パイモンとバティン

外に出るとレオナと頭に角が生え6対の銀黒の翼を持つ女顔の男の堕天使が立っている。


さっき外に逃げた細い男も倒れてるな。


「レオナ待たせたな」


「パイモンご苦労なのだ!」


 夏樹の言葉に対してレオナがホッと安堵する。


「如月さまご無事でよかったです」


「ギャウ~」


 ベリルも活躍したのかな?


 まわりは魔法を使ったのか所々砕け一部崩壊している。


「ルシファー様もったいない御言葉を⋯⋯人間風情を助けにいかれるとはルシファー様もどうかしたかと思ったが⋯⋯ルシファー様も物好きにも困ったものだ。おい人間、ルシファー様の手を煩わすな」 


 ルシファーの労いの言葉にひざまづき挨拶すると、立ち上がり俺にむかってパイモンが声をかけた。


 宥めるようにバティンがパイモンに声をかける。


「パイモン様、ルシファー様のみこころのままにですよ」


「そうなんだがあの人間風情が⋯⋯!!」


 ルシファーの顔色を見てパイモンが黙る。


「マスターはすごいのだぞ。パイモンにもわかるときが来るのだ。マスターを悪くいうのは我輩が許さないのだ」


「はっ!ルシファー様わかりました」


 パイモンが大きな声で気をつけをして返事をした。


「すごい肩の入れられようね。興味深いわ。何をしたらここまでなつかれるのかしら」


 朱莉が感心したようにこちらをみている。


「ルシファー様に頼まれていた袋の回収もしておきました」


 倍速魔法袋をパイモンが渡してくるのをルシファーが受けとる


「うむ!助かるのだ。マスター、次は盗られないように魔法の紐でもつけるべきなのだ」


「そうだな。作ってみるか。また手伝ってくれるか?」


「お安いご用なのだ」


工房ギルド支部に戻ったら作ってみるかな⋯⋯


「夏樹さま、レオナさん自己紹介が遅れました。悪魔族公爵家バティンと申します。以後お見知りおきを」


淑女の気品をだしながら挨拶をしてくる。


「パイモンだ。別に覚えようがどうでもいいがな」


パイモンはぶっきらぼうに答えた。見た目は女だが男の娘である。


「バティンとパイモンですって?やっぱり貴方たちの仲間はおかしいわ。やはりあれ以上戦わなくてよかったわ」


 朱莉が顔色を悪くしながら少しホッとしている。朱莉も転移者だから悪魔たちの存在も知ってるみたいだな。


 しかしソロモン72柱の序列9番と序列18番じゃないか!パイモンは魔王だしバティンは大公爵だぞ!


 悪魔族の階級は王、公爵、侯爵、伯爵、騎士、総裁だったはず⋯⋯


上から数えた方が早いのはどういう事だ!? もっと弱いやつから出てくるもんじゃないの?



このメンツを問うと頭が痛くなりそうだ。気を取り直そう⋯⋯


「しかし、こうも人が増えると宿探しも大変になるな。宿代もばかにならないだろしな」


「では私めとパイモン様は別口で住む場所などを探しにいって参ります。御用があればルシファー様に託けて頂ければ対応致します」


「私には当てがあるぞ。ルシファー様直ぐに行って確保して参ります。こんな人間くさいといけません!」


 バティンとパイモンは別行動か⋯⋯


  しかし、拠点を構えたりするにはまだ金額も少ないし、合流しないなら今は宿でも良さそうだが⋯⋯


 一応工房ギルド支部のジュデイに相談してみるか⋯⋯


 パイモンは何か当てがあるらしいがどうなんだろ?確保してくるって事は人数が住めそうな場所があるんだろうか。



◇◆◇◆◇◆



 工房ギルド支部に来てジュデイと話をする。ジュデイがお茶を注いでくれた。


「ここら辺で人数住めそうな場所とか知らないか?」


「住む場所なら商人ギルドをあたる方がいいね。曰く付きだけど広い場所の屋敷があるってのは聞いた事があるよ」


「本当か!? 助かるな」


「後ろにいる子は新しく仲間になったのかい?ああっそれで住居がいるんだね。ん?それとも2人と結婚でもするのかい?」


「如月さまと!? 」


「ええっ!? 夏樹と?早すぎるわ」


「ゲホッ!? 」


 含んでいたお茶を吐き出してしまった。


 朱莉も少し慌てているみたいで耳が赤くなっている。


 レオナも慌てているが少し呆けているな。妄想してたのか?


「やだね~冗談だよ。でも曰く付きなのは最近の話でね⋯⋯一応あんたたちは大丈夫だろうけど…気をつけな」


ジュデイはクスクスと笑いながら話を戻してくれた。


「我輩の傘下の配下もいるのだ」


「そうなのかい?ならなおさらいいかもね。商人ギルドも困ってたみたいだし、貸しを作るにはいいチャンスだよ。あんたたちのランキングランクなら住居区の<中京層>にももう行けるだろうしね」




◇◆◇◆◇◆




 商人ギルドに向かうと、この前工房ギルドで審査員をしていた背の大きな商人がいた。



「ん?夕星の皆さんじゃないですか?今日はどういった御用ですか?それとも新商品の販売ですか?」


「新商品はないな。タージルアビトさんは曰く付きの屋敷のことを知ってないか?」


背の高い商人タージルアビトは困ったようにこたえてくれた。


「ええ知っています。元々私の知人の屋敷だったんですが最近、いるはずのない屋敷に幽霊が出ると噂になりまして、それから屋敷の住人もおかしくなったりしてしまって、誰も寄り付かなくなったのです」


「それじゃあそこに案内してくれませんか?」


「ええ!? 行くんですか?」


「もちろんいくのだ。そこの屋敷は広いのか?」


「広いですけど⋯⋯仕方ない夏樹さんの頼みなら行きましょう。では住居区に移動しましょうか」


 意を決したように背の高い商人タージルアビトは歩き出した。


住居区<中京層>へ移動すると広い屋敷が見えてくる。


庭付きの3階建ての屋敷だ。


「なかなかいい感じな屋敷なのだ」


「おっきいです」


「中の造りも見てみたいわね」


「ギャウウ」


「無茶ですよ~。怖くて私は入れません。噂では寝室と給仕室に出るという話です」


「ではその噂の幽霊を退治したらここに住んでもいいですか?」


 背の高い商人タージルアビトは驚いて返事をした。


「もちろん解決してくださったら家賃はお安くしておきますよ。

どのみち曰く付きで住みたがる人もいませんし、その提案は願ったり叶ったりですよ」


よし!幽霊には悪いが出ていってもらうとしよう。

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