさまー!どうかご無事でー!」

しばらく、エレイナはロムズに連れて行かれて、森奥の修道院にやってきた。

「これでお前と二人っきりだな」

「それで?話とは?望みは復讐ですか?」

「よくわかっているな」

「そうですか。でも、残念ですね。復讐はできませんよ。なぜなら、あなたの復讐は失敗するから」

「どういうことだ?」

「それは……」

エレイナは邪悪な笑みを浮かべた。エレイナは洗脳の魔術をロムズにかける。しかし。

「オレには効かない」

「な!?」

エレイナは苦い表情をする。

「くっ!」

「エレイナ、お前が今までやってきたことは全部知っているぞ。お前がしてきたことも。権力を手に入れるために、色仕掛けや、暗殺など。」

ロムズは続けて言う。

「オレにかけたあの言葉は嘘だったんだな」

「ちがいます!あれは!あれは!オレンの指示で…!本当なんです!信じてください!わたしは、あの時!本当にあなたのことを!」

「言い訳はいい」

ロムズはエレイナに剣を向ける。

「ひっ!」

「お前のせいで……オレンは死んだ。次はオレを口封じで殺すか?」

「な、なにを言って」

するとエレイナは右手を動かして魔術を操ろうとした。それに気づいたロムズはエレイナの右腕を切断する。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

エレイナは悲鳴を上げる。

「無駄だ。もうオレに洗脳の魔術は通じない。」

「うううううう…!」

「さて、お前は何を知っている?」

「何も知りません!本当なんです!」

すると次は左腕を切断される。

「ああああああああ!!」

エレイナはあまりの痛みに耐えきれず泣き出す。

「うぅ……」

「お前が言った言葉はすべてウソだとわかったからな。正直に答えないと、次は両足を切る」

「やめてください……」

「なら言え」

「わかりました…」

エレイナは真実を言う。

「あの時、あなたをだましたのは…オレン強化をかけるために必要なことでした。オズウェーンの強化魔法には、誰かの絶望と憎しみの心を利用しないといけません。オズウェーンの指示で、あなたをのぞいたオレンとヴァエル、オズウェーンの三人で決めました…」

「なぜ、オレを選んだ?」

「それは……あなたがメンバーで失っても戦力として問題なかったからです……」

「それだけか?」

「はい……」

ロムズはそれを聞いて怒りに震える。

「ふざけるな!」

「ひぃ!」

エレイナは命乞いのように言い訳をする。

「あなたには確かにひどいことをしました!あの時はどうかしていたんです!私が本当に愛しているのはあなただけです!今も後悔しています!私は心の底では、ずっとあなたを!」

するとエレイナの両足が切断される!

「ぎゃああああああああああ!」

「オレンもお前もヴァエルもオズウェーンもクズだな」

ロムズは呆れるように言った。

エレイナはあきらめず命乞いをする。

「また昔みたいに恋人に戻りましょう?あなたが望むだけ、いつでもこのカラダを抱かせてあげます!お金だっていくらでもあなたに与えられます!あなたはまだ私に未練があるのでしょ!!」

「…フッ、本当か…ではお前はそれを証明できるのか?」

ロムズは尋ねた。するとエレイナは答える。

「本当です!あなたと愛し合いたい!そして幸せになりたい!」

それを聞いたロムズは鼻で笑う。

「くだらないな。そんなことあるわけないだろう」

「お願いします!なんでもしますから!この顔もカラダも!」

「なんでもか…いだろう。かつては仲間だったんだ。ただし条件がある」

ロムズは条件を言う。

「オレの配下になれ」

「えっ…?」

「オレは対象を従属者にできる。お前は行動や発言を一部制限されるだけだ」

「私が、それに…?」

「さあ、選べ。オレの奴隷になるか、ここで殺されるか」

エレイナは選んだ。

「わ、わかりました。ロムズ様にお仕えします」

(なんだ、この程度か、命が助かるなら安いもの。頭くらいいくらでもさげてあげる。私を犯すつもりならいくらでもどうぞ。)

