確かにあった

僕は音楽が好きで全てだったのに、難聴になった。音が聞こえなくなり、やがて僕の世界からいなくなった。絶望している僕に、母が手で声をかけた。

「私、今からピアノ演奏するから」

動揺する間もなく、母は僕の頬をピアノの側板に押しつけた。


あ……音が、いる。

僕は、頬に感じる音に身を委ねた。

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