いつもありがとう

 いつも美味しいご飯を作ってくれる彼女に、俺からの些細なお返し。

エプロンをしてキッチンに立つ。いざ取り掛かろうと包丁を手に取ったとき、ふとダイニングの彼女が目に入った。青い顔で、じっと俺の手元を見つめている。そんなに俺の包丁捌きが心配? 大丈夫だって、心配症だな本当に。確かに包丁の扱いには慣れてないけどさ、俺は普段から仕事で危険物を取り扱って……痛っ。あぁ、こういうことを言った矢先に。うっかり切ってしまった指先から一滴、ぼたり、と血が落ちた。やっちゃったぜ、と苦笑してダイニングの彼女に目をやった。

太腿の上で拳を握り締める彼女の膝から下は、手元のまな板の上にある。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る