その実を食べろ！〜全ての望みを叶えるスキルの実。

第5話 王都へ

ーー　いざ王都へ

伯爵家族と共に王都に向かうことになった。

伯爵家はお嬢様の他に兄が2人いて2人とも王都で学生と騎士団に入っているそうだ。

「我が家の馬車はそこまで広くないため、少々狭いが我慢して欲しい。」

と伯爵が申し訳ない顔で言うのので

「それでは失礼ながら私の馬車で相乗りしませんか？」

と持ちかけた、当然馬車には私の魔法が施されている。

「これは何だ！空間魔法か？」

と絶句する伯爵、私の魔法で馬車内は小さな屋敷ぐらいの広さがあるのです。

「私は色々な魔法が使えるので、遊び心で作ってみました。」

と答える私に

「あまりこの様なものは見せないほうがいいだろう、君の身のためにも。」

と心配してくれた。

その後は伯爵家の皆と一緒に王都に向かった。

「本当にこの馬車は乗り心地がいいわね。ねえお母様。」

お嬢様が明るくなった母嫌に甘える様に語りかける。

「本当に、セシル様は本当に女神の化身の様ですね。」

と呟くとお嬢様が

「本当ですね、お父様セシル様を女神の化身の可能性があると報告されてはどうですか？その方が身の安全も守られる可能性がありますわ。」

と提案した、それを聞いた伯爵はその考えを考慮しながら

「それとはなく示唆する様な話をしておこう、できれば貴殿にもそれらしい魔法を使えるといいなだが。」

と言うので

「孤児院で重病患者でも治してみせましょうか？」

と答えると

「それは良い考えだ、国王に謁見するまでの間にその様にしてもらえぬか。」

と話を合わせてくれた。

ーー　聖女の降臨

その教会は昔、聖女と呼ばれた女性が身一つで建てた教会と言われている。

すでにかなりボロボロで、今にも崩れそうな教会に今でも30名ほどの孤児が寝泊まりしている。

地元の敬虔な信者はこの教会を信じ今でもお布施を届けている。

そこに１２歳くらいのプラチナの髪をした少女が現れた。

「私に病や怪我で苦しんでいる人々を救わせてくれませんか？」

とその少女は崩れかけた教会のシスターに声をかけた。

そして

「甦れあの日に！」

と唱えると教会がたちまち新築の様に建て替わった。

「これは、女神様の奇跡です。貴方は聖女の生まれ変わりですか？」

と感動した顔で、シスターは少女を教会に中に。

丁度そこに大怪我をした男性が運び込まれた、

「シスターこの人をどうにか助けてくれませんか。」

男の妻と思える女性が祈る様に助けを求めるが、男の怪我が治る様な怪我でないのは誰にでもわかるほど、これほどの怪我を治すにはそれこそ伝説の聖女でも甦らなけれな無理だとシスターも思っていた。

そこに先ほどの少女が

「私が治しましょう。ヒール。」

と唱えると、ただのヒールとは言えないほどの激しい光が患者の男を包み込み、光が消えるとすっかり怪我の治った男が。

「ああ、ありがとうございます。女神様、聖女様。」

そう怪我人の妻が言うと、周囲にいた人々も膝をついて少女に祈りを捧げ始めました。

「まだ私の力を必要とする者がいる様です、病や怪我で苦しんでいる者をここに連れて来なさい。私は3日の間ここで奇跡を見せるでしょう。」

と言う少女の言葉を聞いた人々は我先にと家に帰り、病や怪我で苦しむ親戚や友人を担いで戻ってきたのです。

すると少女はそれらの人々を1人残らず回復させて、その行為を3日間続けたのでした。

王都中その噂が広がり、人々が3日の間切れることなく列を作り彼女の治療を受けて自分の足で歩いて帰っていったのでした。

そして3日の深夜、少女は消える様に教会から姿を消したのでした。

教会のシスターは、

「聖女が降臨された、そして国王に会いに来たと言われた。この国に聖女が再来したのです。」

と人々に語った。

ーー　国王との謁見

「陛下、明日の謁見について少しばかりお話があります。」

宰相が少し慌てた様子で国王に聖女の話を語った。

「何、すると明日謁見予定のスタンピードを防いだ英雄は、聖女だと言うのか？」

国王が尋ねると宰相は

「ビブラン伯爵に確認しているところですが、まず間違い無いかと。よって明日の謁見で聖女の心証を損なう様な事態がない様に万全を整えたいと考えて、貴族らに彼女に手を出させぬ様にしておく必要があると考えます。」

