未来への足跡《シリーズ小説第一期》

アカリン@とあるカップルの家族誕生小説

労わりの気持ち

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旧知の三人は久しぶりに飲みに出かけたが、一人明らかに飲み過ぎな里美。

翌日、二日酔いのまま通り出勤するが、体調の異変を感じ倒れてしまう。

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誰もが忙しかった仕事の合間をぬって、修二、里美を含む友人メンバーは大学時代の仲間の結婚式へ出席した。

その後、久しぶりに利佳子を含め三人でバーで過ごす。


「三人で飲むなんて久しぶりだよな。」

「そうね、たまにはいいんじゃない?」

「このワイン、もう一本開けようよー」


三人で美味しいと口を揃えたワインは、それぞれが注文したアルコールの他にすでに三本開けている。


「ちょっとお手洗い行ってくるね…」

「そのままトイレで寝ないでちょうだいよ?」

「大丈夫よー」

「あの子…飲み過ぎね。でも今日こうやって飲んでるってことは、里美は妊娠なんてしてないのよね?」


里美が席を立つと、利佳子が気になっていた話しを切りだす。

プハッっと、修二が吹き出す。


「なっ!?なんだ、それ?」

「この間ね、里美、仕事中に子どもがどうだかって言いかけたのよ?

本人、妊娠は否定していたけどね。」

「俺も報告は受けてないよ?

さっきから飲んでるし、もう一本開けようとか言ってる時点でないだろ…」

「そうよね…」


まだ戻らないのかと心配になる頃、ようやく里美が戻ってきた。

明日の朝は早いからと、そろそろ帰るという利佳子に別れを告げて、修二と里美は引き続き二人で再び飲み始めた。

合間にかなり度数の高いナントカというカクテルを飲み、里美は明らかに飲み過ぎだった。

帰り道は案の定足元がおぼつかない里美。

仕方なく修二は家まで送ることにした。


「…ゔっ…ぎもぢわるい…」

「相変わらず……飲み過ぎなんだよ。」


これでも、店で飲んでいる間、何度も飲み過ぎだと忠告したはずだ。

普段からアルコールには強い里美だが、今日は飲み方が荒かった。

何かあったのだろうか…

ストレスでも溜まってるのだろうか、しかし時には発散も必要だろう。

途中、嘔吐しながらもタクシーに乗り、何とか家まで送るとミネラルウォーターを飲ませベッドに寝かす。


「桃瀬!俺も家帰るからな。明日、仕事遅刻するなよ。」


修二も里美も、明日は出勤。



翌朝


「おはよう、里美。昨日は結構飲んでたけど大丈夫だったの?」

「あーもう、頭いったくてねぇ〜ひどい二日酔いよ…どうやって帰ったのかよくわかんないけど、たぶん修二くんよねぇ。」

「そんなんでよく起きれたわね。修二くんはお泊まり?」

「いや、帰ってったみたいよ。もうあんな遅かったんだから泊まって行けば良かったのにね。あいつ、自分の彼女があんなに酔っ払ってるのによく放って帰れるわ。」

「修二くん、きちんと彼女を送って行くなんて意外とちゃんとしてるじゃない。」


里美はブツブツ言いながらも今はここ最近お決まりになっている、毎朝の薬を飲む時間だ。


「そんな毎日薬飲んでて大丈夫なの?市販薬でも勝手に飲み続けるのは良くないわよ。」

「薬のめば治るし、不調のまま一日過ごすより動ける方がいいでしょ。ところで昨日のワインは本当、美味しかったわよね。」


時には母親のような、大学時代からの友人。

ここ連日、二日酔いだ…頭痛だ…胃もたれだ…出勤すると薬を飲んでいた。

薬を飲んでの運転は危険だと、彼女なりに知識はあったらしく決まって出勤後に服薬するのだった。


「次の日が仕事とか、もう子どもじゃないんだから考えなさいよ?

あなた、まともな食事も摂ってないんだから…」

「まぁ…そうよね、万が一入院や手術なんてことになったら…ね。でも、食事はちゃんと買って食べてるわよ。」

「少しは自分で作るって気はないの?」

「無いわね。出来てる物の方が私が作るより美味しいのよ。」


里美の料理は色々危険なのだ。

味もそうだが、手際も悪ければ包丁の使い方も危なっかしすぎて見ている方が身体に悪い。

午前中は研究室のメンテナンス諸々と、スケジュール通りに終えれば、自身のデスクワークを少しでも進めておきたかった。

二時間ほど経過した頃、里美は自身の異変を感じていた。


「…何?閃光?…目が開けられない…冷や汗が出る…足に力が入らない…?」


そんな異変を感じつつ、同僚の座るイスの背もたれに手をかけていた。

座っているイスに力がかかったことで、わずかな変化を感じた同僚が後ろを振り返った瞬間、里美がその場に崩れ落ちた。

その場にいた、他の男性陣もその場に倒れた里美を呼ぶ声に反応して振り返った。


「…桃瀬さん!?」

「里美!?」


利佳子は咄嗟に里美を横向きに寝かせた。

万が一嘔吐があっても、窒息させないためだ。

利佳子が声をかけると、幸いにも虚な目ではあったが意識もあった。


「言わんこっちゃない。二日酔いで人に迷惑かけないでくれる?あなた、すごい汗だけど大丈夫なの?…どうやら熱はなさそうね?」

「あ…ごめっ…、急に……」


里美は自身に何が起きたのか一瞬理解ができなかったが、

ただ、今は重要な作業中。

医務室に連れて行かせようにも、里美一人での移動は恐らくムリだろう。

今は利佳子を含め、ここを誰も離れるわけにはいかないのだ。

すると、利佳子はどこかへ電話をかけ始めた。


「…修二くん?今、暇だったりするかしら?」

「どうした?利佳ちゃんからとは珍しいな。いや、暇ってことはないだろ。やることはいっぱいあるけど、利佳ちゃんからの頼みなら聞かないわけにもいかないのかな。」

「…里美。」

「…ん?何かあったか?」

「里美がね、さっき倒れたのよ。

昨日あれだけ飲んでたでしょ?昨日だけじゃなくて、あの子最近毎日薬飲んでて具合良くないらしいの。今朝も出勤して薬飲んでたわ。

とりあえず医務室に連れて行きたいんだけど、私ここ離れられなくてね、一人じゃムリそうなの。修二くん、お願いしても良いかしら?」

「桃瀬が?大丈夫なのか?うん、わかった、向かうよ。」


十分もすると、里美たちがいる研究室に修二が到着した。

里美は目を閉じたままイスにもたれかかり、ハンカチを口元に当てながら弱々しい声で応える。


「おーい、桃瀬、大丈夫か?歩けるか?」

「……うん。」

「桃瀬が倒れるとか珍しいこともあるもんだな。」

「それじゃ修二くん、任せたわ。里美、お願いね。」

「はいよ。」

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