エレイナは思った。

「いいだろう。今からお前はオレのものだ」

ロムズは魔法によりエレイナを眷属にする。

「これでお前はオレの所有物だ。。以後、忠誠を誓え」

「はい、ロムズ。いえ、ロムズさま。何なりとお申し付けください」

「手足がなくて不便だろう。自由に動けるようにしてやる」

「…!あ、ありがとうございます!」

「お前に与える力は…異形化だ!!」

「え?!」

ロムズが呪文を唱えると、エレイナの体がどんどん変化していく。

「あがっ!ぐがががっ!うごごごごごっ!」

エレイナは苦しみながら体を変形させていく。

「いや……なにこれ……」

「ふむ、こんなもんか」

「ひぃぎゃああああああああああ!!」

エレイナは体中が触手に覆われている化け物に変化した。エレイナは苦痛の表情を浮かべる。

「いだい……いだぃぃ……!!」

「お前に魔王軍の残党狩りを命じる。意識はそのまま、再生能力だけは異常に上げたから苦痛を味わいながら死ぬまで戦い続けろ」

「そ、そんな!殺してぇ!ころじでー!」

「殺すわけないだろ?しっかり屈辱を味わい続けろ。行け」

「ぐおおおおおおおお!!」

エレイナは涙を流す。

(わたしの美しい顔が…カラダが…わたしは聖女エレイナよ…!崇められ、人々がわたしの前に膝まづく…!なのに……今は、わたしが人々に恐れられる怪物になってしまった!!ああああああ!!!)

エレイナは泣き叫びながら戦場に向かう。

「ぎゃああああああ!!」



民衆たちはエレイナの姿を見ず、心配のあまり叫ぶ者もいた。

エレイナは人間以外の魔物を次々と殺しまわり、カラダは傷つき、すぐ再生を繰り返し、血まみれになっていた。

ロムズは邪悪な力を手に入れた代償に寿命が短く、すぐに他界した。

エレイナは魔獣の姿でロムズの命令を永遠に従っていた。体が勝手に動くように。そんなエレイナに一人の魔術師が現れた。

「ふむ、おもしろい魔物だ。すこし、火やぶりにでもするか」

魔術師は炎の魔術でエレイナを燃やした。

「あっぢいぃぃぃ!!!!」

エレイナは絶叫する。

「ははははは!面白い!まだ生きているか!次は雷にしようか!」

「あばぁぁぁぁ!」

エレイナは苦しんだ。

「次は氷漬けにしてみよう!」

「ぎゃああああ!」

「次は毒を流し込んでみる!」

「あぎゃあああ!」

「はは!楽しいなこれは!」

エレイナは痛みを感じなくなった。しかし、心が壊れかけていた。

「さて、フィナーレといこうか」

魔術師は特大の炎をエレイナに放つ。

「がががががが!!!」

エレイナは燃え尽き、灰となった。

「うむ、よい実験になったな」

魔術師はその場を去る。

荒廃した修道院に残る灰。壊れた屋根からのぞく月の明かりがその灰を照らす。

灰の上から霊体のエレイナが姿を現す。

エレイナは死後もロムズの呪いにより、魂はゴーストとして現世に残っていた。

「……」

エレイナはうつむいたままその場に止まっていた。

数日後、荒廃した修道院に幽霊が出るとい噂がたつ。

しかし、子供たちは魔物の出没する場所に行けないので、一時は家からこっそり出て肝試しで遊んでいた子供たちがいたが…すぐにはやりは終わった。

「ちぇ、なにもいないじゃねえか」

「つまんねーの」

「帰ろうぜ」

「ああ……」



それから数日後、そのあたりの民家で小さな仕事だが、行方をくらました友人の捜索の依頼があった。小さな家で店として公表していないため人の利用は少ない。

そのギルドではない家番を務めていたレイナはここへ来たひとりの女性と対面した。

彼女の名はレイナ(レイチェル)。素性は誰にも話してないので彼女の本性は誰も知らない。彼女は自分をレイナと名乗り、除霊師のエルフの男性エランドゥルに家に泊めてもらっている。

