第32話 旅愁2 -再開-
目覚めてから数日が経った。
未桜は、あれから毎日のように僕の所にやってくる。
いや、それ以前からもそうだったのか。
彼女は、眼鏡を掛けたままだ。
でも、それでもいいと思っている。
未桜は、可愛いから気が気じゃない。
彼女の傷を気にする人もいるだろうけど、僕はそんなものは気にならない。
「尚弥くん、今日も来たよ」
そう言って、病室のドアが開いた。
未桜は、学校帰りだったのだろう制服で来ていた。
「未桜、ノック忘れてるよ」
「あはは、尚弥くんに会いたくて忘れちゃった」
「まあ、未桜になら今更だしいいけどね」
いつも、彼女は僕の身体の清拭をしてくれている。
だから、今更見られて困る物は・・・あんまりない。
ないとは言えないのが悲しき性。
「明日退院だよね?」
「うん、そうだよ」
明日には、やっと退院。
術後2週間が経過していた。
今朝抜糸も終わり、経過観察になった。
「明日、私がお迎え来るからね。
お義母さんにも頼まれてるの・・・退院手続きとかはお義母さんがしてくれるみたいだけど、そのあとお仕事みたいだから」
「え、そうなの?僕何にも聞いてなかったんだけど。
なんだか、未桜の方が母さんと仲良くなってるね」
「うん、お義母さんとっても優しいから大好き」
未桜と母さんは、親子の様に仲良しになっている。
なんだか、複雑な気分だ。
「尚弥くん、今日もお体拭くね」
「うん、よろしくね」
僕は、病院着の上を開けさせる。
お腹には、縦一文字に傷があった。
「ねえ、尚弥くん」
「ん?なに?」
「背中のこの傷って?」
「ああ、それはこの間話した台風の時の傷だと思うよ」
熊野で巻き込まれた台風の時、僕は背中を無数に傷つけた。
滑落したからなぁ。
よく考えるとよく生きていたと思う。
「名古屋から京都までってどうやって来たの?」
「そういえば、話してなかったね。じゃあ、順を追って話していこうかな」
「うん、私と京都で会うまでどうしていたのか気になるから」
「わかったよ、じゃあちょっと長い話になるけど話していこうかな」
僕は、そう言って夏休みを思い返す。
前回は、クラスメイトの前で名古屋までの旅程を話したんだよな。
名古屋の後は・・・そうそう、愛知県から三重県に入ったんだった。
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次回、旅愁2 -鈴鹿-です。
三重県の旅は、全部で3話構成です。
鈴鹿、伊勢、熊野になります。
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