受け入れるべき現実

健診当日


今朝は悪阻と貧血が酷く、修二の付き添いがあり一安心の里美だった。

亮二は生後六ヶ月も終盤を迎えている。


「順調に大きくなってるね。表情も豊かだし身長も体重もいいペースで増えてるわ。」


ハダカで手足をバタバタさせてご機嫌な中健診を終えることができ、一安心の里美。

そろそろ離乳食を始めるための準備をするよう指導を受ける。

予定日よりも出産がニヶ月早まった分、本来の月齢よりもその分マイナスして成長を見ていくのだが、それでもとても順調らしくその結果は新米ママとしての合格を言い渡された様なそんな気分でもあった。

今は相変わらずの頻回授乳ではあるが、母乳だけでも足りている様である。


「身長も体重も小さめだけど、産まれた時の大きさからしたらいい調子ね。

母乳育児、頑張ってるのがわかるし順調だと思うわよ。ミルクも足さなくて大事な気がするけど…様子見ながらあげてみてね。」


褒められた嬉しさの反面、里美には気になることがあった。


「あの…このあと産婦人科を受診するんですけど、私たぶん妊娠してて。検査薬で反応出てるんです。」

「あら!そうなの?」

「母乳あげてると、子宮がつるような感覚があって…でも、たまたまかもしれないんですけど。」

「ううん、それは関係あるわね。母乳は止めた方がいいかもしれない。賀城さん、早産だったのもあるし母乳もせっかく頑張ったけどね。でも亮二くんが欲しがるようならあげて、お腹の張りが強いようなら控えればいいわ。あとは様子見ながらね。」

「そうですよね、わかりました…」

「赤ちゃん、無事に育っていることを願うわ。身体、充分に気をつけて、お大事に。」


付き添いで病院へ来ていた修二へ亮二を渡すと、続くは里美の産婦人科受診だ。


「じゃ、行こうかな。修二くん、一緒に来てくれる?」

「不安なのか?」

「うん…それはね。」


楽しみな反面、この先に待ち構える様々な不安が押し寄せていた。


「大丈夫…赤ちゃんきっと…ちゃんと育ってる。」



産婦人科


問診票を渡されると、緊張が止まらない里美は一度深呼吸をして暴れる鼓動を落ち着ける。


名前 :賀城里美(かしろさとみ)

年齢 :28歳

電話 :060-511-807

身長 :148cm

体重 :38kg


最終月経 :12/27

月経周期 :不順

性交経験 :有

最終分娩 :20××年10月5日

既往歴 :パニック障害(7年前)

妊娠歴 :

妊娠(2回)

分娩(1回)20×7年10月(28歳)

流産(1回)20××年1月 (26歳)

中絶(0回)

出生時体重 :1205g


検査薬反応日 :3月29日

悪阻の症状 :有

心の病気 :何年も症状無し

その他 :


かなり細かく記入するものだと思いながらも問診表の記入を済ませて提出すると、尿検査カップを渡されてトイレへ向かう。

用を済ませ、小窓にトンと紙コップを置くと胸の鼓動が激しくなり、緊張で呼吸が浅いことに気づく。

不安な気持ちを落ち着かせるためにも自分へ言い聞かせた後、待合室に戻り修二の隣に腰掛けると里美は息子を抱きしめた。


「あー修二くん…緊張する…どうしよ。二人目を妊娠するの早すぎるって絶対言われるわよね?」

「大丈夫だ、行っておいで。子どもが出来ることに早いも遅いもないよ。その夫婦によるんだからな。」

「カシロさん、カシロサトミさん。ニ番のお部屋にどうぞ。」

「…じゃ、行ってくる。」

「さて亮二ほら抱っこだ。ママは先生の所に行くからな、こっちおいで。」


見つめる亮二の視線を後に、里美は緊張の面持ちで、診察室へと向かった。

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