レイナは特異体質なのか一部だが、人の魂が見えるという。おかげで狙われカラダを乗っ取られては悪いことをしてきたという。そんな彼女を保護したのがエランドゥルだ。

いろんな悪女にカラダを狙われ、乗っ取られて悪事を繰り返し、なかなか表に顔を出せないくらいのことをした。レイナの意思ではないかもしれないが、代償は大きい。

レイナは外の世界におびえてエランドゥルの元で家番をしている。

しかし、一人の女性が家番をしているレイナに話しかけるのだ。

その依頼は人里離れた荒廃した修道院がある森。もし、そこに足を運んだ子供がいて、翌日、帰ってこないため捜索依頼がよく来るが、地元の衛兵たちはまとも相手はせず。

レイナはその女性を眺める。顔色が悪そうだ。

「どうかなさいましたか…?」

「実は……わたしの友人がが行方不明なんです……捜索をお願いしたいのですが…」

「……エランドゥルさんは出かけています。また後日来ていただければいいと思いますが……」

女性は少し残念そうな表情を浮かべる。

「そうですか……わかりました……お手数ですがよろしくお願いします」

「はい……気をつけてください」

レイナは見送る。

翌日、その女性も行方をくらます。エランドゥルがよくレイナに言い聞かせていた。

「いいか、絶対に近づくな。奴らは危険な存在だ。絶対にかわいそうだとか、そういった同情で近づくな。いいな?」

エランドゥルは悪霊がいかに危険かを説明していた。

その夜、廃墟となった修道院。夜になると魔物の目撃情報もあり、子供は近づかない場所だ。しかし、レイナは一人、修道院へ向かう。

すると、そこには……

「ひっく、ううっ……ママぁ……パパぁ……どこぉ……うわあああん!!」

一人の少女がいる。泣き叫んでいた。

「だいじょうぶ……?」

「え?!」

「どうしたの?こんなところで一人でいたら危ないよ」

「ひぐっ、ぐすん」

「あなた、名前はなんていうの?わたしの名前はレイナっていうの」

「ぐすっ、わたしは……ナナだよ……」

「ナナは一人で来たの?」

「うん……」

「はやく、お家に帰ろう?心配していると思うから」

「でもね、私ひとりじゃなかったんだよ」

「?」

「友達ができたの」

「その友達って、どこで?」

「あの修道院で遊んだの。ずっとあそこに住んでるんだって」

レイナは荒廃した修道院を見る。人の住んでいる痕跡はないが、悪意に満ちたなにかをレイナは感じ取っていた。

レイナはナナの手を握り、山を下りる。

「早く帰ろ?ね?」

「うん、わかった」

レイナとナナは無事に下山する。

「気を付けてね」

「うん」

ナナとお別れをしたレイナは背後に寒気を感じる。下りた山から謎の視線を。

レイナは振り返り、廃墟となった修道院を見たが、なにもいなかった。

レイナは不思議に思いながら、自宅に戻った。

それからレイナは何事もなかったようにエランドゥルと接する。一人の女性が捜索依頼を頼んできたこと以外は言わなかった。荒廃した修道院に近づいたことも言わずに…。


それからレイナはエランドゥルが数日ぐらい家を離れると聞き、再び家番を任せられるが、エランドゥルがなかなか帰ってこないためレイナは無謀にも一人であの場所へ行く。

夜中、彼女は目的地に向かっていた。

「うん?」

レイナは荒廃した修道院の付近で白い人影を見つける。気のせいだろうか?その人影は荒廃した修道院に入る。

レイナは夜中に肝試しで遊んでいる悪い子たちだろうと思った。

エランドゥルは、この修道院で悪霊払いをしたことがあるが、彼は修道院を見ては悲鳴を上げて気絶したのだ。

まわりはエランドゥルをイカレタ霊能者だと思っていた。

レイナは念のために修道院まで足を運ぶ。すると、白いローブを着た女性を見つけた。

「ここで何をしているの?」

