白黒テレビ
七星北斗(化物)
1.始まりの怪異
「白か黒なんてどっちでもいい。本当に大事なことは、本物でありたいって思う気持ち、それだけだよ」
姉は口癖のように、そう言葉を繰り返す。
そんな自慢の姉が死んだ。
通夜が今日行われ、現実味のない出来事だった。
海外で遺跡調査をしていた姉は、殺されたのだ。人から恨みを買うような人間ではないので、動機が不明だ。
その日は、眠れずにいた。
明るくなった時間に、ようやく眠りにつく。
太陽が南中した時間に「ピンポーン」と玄関の呼び鈴が鳴る。
俺は、慌てて飛び起きる。
「橋本さーん、宅配です。いらっしゃらないですか?」
「はーい、今出ます」
宅配のお兄さんに返事をして、玄関の鍵を開ける。
「
「はい、俺です」
「サインをお願いします」
「わかりました」
手渡されたボールペンで氏名を書く。
「では、これで」
「ありがとうございました」
元気のいい配達のお兄さんの挨拶で、シャキッとする。
何が届いたんだろ?
送り主は、
今さら何で…でも、箱の中身が気になる。
ガムテープを剥がし、ダンボールを開く。
箱の中から箱が、マトリョーシカか?
更に箱を開けると、布で何かが包まれていた。
何だこれ?
包みを丁寧に開けると、刀!!まさか本物?
刀を手に取ると、ずっしりとした重さが手に伝わる。そして鞘から刀を抜くと、洗練された白刃が覗いた。
「姉さんは、何でこんな物を?」
そのタイミングで「じりりりーん」と固定電話から電話がかかってくる。
誰だ?
「もしもーし」
「やあやあ、初めまして。僕の名前は、ラキて言うんだけど」
「誰!?」
「誰でしょ~」
「切るぞ」
「嘘、嘘。ちゃんと話すから、切らないで」
「で、何っ?」
「君のうちに、夜叉丸届いたでしょ?」
「夜叉丸?」
「刀の名前だよ」
「何で知ってる!?」
何で、届いたばかりの物がわかるんだ!
「君のお姉さんとは、古い知り合いでね」
「はぐらかすな」
「その刀は、怪異を絶つ力を持つ」
「怪異を絶つ?」
怪異とは何だ?新興宗教の類いじゃなかろうか?怪しい。
「怪しいと思ってるでしょ?なら足元見てみてよ」
「足元?何があるってんだよ」
目線を下に向ければ、複数の腕が俺の足を掴んでいた。
「なんじゃこりゃ」
「やっぱり、ケラケラ」
「何なんだよコレ」
「それは、足つカミ」
「足つカミ?」
「足つカミ、足掴む神。その名の通り、古い神様だ」
「足を引っ張る神様?」
「違うよ。君が危険や不幸に、向かって進もうとしているから、足を掴んで引き留めているのさ」
危険や不幸、何の話だ?
「これも立派な怪異だ。君が望むなら、夜叉丸で怪異を絶つことができる」
「怪異を絶てば、どうなる?」
「何も変わらないさ、そこに何もなかったてだけの話」
にわかに信じがたい話だが、実際にこんなものを見てしまうと、信じるしかなかった。
しかし危険や不幸から、守ってくれている怪異を絶つことは、果たして正しいことなのだろうか?
白黒テレビ 七星北斗(化物) @sitiseihokuto
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