鬼と舞う
善根 紅果
童友達(わらわともだち)の病
「つ~ら~ゆ~き~」
呼ぶ声は、
「はうっ」
「ううっ」
「ううう」
「うぐぅ」
そこに
いつもは
「ね~ね~、つ~ら~ゆ~き~、聞いてよ~、聞くだけでいいんだよ~」
善道も浅沓を脱ぎ、棚に置き、肌足で、霜の下りた階段の冷たさに顔を盛大にしかめて、上る。
どちらも
話す善道の声が聞こえず、貫之は、図書寮の
善道も上がり、貫之の袖を
「
貫之は眼を見開いて、善道を見た。
「女にて
同じ
「
貫之は小声で、
善道の浅緑の袖の上の善道の眼が、貫之を睨んだ。
「
「…それはそうですが…」
「ただでさえ時間がないって言うのに、青海波を舞う相手の覚えが悪すぎて、疲れ果てて、
「章成が青海波を舞うのですか」
貫之が言うと、浅緑の袖の上の善道の眼が笑んだ。
「
「………」
貫之は黙り込む。
善道は
「
袖を下ろした貫之は、物思う
「
「長谷雄様は、
「祈祷じゃなく、
言いかけて、善道は、また
「長谷雄様の
今、目の前で、腹を抱えて痛みに転げ回る
「薬と
帯刀舎人に斬られようとする翁を、声を上げて
「兄の
善道の話に、貫之は詰めていた息を、長く吐き出した。善道も、口覆いした浅緑の袖の内で、
「国守様は、たかが
「そうなのですか…」
「長谷雄様は、『
「そうなのですね…」
「学問が進まない言い訳かもしんないけどね~」
口覆いした浅緑の袖の下から、善道の
紀長谷雄は、三十八歳。同い年の
大学の
――それが、昨日のこと。
他の
「章成のことをお伝えいただき、ありがとうございます」
そう言って、行こうとする貫之の浅緑の袖を、善道は
「だから、章成のために頼むよ~、つ~ら~ゆ~き~。章成が戻って来た時に、相手が完璧に舞っていたら、章成、喜ぶと思うよ~~~」
帝の
けれど、章成は舞うことはできないようだ。
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