レイナが声をかけると謎の白いローブを着た女性は姿を消した。

「?」

「誰かいるの?」

返事はない。レイナは杖を構え、廃墟の修道院へ侵入しようとする。

レイナは立ち止まる。そこには灰が山のように積まれていた。

「これは……?」

レイナは床に落ちている灰を見つける。それは……この世で最も醜い女の……なれの果てだった。レイナは知らない。

「……」

レイナはしばらく無言でいた。

レイナは修道院の中見渡すが、人はいない。しかし、気配はあった。レイナは瞬時に振り返るが誰もいない。

しかし、レイナの背後には邪悪な笑みを浮かべているエレイナの幽霊がいた。

エレイナはチャンスを狙い、修道院に入ってきたレイナの後を追っていた。

エレイナはゴーストになりながらも、聖属性魔術は得意で、魔法によって姿を完全に消せるようになっていた。

そして、ついにこの時が来た。

(久々のチャンス……こいつはわたしと同じ波長がある。この女のカラダを乗っ取れば…わたしは再び人生をやり直せる…)

レイナは嫌な予感がして修道院から出ようとするが、ボロボロの扉や窓が勢い良く閉まる。

「!」

「ほしい……お前の身体……」

エレイナは背後に立っていた。

「!?」

レイナは振り返るが、誰もいない。確かに声がしたが…。

レイナは恐る恐る周りを見渡す。辺りは暗いところばかりだ。

そして、エレイナは青白い顔でレイナの前に姿を現す!レイナはエレイナの姿を見るなり絶叫する。

「ふぅあ?!」

レイナは驚き、恐怖で体が動かない。

エレイナは青白い顔で微笑む。

「ぁ……ぁ……」

レイナは腰が抜けて床に座り込む。

「…ぅぁぁ………ぁぁ……」

幽霊のエレイナはゆっくりとレイナに近づく。

レイナの手が床にあった灰に触れる。

その灰からなにやら、なぞの力が入り込む。

それはエレイナが身に着けていた聖力だ。

「え?」

それは同時にレイナのカラダがエレイナの魂と相性がいいということでもあった。

しかし、レイナにとっては知るはずもなく、逃げようとするが。

背後から襲い掛かってきた霊体のエレイナがレイナの背後から覆うようにエレイナはレイナに近づき、背後から抱きしめる。

エレイナは邪悪なオーラを放ち、レイナに憑依する。レイナは苦痛で涙を流しながら、自分の胸を掴む。

「あ……あ……」

レイナの体から光が溢れ出す。レイナの肉体にエレイナの霊魂が重なるように出てくる。

「ぐ、ぐぐぐぐぐぐ……」

「あ、あああ!」

「うううううううう……あ」

レイナは意識を失いそうになる。

レイナのピンクの髪にはエレイナのホワイトブロンドのロングの髪が重なるように、レイナの顔にはエレイナの美しい顔が重なっていた。

カラダはエレイナの霊体と重なり、レイナの手足はエレイナの細く長い手と足に変わっていく。

レイナの体はどんどん、エレイナになっていく。

「ぁぁ……!ぅぅ……!」

レイナは倒れ込み苦しむ。レイナの脳裏にはエレイナの邪悪な意思が塗り替えようと語りかける。

『さぁ、私と一緒に生きましょう?』

「い、いや……」

レイナは必死に抵抗する。しかし、さきほどレイナに取り込まれたエレイナの聖力が、エレイナの魂と同化させようと助長する。

なにせその力は元々エレイナのものであり、エレイナの魂であるからだ。

「ぅぁ……ぁぁ……」

レイナの抵抗も虚しく、レイナの全身はエレイナに侵食されていく。

レイナの意思は徐々にエレイナと混ざっていき、レイナの意識はだんだんエレイナ自身になりかける。

レイナは自分の顔を両手でかかえる。エレイナの霊体が顔がレイナと重なり変化をしているからだ。

髪の色はピンクからエレイナのホワイトブロンドに変色して、髪型も変化していく。

「ぁ…ぁ…」

(…今日から…わたしが……あなたよ…………こわがることはないわ……あなたは選ばれたのよ……)

