ある日の夕方
saito sekai
ある日の夕方の出来事
水曜日の夕方、俺は仕事を終えて帰宅しようとしていた。疲れた目に夕日が眩しい。
「後、2日頑張れば休みだ…」
すると夕日の彼方からなにやら飛んで来る。それは人の足だった。びっくりしていると、もう一本の足、腕、胴体、頭…次々に飛んで来て、それは空中で一つの身体になった。
それをよく見ると、俺のおふくろであった。ニコニコ笑っている。唖然としているうちに、その身体は俺になった。いや、親父の若かりし日の姿なんだ。じっと見ていると、それはだんだん老いて行き、今の親父となった。
その親父は言う。
「お前は一人なんだよ」
そして歌を歌い出した。よく知っている曲。でも題名が思い出せない。
俺は段々可笑しくなった。するとその親父のような幻想はいつの間にか消えていた。それを見守っていた俺の心に何かが込み上げて来る。
「そうだ、俺は一人じゃない、でも一人でしっかり立って行かなければならないのだ」
気がつくと、すっかり日は落ちていた。歩く足取りはさっきより、少し軽くなった。完
ある日の夕方 saito sekai @saitosekai
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