あと三分で……。
飛鳥部あかり
前編
私には三分以内にやらなければならないことがあった。
それは、『運命の相手を見つける』ことだ。
なぜなら私たちは―――
「あと、三分を切りました!!」
あと三分で地球が終わるからだ。
☆・☆・☆
事のはじまりは二時間前くらい。突然のことだった。
私——
『皆さん、残念ですが、あと二時間ほどで地球が終わります』
何かのドッキリかと思った。
でも、そんなんじゃなくて、ほんとに地球が終わっちゃうんだって。
理由とか特に聞いたわけではないけれども私はすんなりとその現実を受け止めてしまった。
だって、みんな焦っているから。
なんか私の人生、何もなかったな……。
よーし、ここにいても死ぬだけだし……。
「青春するか!!」
適当に好きな人でも作って幸せになるか――!!
空は少し暗くて、ぽつりぽつりと雨が降っていた。
私は地面を蹴り上げて家を飛び出した。
―――そして、今に至る。
どうしよう、運命の相手全然いない!!
あと三分……。どうしよう……。
私はとりあえず地面に座った。
辺りを見ると、みんな狂ったように走りまわったり、踊ったり、泣いたりしていた。
「ね、ねぇ君。今、暇?」
黄昏ていた私に一人の男性が声をかけてきた。
え……運命の相手、来た……!?
振り返った相手は、イケメンだった。
さわやかに真っ白い歯をのぞかせて笑っていた。
「あと三分で、地球終わっちゃうね(キラン☆)」
「あなたのせいで十秒なくなりましたが?」
「あ、あはは……あのさ、お、俺と……」
「……」
「俺と……一緒に……(汗)」
「………」
「…………一緒にご飯食べませんか(小声)?」
迷わず「喜んで!」と言おうとしたところ、
「や、やっぱり俺なんか駄目だよね!!ごめんなさいいいい!!やってみたかっただけなんですぅ……!」
断られてしまった………。
きっとこの人も青春したかったんだよね……。
こんな意味不明な人に一分を使われてしまった。
あと二分。
私は走り出した。
クラスで一番イケメンの人に告白しよう!!
ということでクラスで一番イケメンと称されている大西君のところへ走った。
「やあ大西君!」
「……だれ?」
「え……。えーと、はじめまして!長瀬和花です!好きではないんですけれども地球が終わるので付き合ってください!」
「は、はあ!?意味わかんねーし……」
「……!振られた!では、さようなら!ありがとうございました!!」
時間は無駄にできない……!
私はそそくさとその場から逃げだした。
あと一分……。
「もう、だめだぁ……」
「……のどちゃん……!?」
「……え?」
この声は……?
「ちーちゃん!?」
小学校の時まで一緒にいた幼馴染……
「ちーちゃん!?なんでここにいるの!!?」
「えへへ、地球終わっちゃうから、のどちゃんに会いたくなっちゃって……」
「うそ、嬉しい……!」
「僕、のどちゃんに会えて、すっごく嬉しい!」
「私もちーちゃんに会いたかった!」
「のどちゃんは何をしていたの?」
「私はね、最期だから青春しちゃおう!って思って運命の相手を探していたの」
「……相手は見つかった?」
「全然!!」
「…………」
「じゃあ、あと三十秒くらいだから私もう行くね!」
「……ま、待って」
「……ん?」
「……やっぱり何でもない。見つかるといいね、運命の相手」
「うん!じゃ、来世で!」
「…………」
空は真っ暗になっていた。
雷がピカピカと光って見える。
強風が体に吹き付けられる。
ぐらりと体が傾く。
誰かが私の手首をつかんだ。
空が暗すぎてその人の顔は見えない。
「……大丈夫?」
「……っ」
ぴかっと光った雷でその人が見えた。
「のどちゃん、あのね僕……やっぱり最期はのどちゃんと一緒にいたい。……僕が君の運命の相手になることは、できないかな……?」
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