「やめて……」

(わたしは…こんなところで人生を終わりにする気はないの)

「ち、違う……わたしは……」

(わたしは…エ…レイナ)

レイナの意思の半分はエレイナになっていた。顔をかかえた両手を頬に持っていき、レイナの顔の半分は苦しんでいる表情ともう半分は、人生をやり直せることに喜びと歓喜に満ちた邪悪な笑顔を浮かべるエレイナの顔だった。

「ぁぁ……」(ああっ……素晴らしい!)「あははははははははははは!!!」

レイナはエレイナの姿になりしばらくうつむくが、邪悪な笑みを浮かべる。

エレイナは歓喜の声を上げる。

「ああ!!素晴らしい!これが……人間の体!これでまた……人生を始められる!」

エレイナは自分のカラダを抱きしめては、ニヤリと笑みを浮かべる。

レイナの魂とエレイナの魂が融合し、レイナの人格は完全にエレイナと混ざってしまい乗っ取られてしまった。

エレイナは立ち上がり、自分の手を見て、次に自分の顔に触れ、そしてエレイナの体になった自分の体を触る。

エレイナはレイナが着ている上着を片手で上げると両手で自分の胸を掴む。

「あたたかい…感じる………感触がある……」

エレイナは自分の肉体の変化をうながす。レイナの目は大きく開き、目の血管が浮き出る。全身を通る血管からエレイナの聖力を流し体にしっかり交わろうとしている。

ビキビキ小さな音を出して変化が始まる。レイナの顔は、レイナの面影を残しつつ完全にエレイナの美しい顔に変化していった。

エレイナは、自分の手を顔に当て、笑う。

「ふふふ……ふふふふふふ!はーっははは!」

エレイナは笑いながら邪悪な笑みで高らかに宣言した。

「さぁ、始めましょうか?私の第二の人生!!」

こうして、エレイナは、死んだ後に新たな肉体を得て、再びこの世に生を受けたのだ。

レイナの肉体と精神はエレイナに完全に取り憑かれてしまい、彼女の肉体と精神はエレイナになってしまった。

エレイナは鏡の前で嬉しそうに髪をいじっている。

「ふふ、ふふふ。ああ、なんて気分がいいのかしら?」

エレイナは鏡の中の自分を見つめて微笑む。

「生まれ変わったみたいだわ。これからはこの身体で生きていけるのね?」

エレイナは鏡の前に立ち、くるりと回る。すると、そこにはレイナの服を着たローブを身に包んだ美少女がいた。

「う~ん、最高」

エレイナは満足げにうなずく。

「さて。」

エレイナはかつての灰になった自分の肉体の成れの果てを見つめる。エレイナの意識は、レイナの意識の中に入り込み、レイナの思考や記憶を全て把握した。

(レイナの記憶によると、レイナは対象に宿っている力を制御できるらしく、自分の力に取り込めるようね…)

エレイナは邪悪な笑みを浮かべると、両手をかざすと、その両手から聖力が溢れ出す。

「聖なる光よ!」

すると、両手から出た光の玉が、エレイナのかつての肉体の灰になった山に照らす。

すると、灰の山は生命を取り戻したかのように生き生きとしたエネルギーを発して、その灰から新たな命が誕生する。

灰から現れたのは、かつてのエレイナの姿だった。そのエレイナは瞳を閉じており、魂は宿ってないようにも見える。

エレイナは、これから異形化の力だけを取り除いたかつてのエレイナの力を取り込もうとする。

(ロムズ、わるいけどあなたの与えてくれた再生能力だけは、ありがたくいただくわ)

