第29話 1人が2人に…

 私はサツキお祖母様の記憶を見続ける。


 高校では勉強漬けの毎日だけど、休日は父と一緒に剣道や柔道の稽古に励んでる。

 そして猛勉強に励んだ結果、目標にしていた父の母校である東大に合格した。大学では勉強は勿論だけど、射撃部に入って部活動に励んで父と同じ自衛官を目指してるの…


『これって…私と同じ境遇じゃない?』


 そして無事に念願の自衛官となり、父と同じ特殊作戦群 特殊部隊に配属されたの。更に要人救出任務に赴き、任務中に要人庇って殉職したのだ。

 そう…全て自分の前世の記憶と同じだった…


 そして異世界転生をして、レンドルド王国第二王女【サツキ.ラ.レンドルド】として新しい人生を歩み、マルグリット侯爵家へ嫁いで【サツキ.ラ.マルグリット】となった。

 サツキお祖母様のギフトは〘確定未来〙で確定した未来を見る事が出来る。自分の確定した未来が見えて【身体不完全状態】の為に長く生きれない事を知る。更に確定した未来を見ると、【心が不完全状態】で生まれてくる孫の姿(自分)を見たのだった。【有馬 皐月】が異世界転生する時に何故か違う時間へ分かれて転生したの。

 サツキお祖母様は【身体不完全状態】で、私は【心が不完全状態】で転生してしまった…

 その事を知ったサツキお祖母様は、死の間際にお祖母様に仮死状態で墓苑に保管するよう頼んだのだった…いずれやって来る半身である孫のサツキの為に…


 真実を知った私は、隣りに居るお祖母様の顔を見て話し掛ける。


「お祖母様…サツキお祖母様と私が元は同じ【有馬 皐月】だったと事を知っていたの?」

「2人が元は1人だったの?私はサツキが【身体不完全】という事は知っていたわ。そして孫のサツキが【心の不完全】で生まれて静養が必要になれば連れて来て欲しいと言われたのよ。」

「でも、サツキお祖母様は完全には亡くなって無いのよね?」

「えぇ、でもサツキの身体は膨大な魔力に耐える事が出来ないのよ…仮死を解除すると溢れる魔力と共に消えてしまうのよ…」

「私はサツキお祖母様に記憶の全てを見るとね、心が満たされて【心の不完全状態】は治るんだけど…サツキお祖母様が消えてしまう…私はどうしたら良いの?」

「サツキは孫であるサツキの為に心を渡すと決めたのね…それなら期待に応えてあげて欲しいの。」

「うん…判った。お父様もそれで良い?」

「あぁ、お母様とサツキが元は1人だった事には驚いたけど、それがお母様の望みなら叶えてあげて欲しい。」


 2人に確認をしてから、私はサツキお祖母様に触れて全ての記憶を見て、自分でも違和感を感じていた心が満たされたの…


『ありがとう、サツキお祖母様。』

『私の可愛い愛孫サツキ、同じ【有馬 皐月】だったけど私は貴女を愛してるわ。どうかあなたが幸せである事を祈ってるわ♪』


 私は最後にサツキお祖母様と会話を終えると、その身体は光の粒子となって消えてしまったの…

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