神様には僕は見えないらしい

矢治清夜

第1話


「あなたは運命を信じますか?

 人の定めって決まっていると思いますか?

 あ、ごめんなさい。

 えっと、怪しい宗教勧誘では無いので安心してください。

 ただ、あなたに少し聞いてほしいことがあるんです。

 聞いてもらえますか。」





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今から十数年前でしょうか?

あの時からずいぶんと時間が経ってしまいましたよね。

分からないですか?

まあ、今は大丈夫ですよ。だんだん分かってきますから。

話を戻しますね。

僕は運命という言葉が嫌いでした。



「お前の不遇を恨むんだな。」

暗く淀んだ裏路地、男たちが僕を囲んでいた。

鈍い音が体の芯に響き渡ってくる。

遠くに明るい光がかすんで見えていた。

人がいる。こっちを見てる。

助けてと声に出そうとしたが口が動かない。

そいつは笑っていた。

「なにあれ。やばすぎるでしょ。」

そう言い去りながらフレームアウトする。

ゴミが腐った匂いがした。

この世界を憎んだ。自分が何をやった?

真っ当に生きようとしただけなのに、何が悪いのか?

どこかで間違えた?じゃあ、いったいどこで?

「こいつ、死ぬんじゃね。」

「ホントに運悪いよな、坊主。

 俺たちに出会わなければこんなことにならずに済んだのに。」

運命は変えれる、本人の努力次第で上手くいく。

ある本で読んだことがあった言葉を思い出した。

それなら、僕はどうだろうか。

これまでの人生、精一杯努力してきた。

このおかしく狂った世界から逃げ出したかった。

罵詈雑言、奴隷のように働かされ、

使い物にならなくなったら捨てられる。

僕はもう、人間ではなくなってしまったのかもしれない。

神がいるなら、俺を見捨てたのだろうか。

俺は一体どうすればいいのだろうか。



そんなことを悩んでいたんです。

誰だって思ったことあるんじゃないんですか?

なんでうまくいかないの?

あれだけ頑張ってきたのに、どうしてって思いませんか?

そう思いますか?そうですよね、やっぱりそうなんだ。

僕の感覚は壊れてなかったんですね。よかった。

あの時、このまま死んでしまうのかって思いました。

走馬灯なんか、昨日食べたカップ麺だったんですよ。

笑えますよね、ホントに。

そんなことしか思い出せなかったんです。

今もし僕が走馬灯を見るなら、どうでしょうか?

僕はこたつ机でみんなで囲んで食べた鍋ですかね。

〆はご飯か麺かでよく言い争って・・・。

そんなことありませんか?

家族会議とかになりますよね。

お子さんは最近、一緒に食べたりとかは?

やっぱり、一人ですか。

ちょうどそれくらいの年齢ですもんね。

あ、この話は関係ありませんね。続けますね。




人生何があるか分からないものですね。

そこにあいつがやってきたんです。

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