エレイナはかつてのエレイナの体に触れようとする。すると。

「!」

エレイナの自分のなにかが割れるように、向こうのかつてのエレイナの肉体に流れるような実感を覚える。

「な、なにこれ?!」

すると、かつてのエレイナのカラダがゆっくりと瞳を開ける。二人のエレイナは驚く。

「「こ、これは一体……」」

「「ど、どうして……?これはいったい……?」」

「「あなたは……何者ですか……?」」

「「私の名前はエレイナよ……あなたもエレイナよね……?」」

すると二人は現状をすぐに理解した。

互いに意思があるのではなくエレイナの意思が二つに分けられて、互いの意思を感じ取れるような状態だった。

「なるほど、元の肉体だからなじみやすくて、わたしの魂の一部がそっちに流れたのね」

「でも、これじゃ不便ね…」

エレイナはかつての肉体のエレイナに身を任せる。

「さあ、わたしのからだに入ってなさい」

かつてのエレイナの肉体はうなずき、静かに目を閉じた。かつてのエレイナの肉体は、そのまま自分の肉体に入る。

レイナの肉体にかつてのエレイナのカラダが入り、かつてのエレイナのカラダはレイナの肉体に入り込む。

「ぅぁ……ぁぁ……」

二人のエレイナのカラダが融合する。

「ぁぁ……ぁぁ……ぁぁぁぁ……ぁぁぁ……ぁぁぁぁぁぁ……」

「ぁぁぁぁぁぁぁ………………ぁぁ……ぁぁ……ぁぁ……ぁぁ……」

「「ううううううっ……ううううううっ……」」

二人のエレイナの肉体と精神が溶け合うように混ざり合い、一つのカラダとなっていく。

「「あああっ……あああっ……」」

二つのエレイナの肉体と精神は完全に一つになり、やがて完全に混ざってしまう。もちろん人格は二つに分かれたのではなく意思疎通のできる遠隔人形のような状態だったわけで、人格は元から一つだ。

「はぁ…はぁ……」

エレイナは自分の手を見て握りしめたり開いたりする。そして、自分の胸に手を当て、心臓の鼓動を感じとる。

「…ふっ、ここに、かつてないほどの力を手に入れた最強の聖なる力の使い手の誕生よ」

エレイナは自分の胸を掴み、ニヤリと笑う。

「さぁ、始めましょうか?第二の人生。今度は、もっとうまくやれる!」

こうして、エレイナは、死んだ後に新たな肉体を得て、再びこの世に生を受けたのだ。

エレイナはレイナをエレイナと名を改め、かつてレイナが務めていた教会を訪れて、そこで一から学び再び最高司祭に成り上がるか、どうしようか企んでいた。

「クッフッフッフッフッフ。楽しみね。まるでどこかの転生モノの小説みたいに成り上がれたりして」

それからエレイナは、新たな人生を始めた。彼女の力は期待されており、エレイナの生まれ変わりなのではないかと噂されるほどだ。

「もしかしたら、エレイナ様の生まれ変わりなのでは?あの髪の色も顔立ちもそっくりですし」

「彼女がもしかしたら、次の守り手になるかもしれませんね。あんな小さい歳であれほどの力があるのですから」

わずかに耳に入る言葉。エレイナはニマニマと笑みを浮かべながら耳を傾けて聞いていた。

(当然ですもの。なにせわたしがエレイナなのだから)

エレイナは心の中で高らかに笑った。

エレイナは日々、修行に励み、教会の様々な仕事をこなした。そして、エレイナは、見事に最高司祭の候補に上り詰めた。

平和な日々を送っていた。

(さて、ほかの候補者も始末しておかないとね?)

エレイナは、最高司祭になるためには邪魔者を消さなければならないと考えていた。またかつての愚行を行おうとしていた。

しかし、世間は悪意に満ちており、最高司祭になるには並大抵の努力では無理である。

「エレイナ様、今日もお疲れさまでした」

「ええ、ありがとう」

エレイナは笑顔で応えた。

エレイナは仕事を終えて自室に戻り、部屋に入るとエレイナはため息をつく。

「はぁ~、なかなかうまくいかないなぁ~」

ライバルの暗殺も考えていた時、エレイナは奇妙な話を耳にする。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る