「分かった、その様に計らえ。」

国王も緊張気味に答えた。

ー　謁見の日

「その方らが魔物のスタンピードを防いだ者達で間違いないか？」

と国王が問えば2人の男女のうち少女が

「はいその通りでございます、国王陛下。」

と答えた、さらに国王は

「一つ尋ねるが数日前に古い教会で病や怪我で苦しむ民を救いたるはその方で間違いないか？」

「はい、名も名乗らずに立ち去ったのですが流石国王様、隠すこともできない様です。私が天啓を聞きあの教会の復興に携わりました。しかし私はここにとどまることはできません、ビブラン伯爵領が私のいる場所の様です。」

と少女は答えた。

その後は褒美として法衣の貴族位「子爵位」を受けた少女は、その後貴族らの前には姿を見せず、いつの間にか王都から姿を消したのだった。

ーー　もう一つの奇跡

貴族が集まれば行われるのが晩餐会やパーティーである。

貴族当主は自分の栄華を誇り夫人は美や宝飾品を見せつけるのである。

その様な煌びやかで見栄の場所に奇跡の様な事柄が起こった。

以前王国でも3本の指に数えられた美女と謳われた、ビブラン伯爵夫人。

病か怪我かそれとも呪いかと言う様な噂が流れるほどその美貌が損なわれたと言われていたが、この度以前以上に美しく若々しくなった伯爵夫人がパーティーに姿を現したのだ。

「何と美しい。」

「いつまでも若々しい。」

と言う言葉が次々と聞こえる状況に、和かに笑顔を振り撒く伯爵夫人。

以前交流のあった貴婦人らが

「しばらく姿を見ませんでしたが何かありまして？」

と聞けば

「はいしばらく病に臥せっていましたが、聖女様が我が領内に降臨されて回復いたしました。」

と答えると、あちこちで

「あの噂の聖女は、ビブラン伯爵領に居るのね。」

と言う言葉が聞こえてきた。

その後は以前以上に伯爵夫人に媚を売る貴婦人らが群がるも

「申し訳ありません、聖女様はとても気まぐれなお方。いつ姿を消されるか私にも分かりませんの、お約束できませんわ。」

と聖女との面会の話を断ると、

「私お友達と少しお話があるの、失礼しますね。」

と断りをしてその場から姿を消した。

その後以前から仲の良かった貴婦人らと王妃が、見違える様な若さと美貌を見せると貴族らの間で噂が大きくなった。

「女神の雫があるそうよ。」

「私は聖女の雫と聞いたわ。」

「どちらでもいいけどあの姿を見たら私は悪魔にでも魂を売るわ。」

と貴婦人方が騒ぎ始めるも聖女の姿は見つけられないし、その雫も手に入れられない。

すると、伯爵夫人に毒を持った貴婦人が素知らぬ顔で

「伯爵夫人、神の奇跡の様なお薬を独り占めするのはどうかと思いますわ。」

と言ってきた、それに同調する貴婦人方すると

「実は私もそお思って聖女に尋ねたのよ。すると「これは心映す効力もあり、汚れた心や醜い心の者が使うとそれが表に出るため、誰でもには渡せないの。」と言われたため、聖女の許可を得た数人にお配りしたのです。もし醜くなった方がいればその方のお心が醜いと聖女様に認定されることになるので・・・分かってくださいませ。」

と断った。

怒りに唇を噛む貴婦人、睨みながらその場を後にした。

その後その貴婦人は再度毒入りの贈り物を伯爵夫人に送りつけたが、それに気付いた少女が伯爵夫人に一つの薬瓶を手渡した。

「これは聖女様からのお返しです、贈り物にいたく感謝していたわ。」

と言いながら手渡した、貴婦人はその薬を早速使うと、確かに肌が若返った。

気をよくした貴婦人は次のパーティーにと、身体中に薬を塗り込みパーティーに参加、初めは皆が羨ましく声をかけてきたが暫くすると、皆なが避ける様になった。

不審に思った貴婦人が鏡を見ると、そこには老婆が！

自分の生命力を使い若返ったが、生命力が尽き急激に年老いたのだ。

この様子を見た参加者は、伯爵夫人の言葉を思い出していた。

「あの方は醜いお心をお持ちだった様ですね。」

と誰とは言わず声が聞こえた。